うつの辛さを理解する
自分がうつ病かどうかも区別が難しいのに、それが自分ではない人のことであればもっとわかりづらいです。
特に、それが「辛さ」であれば尚更でしょう。
なぜうつの辛さを理解出来ないのか・理解するのが難しいのか、理解することのメリット、理解しないことでのデメリットを考えてみました。
1.なぜうつの辛さを理解出来ないのか
まずは、うつ病になると極端に気力が削られるので、自分の辛さを人に説明することも出来なくなります。
周囲も、仕事や学校どころか横になること以外何も出来ない「状態」を見ることは出来ても、「なぜ」そうなってしまうのか、まで、想像だけでは理解が及びません。
理解しようとしても、「横になる→眠る→元気が回復する」はずでは?と思うので、いつまで経っても回復しない様子に更に疑問が募り、理解するより先に不安や不満が溜まっていきます。
また、うつ病の辛さは、言葉で説明するのが難しいように思います。
体が動かない、頭が働かない、何にも興味がわかない、何もしたいと思わない、死にたい。
なるほど、と思うものの、うつ病にならなければ実感することはない状態です。
とても大変なのだ、というところまでは分かるものの、本人が体感しているのと同じように感じることは難しいです。
実感できなければ、日が経てば忘れてしまったり、そろそろよくなっているだろう、という楽観視にもつながります。
そのズレが、うつ病の人から見ると「辛さを理解してもらえない」と感じてしまうのでしょう。
2.うつの辛さへの理解を阻害する要因は「比較」
「辛い」と感じることは、誰でもいつでも起こります。
人から「辛い」と言われると、自分の経験を思い起こします。
そして自分が辛かった時どうしたかを連想し、相手もそうすれば楽になれるのでは、と考えます。
ただ、この「辛さ」の度合いが問題です。
うつ病という病気のレベルまで達してしまった辛さは、普段誰もが感じる辛さとは度合いも質も違います。
違うものを比べても、理解につなげることは難しいです。
3.うつの辛さを理解することで生まれるメリット
近しい人のうつ病は理解しないよりしたほうがいいことは誰も分かっていることです。
しかし、自分自身も日々いっぱいいっぱいな状態で過ごしていて、更に他の人の精神状態まで背負い込むような気がして、つい見て見ぬふりをしてしまうのも無理ないと思います。
それでもやはり、辛さを理解して共有したほうがメリットは大きいと私は考えます。
①イライラが減る
辛さを理解されることで、相手もこちらの辛さを配慮する余裕が生まれます。
お互いに配慮するので、ケンカなどの回数が減ります。
衝突が減って、双方のイライラが減ります。
②コミュニケーションのコツが掴める
今までならスルーしていたようなキーワードに敏感に反応してしまうのがうつ病です。
相手の辛さを理解することで、うっかり地雷を踏んでしまう回数が減ります。
③順調に回復する
うつ病を理解することで、うつ病の人のメンタルが安定し、治療に対して前向きに取り組めるようになります。
結果として順調に回復に向かうことが出来ます。
4.うつの辛さを理解しないことで起きるデメリット
①引きこもり、生活困窮、自殺等のリスクが高まる
家族や同僚などの身近な人が辛さを理解出来ず、治療に対して非協力的でいると、本人だけで頑張らざるを得なくなります。
しかし一人でうつ病の治療をするのは大変です。毎日の生活リズムを整えることがベースにあり、その上でのカウンセリングや投薬です。
結果、闘病が長引き、失業やひきこもり状態となり、生活困窮から、最悪の場合自殺まで引き起こすこともゼロではありません。
②金銭面で損をする
うつ病の時は、本当に何をするのも億劫です。
当然、うつ病の人が受けられる公的支援について調べたり、手続きをするために役所に行くのも重労働です。
家族が支えてくれれば同行したり代行することも可能ですが、それが無ければ必要な支援を受けられません。
結果として、本当ならもらえたはずの手当てや支援が受けられない場合が考えられます。
③家族側にとってもストレスが増える
うつ病の辛さを理解しないことで、些細な言葉でうつ病の人の地雷を踏んでしまうことがあります。
気を使っているはずなのに、反対にイライラさせてしまい、関係悪化につながることも。
そうすると、支える側の人のストレスにもなります。
うつ病に限らず、病気は『なってしまったものは仕方ない、これから良くなるように努めよう』と開き直るしかありません。
しかし、開き直るまでには時間がかかるし、工夫も努力も必要です。
その「開き直りまでの期間」を、効率的に安全に通過するために、医療や福祉、心理の専門家を使うのも一つの方法です。