精神障害者の就労について考える

精神障害者の就労について考える

精神障害者が働こうと思ったとき、障害・疾病を勤務先に伝えるか、伝えないか、で悩む方が多いです。

出来れば伝えたくない。でも伝えないことによるデメリットも、伝えることのメリットも分かる、というのが本音ではないでしょうか。

障害者就労は、法律で規定された障害者福祉制度の一つです。
メリットデメリットを理解し、社会復帰キャリア再構築のために役立てましょう。

目次

  1. 障害者雇用促進法とは
  2. 精神障害者の就労:障害を伝えずに働く(クローズド就労)
    1. メリット
    2. デメリット
  3. 精神障害者の就労:障害を伝えて働く(オープン就労)場合の2通りの方法
    1. 一般求人で障害を伝える
    2. 障害者雇用枠に応募する
  4. 精神障害者の就労で求められるものとは?
    1. 働く障害者側
    2. 受け容れる現場側
  5. 精神障害者の就労で大事なのは数字ではない

障害者雇用促進法とは

障害を持った人、この場合は「障害者手帳を持つレベルの人」ということになりますが、その方たちの雇用を増やすための法律があります。
それが「障害者雇用促進法」です。

【障害者の雇用の促進等に関する法律】1960年交付

目的:この法律は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。

同法 第一章第一条

障害者雇用促進法とは、障害者が働く機会と均等な待遇を得られるため、安定して就労出来るための法律です。
この法律が改正されます。
具体的には、国・教育委員会・一般企業が雇用しなければならない障害者の人数(法定雇用率)が増えます。

この「法定雇用率」は非常に重要です。
何故なら一定以上の従業員数の企業は、その人数に合わせて法定雇用率を満たす人数の障害者を雇い入れる義務があるからです。
そのため、法定雇用率が上がると、求人数も増えるからです。
求人数が増える、ということは、働きたい障害者からすると選択肢が増えることになります。

2.7%というと、社員数が「37.5人以上」の会社最低1人は雇用する義務が発生することになります。
私が最初にこの法律を勉強したときは1.8%に上がったところでしたから、ものすごい増え方で、ちょっと驚いています。

もちろん受け入れ側がどうやって対応するか、という課題は残ります。
ベストではありませんが進展だと思います。

≪参考情報≫ 厚生労働省 「障害者雇用対策」

ご案内役
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精神障害者の就労:障害を伝えずに働く(クローズド就労)

メリット

まずメリットとしては、求人の数と質がぐんと上がります。
いわゆる「一般就労」という呼び方をしますが、障害の無い人と同じ働き方をする、ということです。

例えばハローワークの求人検索サイトで、「35歳、一般就労(フルタイム・パートの縛りなし)、千葉県」だと「35754件」の求人が表示されました。

これが「35歳、障害のある方のための求人、千葉県」にすると「631件」になります。56倍の違いがあります。

求人数が多ければ、それだけ選択肢が増えます。より自分がやりたいことや、希望する待遇を選ぶことが出来ます。

そして何より、待遇が違います。
一般求人なら、正社員で月給30万円前後が多いですが、障害者雇用だとパートで時給1,000円前後が多いです。週30時間勤務として計算すると、月収は12万円程度です。

ある程度の収入を確保したければ、一般求人を検討するでしょう。

デメリット

逆にデメリットとしては、障害(疾病)への配慮がない、という点に尽きるでしょう。

例えばうつ病を経験し、前職を退職→一時期療養し回復→主治医のOKが出たので再就職しよう、と思った場合。

主治医のOKとは、恐らく「前と同じようにバリバリ無制限に働いて良し」という意味ではありません。
うつ病の再発に配慮しながら、今できること活かして働くならOKですよ、ということでしょう。

うつ病を経験したこと、今後も配慮が必要なことを全く知らない転職先は、他の社員同様に働いてくれることを期待します。
障害特性への配慮も、通院による欠勤も、薬の副作用にも配慮することは考えていません。
この状態でどこまで続くか、と考えると、やはり不安も大きいはずです。

