セルフネグレクトとケアラーのリスク

セルフネグレクトとケアラーのリスク

~精神的なセルフネグレクトの理解と予防策~

「セルフネグレクト」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
ネグレクト、は広まっていますね。主に児童虐待などで育児放棄として問題になる、放置や無視のことです。
それがセルフ、つまり自分へ向いた状態のことです。

セルフネグレクトとは何か、特に精神面でのセルフネグレクトとは、その原因と対策を、ケアラーへのリスク警鐘として考えました。

1.セルフネグレクトとは

セルフネグレクトは、個人が自分自身に対して必要なケアや基本的なニーズを無視し、自己の健康や安全を軽視する状態を指します。
これは一般的に、身体的なケア、食事、住環境の維持、医療の受診などに関する自己管理の不足を含みます。
セルフネグレクトは、心理的な問題や身体的な健康の悪化につながる可能性があり、他人が介入しない限り深刻な状態に発展することがあります。

人は衣食住+睡眠+他者との交流をバランスよく保ちながら生活を営みます。
健康的に生きていくために必要だからです。

ですがこうした要素に気を配ることをしない、または出来なくなった状態と言えるでしょう。

セルフネグレクトが問題になるケースとして代表的なのはごみ屋敷問題です。
片付け、清掃、ゴミ捨てと言ったごく当たり前の生活上のケアが出来ないことで、家の中にごみが溢れかえり健康的な生活を送ることが出来なくなってしまうのです。
(※ごみ屋化する原因はセルフネグレクトに限りません)

2.精神的なセルフネグレクト

①どんな状態か

セルフネグレクトは、上述したごみ屋敷のような形に現れるものばかりではありません。
精神面でのセルフネグレクト、つまり自分の心のケアを放棄する、というケースもあります。

自分のメンタルケアを怠った「メンタルセルフネグレクト」とはどんな状態でしょうか。

まずメンタルヘルスがバランスを崩すため、些細なことからストレスを受け、不安感などネガティブな感情が強化されます。
自分をケア出来ないことで自信を失っていくので、他者との関わりを避けるようになり、孤立感が強まります。
ストレスや不安、孤独によって食欲や睡眠が阻害され、身体的な健康にも影響が出ます。
日中の集中力や注意力も低下するでしょう。
それによって抑うつ状態、更に進んでうつ病のように、無気力・興味の喪失・自罰思考・エネルギーの低下が起きます。

②何が原因?

精神的にセルフネグレクトする原因はいくつか考えられます。

一つは過去のトラウマです。
トラウマとは「心的外傷」で、代表的なものは天災や戦災、事故や近親者を突然亡くすといった体験が挙げられますが、長期的な虐待やハラスメント、いやがらせ、または自分の脅威となるような環境で過ごし続けることでも心は傷を負います。
トラウマの怖いところは、自分に責任がないのに過剰な自罰・自責感が染みついてしまうことです。
それによって、人として持っている「自分をケアしよう」という意欲が減退してしまいます。

社会的な孤立や孤独感も原因になります。
「どうせ自分など誰からも必要とされない」と感じ、自分自身に価値がないと思ってしまいます。
価値がないもの(自分)に対して手間暇かけてケアをしよう、という意欲も湧いてきません。

ストレスフルな生活もセルフネグレクトを引き起こします。
過労や多くの悩み、問題は、元をたどれば高い意欲や責任感から生まれたものかもしれません。会社で誰よりも仕事をたくさん受け持って遅くまで残業する人の多くは責任感が強く他者から頼られる人です。
ですがそれによって自分<周囲になってしまい、自分のケアが後回しになり続けます。

③放っておくとどうなる?

精神上のセルフネグレクトを続けることで起きる問題もたくさんあります。

まずは身体的な健康が悪化します。
自分を大事にしないのですから、栄養バランスや適度な量の食事をとることに気を配れません。暴飲暴食、栄養失調により感染症や他の病気になりやすい体になってしまいます。

上述したように心の病のリスクが高まります。
うつ病は患者数が増えて一般化した分、「薬を飲んで寝ていれば大丈夫」と甘く見られがちですが、実は希死念慮と隣り合わせで完治が難しい(寛解と完治は違います)病気だという認識が薄いように思われます。

自分の安全への配慮も怠りがちになります。
火の不始末、交通事故、盗難だけでなく、危険なエリアに立ち入ったり、自分の脅威になりえる集団に近づくことへの警戒心が薄くなります。

孤独感が高まれば、他者との交流を持とうという意欲が無くなります。
長期的にみると社会的な孤立に繋がり、生活上の困難が起きても誰かに頼ろうという発想が持てなくなります。

3.精神的なセルフネグレクトを防ぐ方法 4つ

①ルーティンの確立

毎日の生活ルーティンで成立しています。

朝〇時に起きて、顔を洗って朝食を食べる。
着替えて〇時に家を出て〇時に会社に到着、仕事を始める。
〇時に仕事を終えて帰宅、〇時に家族と一緒に食事して〇時に就寝。

これを守るだけで、最低限のセルフケアが行えているのです。

②食事管理

自分をネグレクトする人に多いのが、暴飲暴食、または食べない、という状態です。
食べ物は口にせずアルコールばかり取る、ご飯を食べずにジャンクフードやスナック菓子を食べる、朝昼食べずに夜中に爆食いする。

アルコールもお菓子も、たまに適量楽しむからこそ価値があります。
これらがストレス解消の役目を果たすためには、ベースに規則正しく栄養バランスの取れた食事がある場合だけです。

③睡眠の確保

最近は「睡眠負債」という言葉も耳にするようになり、睡眠の重要性が広まっていることは良いことだと思います。ですがこれが注目される背景には、睡眠の質の低下による困難を抱えている人が多いということでもあります。
1日何時間眠るのが適切か、は、個人差がありますが、やはり平均して6~8時間の睡眠をとりましょう。特に入眠開始後の90分にどれだけ熟睡できるか、が大事です。
質の良い睡眠は、心身の疲労回復と損傷の補修、自律神経の調整と脳内ホルモンの正常な分泌をうながします。
ちゃんと寝るだけで、人は健康になれるのです。

④趣味を持つ

子どもの頃は好きなものがたくさんあったのに、大人になるとつい手放してしまいます。それだけ毎日忙しく頑張っているんですよね。
ですが趣味は大人にこそ必要です。
好きなことに没頭している時は嫌なことを考えません。得意なことをして自己肯定感が高まり、自分が本来何を大事にしてきたのか、という「軸」を思い出すことも出来ます。
リラックス効果が高いのは言うまでもありません。趣味によって新しい世界に興味を持てたり交流も広まります。それによって更に自己評価が高まります。

4.まとめ

私はセルフネグレクトについて考えながら、ケアラーのことが心配でたまらなくなりました。
何故ならケアラーは、強い責任感でケア対象者や周囲のことばかり優先して、自分自身を後回しにしがちだからです。

ケアラーこそ、自己ケアに取り組んでいただきたいのは、こうしたリスクからご自分を守って欲しいからです。
病気になった家族に元気になってもらいたい、と願う理由の一つに、ケアラー自身の幸せも含まれているはずです。

精神的にセルフネグレクトしない、自分の日常を自分で守ることを心がけていただきたいです。

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