うつ病と共に生きる:うつ病の回復期以降に家族が心がけたいこと

回復してきたからこそ、家族の関わり方が問われる

前回は「うつ病の回復ステージ別のかかわり方」についてお話しました。
その中でも「うつ病の回復期に入ってから、家族がどんな意識で関わることが大事なのか」に触れました。
今回はさらに踏み込んで、「うつ病から回復してきたからこそできる、新しい関係の作り方についてお話したいと思います。

目次

  1. うつ病の回復期は“自立”を育てる家族の関わりとは―支えるから「信じて見守る」へ
  2. 「距離をとること」も立派な支援になる一緒にいない選択も、愛のかたち
  3. 「元に戻す」のではなく「ともに変わる」ことを選ぶ―新しい家族関係の構築へ
  4. まとめ:支え続けるあなた自身も大切に

うつ病の回復期は“自立”を育てる家族の関わりとは―支えるから「信じて見守る」へ

①少し元気になって来た本人に感じる、家族の喜びと戸惑い

個人差はありますが、うつ病の場合自分に合った薬を服用し、負荷の少ない生活をしばらく(数ヶ月)送っていると、少しずつ症状が安定しうつ病が回復してきます。

うつ病の回復とは、日常生活に小さく表れ始めます。

  • 寝付く時間が早くなった
  • 自発的に整容(顔を洗う、入浴する、身なりを整える)することが増えた
  • 会話が長くなった
  • 食べる量が増えたり、過食や飲酒が落ち着いてくる

などです。
見ていただいて分かるように、病気ではない人から見たら普通の日常動作です。でもずっとそれが出来ない状態が続いていたのですから、本人をよく観察していたご家族ほど「元気になってきている」と感じ取れるでしょう。

この「元気になって来たみたいだ」という喜びからどういう判断をするか、が分かれ目になります。

『うつ病の回復期に入ったようだれど、きっとまた悪くなる。そういう病気なのだ』
と理解して接すると、回復度合いをポジティブに受け止めることが出来、「まだ時間はかかるから」と考えることで焦らずに見守り続けることが出来ます。

『回復した、良かった、もう安心だ』
と「0-100」で考えてしまった場合、ほんの些細な変化=元気になった、という極端な思考に繋がってしまう恐れがあります。
そうすると、折角見えてきた小さな回復の兆しを「こんなことしか出来ないのか」という解釈になってしまいます。

②先走ってしまうのは、心配や不安の裏返し

うつ病の回復期に入って良い兆しが見えたことで安堵して「良かった、もうこれで大丈夫、もう元気になったんだ!」と考えてしまうのは、それまでのケア生活がそれだけつらかったからですよね。

  • ずっとこのままだったらどうしよう
  • 家族の問題なんだから私が一人で頑張らなければ
  • 早く元気になって欲しい、それだけが願い

ギリギリの状態で踏ん張って来たから、小さな兆しが大きな光に見えてしまうのも無理はありません。
ただ、家族側がどのような支え方をしているかと、うつ病の回復過程はリンクしないです。
うつ病は一進一退を繰り返しながら少しずつ回復していく病気なのです。

もし「これだけしか変わってない、期待したほど元気になっていない」とがっかりしてしまったら、その時はうつ本人の回復度ではなく、既に限界に近くなっている自分のメンタル状態をケアする必要があるでしょう。

③「やらせてみる」「決めさせてみる」という小さな手放し

少しずつ、本当にちょっとずつ以前(急性期)には出来なかったことが出来るようになっていきます。
うつ病の回復期は「過渡期」です。この時期をどう過ごすか、って、すごく難しく、大切です。

うつ病そのものは引き続き主治医の指示のもと治療を続けます。
その傍らで家族が出来ることは「やる気を取り戻してもらう」取り組みです。

うつ病になる理由や原因は十人十色です。ただ、うつ状態→うつ病に発展する過程でそれまでの自分ならあり得ないような経験をたくさんして、自信がほぼゼロになってしまっている人が多いです。
療養と服薬で体は回復してきても、その先に「社会復帰」「復職」を見据えた途端『自分に出来るのだろうか…』と身を竦ませてしまいます。
その不安が、これまで順調に進んできた回復を停滞させたり、後退させる恐れがあります。

まずは本人が「やってみようかな」と思うことは、その決断も含めて、「もし上手くいかなかったら」を考えず任せて見ることをお勧めします。
そして結果に関わらず、自分で決めて挑戦したことそのものを褒めてあげる。
これが、このステージで家族が心がける役割です。

「距離をとること」も立派な支援になる一緒にいない選択も、愛のかたち

①「ずっとそばにいないと…」という思い込みから解放されよう

うつ病の回復期は、家族がする「お世話」の形も変わってきます。
急性期はとにかくなーんにも出来ません。びっくりするくらい寝た切りで、かつ「欲」というものが全くありません。
私は夫のうつ病と母のがんがほぼ同時期だったのですが、がんの母のほうがまだ意欲的で活動的でした。母の側には父がいたから、というのもありますが、どっちが目が離せないか、というと夫のほうでした。

それが、うつ病の回復期になると少しずつ変化していきます。
家から文字通り一歩も出られなかったのに、自分で必需品を買いに行ったり、ごみを出したり、駅まで私を迎えに来ることも出来るようになりました。

そうなった時、家族側が「私がいつもそばに居なければ」と思い過ぎると、当然ながら衝突が起こります。
家族だって心から希望してそうしているわけではないですよね。常にそばにいて配慮する支え方しかしてこなかったから、他のケアの仕方が分からないだけだと思います。

ずっとそばに居なければ、という思い込みは、もう手放していいのです。

②物理的な距離、心理的な距離のどちらも見直していい

では、うつ病の回復期に、どのようにして距離感を見直せばいいでしょうか。

ここで一つ覚えておいていただきたいのが「近くにいる=支えている、とは限らない」ということです。
支える、というと、介護のように近い距離でケアすることを想像するかもしれません。
実際にそうしたケアを実践した方もいるでしょう。
その時のことを思い出してください。あなた自身も辛くなりませんでしたか?

