泣くことは心のデトックス
色んな感情が極限に達すると、涙が流れます。
子ども、特に赤ん坊の頃は誰でもすぐに泣いていたと思いますが、年齢を重ねるほどに、泣く機会は減っていきます。
泣きたくても我慢したり、泣きたくなったこと自体に落ち込んだり。
しかし、泣くことは自然な身体反応である上に、心へのいい効果が認められています。
泣くことは心のデトックスになるのです。
1.「泣く」とは?
泣く前には、精神が興奮状態にあります。交感神経が優位になって緊張度が高まっています。
高まった緊張を下げるために、寝る、リラックスする、などがありますが、これは「交感神経の亢進度を下げる」行為で、受身的・消極的作用です。
これに対し「泣く」とは、副交感神経が「亢進状態」となります。より積極的に、交感神経に対抗する方法です。
泣くと、ストレス成分である「コルチゾール」や、攻撃性や怒りっぽさを引き起こす「マンガン」を排出します。
更に鎮痛作用がある「エンドルフィン」が作用して、痛みを和らげます。
泣くことによって、生理的なプラスがあるのです。
2.どんな泣き方がストレスにいいのか?
泣く、と言っても、色んな泣き方があります。
目頭がじんわり熱くなるものから、静かに涙が流れる、更に両目から涙が止まらなくなる号泣まで。
ストレスに対してカタルシスを引き起こすほどの効果をもたらすのは、「号泣」です。
号泣することで、ストレス状態にある脳をリセットする効果があり、混乱や緊張、不安が改善します。
また、泣く理由も影響します。
よりストレスに対して良い効果をもたらすのは、自分の過去の辛かった経験が呼び起こされて涙があふれて止まらなくなる時、という研究結果があります。
3.どこで泣く?
どんなにメリットがあるとはいえ、人前で泣いてはいけない、と言われて育ったのですから、いつでもどこでも泣けるわけではありません。
泣きたくなったときに、どこで泣くか。
そこに他者はいるのか、いるとしたらどんな人の前でなら泣けるのか。
我慢して一人になれる場所(トイレなど)へ駆け込むのか。その様子を見て、異常に気付いてくれるひとはいるのか。
人に気づかれることが絶対にない個室でしか泣かないのか。
他者の前で泣くことには、評価が下がったり批判されたりするリスクや、「大人なのに人前で泣いてしまった」と、自分に対して恥ずかしく感じてしまうリスクがあります。
ただし、泣くことを受け容れてくれる他者の前で泣くことは、自分の強い感情を共有してもらえる機会でもあります。逆もまた然りです。
涙もろいか、そうでないのか、と、人前で泣くことに対して抵抗感があるかどうかは、また別の問題となるでしょう。
4.泣けない人はどうする?
泣くことが心のデトックスとはいえ、泣きたくても泣けない、とても辛くて悲しいのに泣けない、という方もいます。
どうしたら泣けるのでしょうか?
逆に、よく泣く人を考えてみました。
- 自分を過度にコントロールしない
- 他者の感情に共感しやすい
- 辛かった記憶を呼び起こしやすい
- 泣いたことで周囲からプラスの反応を得た経験がある
- 「泣いてはいけない」という自分の中のルールがない、弱い
などが考えられます。
泣けない人は、この逆のタイプの方かもしれません。
自分がどれに該当しそうかチェックしてみて、その逆をやってみる、というのは如何でしょうか。
社会人になると、「泣いてもいい状況・場所」と「泣いてはいけない状況・場所」が、社会的に明確に区切られているように思います。
近親者や親しい人が亡くなった場合は、どんなに泣いても誰もおかしいと言わないでしょう。
けれど、仕事で失敗して叱責された、とか、誰かとケンカして悲しくて泣いた、とかだと、ほとんどの人は懸命に泣くことを我慢すると思います。
大人こそ、泣くことで元気になりましょう。
<参考文献>
「「泣く」ことで得られる心身のメリット」医療法人社団 平成医会 https://heisei-ikai.or.jp/column/tears/
「涙とストレス緩和」有田秀穂(日本薬理学雑誌/129 巻 (2007) 2 号/書誌)
「青年における泣きの対人的表出制御と関連要因の検討」橋本 巌ほか(愛媛大学教育学部紀要 第53巻 第1号 45~55 2006)