こちらも読まれています! 惠然庵コラム『障がい者雇用という働き方とキャリアプランニング』

精神障害者の就労:障害を伝えて働く(オープン就労)場合の2通りの方法

障害を転職先に伝えて働く、という場合、2つの道が考えられます。

一般求人で障害を伝える

一つは一般求人の企業に応募し、応募書類や面接時に内容とこれまでの経緯、現状と必要な配慮について伝えたうえで採用されることです。
状態によって、企業によっては可能だと思います。
もしかしたら試用期間が他の人より長くなったり、最初は契約社員で、のように待遇が変わることもあるかもしれませんが、それもある意味こちら側への配慮とも言えます。

障害者雇用枠に応募する

もう一つは上述したような「障害のある方のための求人(障害者雇用枠)」への応募です。
こちらは障害がある(障害者手帳を保有している)ことが前提での求人ですので、あるがまま伝えればいいと思います。

やはり一般求人と比べると待遇(雇用形態、給与面)で期待に沿わない可能性はありますが、療養期間を終えて再度社会復帰しよう、という段階で、いきなり無理をして逆戻りする、という不安は少ないと言えます。
落ちた体力を取り戻し、仕事感を取り戻し、今の自分に合う働き方を模索するために、一定期間は障害者雇用でリハビリする、安定したらより待遇の良い職場へ移る、というのは、個人的にはお勧めのキャリアステップです。

精神障害者の就労で、一番の壁は、1日の中で変動する心身の状態です。一般の人の「ちょっと疲れた」という状態とは質からして違う変動が起きます。

前日より急激に気温が上下した、というだけで、起きられずに出社できなくなった→そんな自分に自信を失ってずっと会社へ行けなくなる、ということも十分あり得ます。

こうした状態になることを前もって理解し、対策を一緒に考えてくれる職場で働くほうが、長い目で見れば確実な道といえます。
無理して今の自分には厳しい環境で働くことで、「これからもやっていけるかもしれない」という大事な自信が一気に吹き飛んでしまうほうが、精神障害者にとってはお金以上に大きな損失ではないでしょうか。

精神障害者の就労で求められるものとは?

障害者就労の現場にいた経験を踏まえて、「こういう状態だと働きやすい・本人に意義があるだろう」と思う姿を考えました。

働く障害者側

  • 自分が出来ること・出来ないことを、第三者を交えてしっかり理解する
  • どんな小さいことでもいいので、働く場での目標を持つ
  • 状態の波はあって当然、隠さない
  • 悩んだ時にどうすればいいか、を、必要な相手に相談出来るようになる

受け容れる現場側

  • 障害特性の理解、合理的配慮、安全配慮義務厳守
  • 家族・主治医・生活支援員との協働体制を作る
  • 本人の主体性を尊重する
  • (全員ではないが)精神障害者が成長→卒業していくステップの一つ、と考える
精神障害者の就労で求められるもの

障害者へ配慮し、理解することは、別の世界と合流することではありません。
障害者、特に精神障害者は、「もしかしたら自分だった・家族だったかもしれない」もう一人の姿です。
障害者を理解することは、「もしかしたら」の自分への配慮にも繋がります。
目の前の障害者が生き生きと働けるなら、それは自分の「もしも」の未来も生き生きしてくることでもあるのです。

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精神障害者の就労で大事なのは数字ではない

企業としては「法定雇用率を満たさなければ」という目的があります。
今は一般企業で2.3%ですから、従業員1,000人いれば23人の障害者を雇用していなければならない。大きい企業であるほど、社会的責任という意味でも切実な数字でしょう。

しかし大事なのは、数字ではありません
2.3%という数字は、現実には「働く障害者」、つまり人間です。
現場で働く障害者一人一人何を背負って何を求めてそこで働いているのか、を理解することが大事なのではないでしょうか。

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