目の前に病気の家族がいて、病気のせいで以前より元気がなく些細な刺激に不安を募らせているのを見ていれば、自分自身のことのように感じて共鳴してしまっていたかもしれません。
または常にそばに居ようとすることで、自分のために時間を使うことが出来ず、知らないうちに欲求不満を募らせていたかもしれません。

大事なのは物理的な距離ではなく、心の距離です。

この相互関係が成立すると、常にそばに居なければ、という思い込みから解放されます。
そしてこの先、安定期から社会復帰を迎えてもお互いへの信頼を支えてくれる土台になります。

③家族だけで背負いすぎず、他者・制度・専門職にも委ねてよい

もう一つ、専門家の手を借りることも検討しましょう。
病気の治療が医療の仕事なら、社会復帰への支援福祉の専門領域です。
いきなり復職や転職を検討する必要はありません。
福祉サービスは「本人が出来ることを少しでも増やす」ことを前提としています。
それは「本人にやらせる」という意味ではありません。
人は、自分が出来ることが多いほど、幸福度が高まります。それは寝たきりの人であっても、です。

人に頼ることは、一見幸せなことのように見えるかもしれません。しかしそれは「自分は○○が出来る」という自信と役割があればこそ、です。
先ほどもお話しましたがうつ病の人は自信がほぼゼロまで落ちています。この自信を取り戻さないことには社会復帰は遠のくばかりです。

家の中で家族が自信を取り戻す手伝いをするのと同じく、より積極的に取り組むとしたら、福祉制度を活用することをお勧めします。

特に活用出来るものが以下の3点です。

「元に戻す」のではなく「ともに変わる」ことを選ぶ―新しい家族関係の構築へ

①「元の生活に戻る」ことだけが回復ではない

うつ病の回復期をサポートしながら、当然「将来」を考えますよね。
20~50代の勤労世代であれば、もう一度働いて一定の収入が得られるようになって欲しい、と考えるでしょう。
働く、とは、ただ収入を得ることだけではありません。
世の中の一員として社会の役に立てている、という実感は、人には不可欠の「充実感」です。つまり幸福な人生、ウェルビーイングの土台となります。だから福祉制度も可能な範囲で働けるような仕組みを作っています。

とはいえ、人には向き不向きがあるのも事実です。
療養生活のゴール=働く、に限定する必要はないと、私は考えます。

生きていく上で何が必要なのか。それは「自分が自分らしくあること」、そしてそれはどんな姿か、を、個々人が理解して実現することです。

元の生活に戻ることが「自分らしくあること」と同義なら、是非目指しましょう。
そうでないなら、改めて「自分らしくあるとはどういうことか」を考える契機ではないでしょうか。

②うつ病を通して変わったこと、それを否定しない

うつ病を通して「自分はこれからどうしたらいいか」を考えるのは、うつ本人だけではありません。当然ながら生活を共にしている家族も、です。

うつ発症当時は急な変化に急いで対応するために「一生懸命支えよう」と必死だったことでしょう。その成果が今の回復と安定です。本当に素晴らしい努力だったと思います。

では、それを踏まえて、あなたのご一家はこれからどうしていきたいでしょうか。

例えば先ほどお話した「自分らしくあること」をうつ本人が考え抜いた末に出した結論が、家族側の希望とマッチしなかった場合。

  • うつ本人の願望を全面的に受け入れる
  • 「それでは生活が成り立たない」と拒絶する
  • 受け入れなければ、と考えつつ矛盾を感じて苦しむ

この3つが考えられます。
これが起きるのは、うつ病によって起きた変化に対する反応ですよね。この変化にどう対応するか、が重要です。

どう対応するか、に、正解はありません。上記の3つもどれが正解でどれが間違いか、はないのです。
どうしていくか、を一緒に探る、つまり「相談」が何より必要になってきます。

③家族もまた、自分の人生のハンドルを取り戻す時

これまで一時的ではあっても「うつ病になった家族をケアする」ことがあなたの生活で一番大きな基準になっていたと思います。


うつが回復するということは、家族はそこから離れるタイミングが来た、と捉えましょう。

引き続きうつ病状態です。とはいえ、あなたの人生は「ケアラー」だけで終わるものではないと思います。
先ほどの

生きていく上で何が必要なのか。それは「自分が自分らしくあること」、そしてそれはどんな姿か、を、個々人が理解して実現することです。

は、当たり前ですが家族、ケアラーも同様です。

家族がうつ病である、という要素を含みながら「自分が自分らしくあるためにこれからどう生きていきたいか」を改めて見つめ直してみることをお勧めいたします。

その上で「家族をケアする役割」を捉え直してください。うつ発症時の「仕方ないからやっていた勘」とは違う、自分なりの意味が見えてくると思います。

まとめ:支え続けるあなた自身も大切に

うつ病からの回復は、本人だけでなく、支える家族にとっても“もう一つの旅”です。
初期のケアを乗り越え、少しずつできることが増えてきたからこそ、これからの関わり方には「支える」から「信じて見守る」へのシフトが求められます。

回復は直線ではなく、揺れ戻しを含むプロセスです。そして、家族もまた自分の人生を取り戻す必要があります。
「距離を取ることも支援」「自分を大切にすることも支援」。そうした柔らかくて持続可能な関係性こそが、うつ病との長い共生に必要なのではないでしょうか。

これからも、あなたがあなたらしくいられる道を、大切なご家族とともに探していけるよう、心から願っています。

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