家族の相談先の見つけ方
~精神疾患で苦しむ家族への支援ガイド~
「家族が精神疾患になったことで起きている家族側の悩み」は、一体どこへ相談したらいいのか分からない、という悩みを耳にします。
私もそうでした。思い切って相談しても「家族だから頑張って」でおわってしまったこともあります。その時はそういうものかとも思いました。
ですが今自分が専門家になって、家族側の相談窓口が無いことがどれほどのデメリットか、を痛感しています。
家族の相談先も絶対に必要です。
それは公的機関、家族会、家族自身がカウンセリングを受ける、の3つです。
目次
- 家族の相談先が分からないのは、悩みが多い&複雑だから
- 最初の入り口は公的な相談機関
- 家族会・当事者会に参加する
- 個別カウンセリングを受ける
- ポイントは「自分に合う支援者」と出会う
- 今すぐ困ったときの相談先
- まとめ
家族の相談先が分からないのは、悩みが多い&複雑だから
家族側の悩みをどこへ相談したらいいか分からないのは、悩みの種類が多岐にわたる上にそれが複雑に絡み合っていて、どこから手を付けていいか分からないからです。
例えば
『うつ病の家族がゲームばかりしていて困る』
という状況に悩んでいる場合。
相談したいのが、
- ゲームばかりするのは大丈夫なのか(疾病理解)
- 止めさせた方がいいのか(接し方)
- ゲームをする元気があるならこっちの手伝いをして欲しいのに(家族側の疲労)
- いつになったら復職してくれるんだろう(社会復帰)
- 薬が効いていないのではないか(薬物治療)
- 本人はゲームばかりしていることをどう思っているのか(声かけ)
など、色んな悩みが出てきます。
どれが一番強いのか、は、ご家族・ご本人の状況によりますが、どこから取り組んでいけばいいのか、は、家族だけではわかりません。
どれか一つだけならインターネットで調べて相談先を探すことも出来ますが、『ゲームばかりして困る』という問題をまるっと相談したいとしたら、結局はSNSでつぶやいたり、匿名の掲示板に書き込んだり、友達に愚痴を言ったり、というところで気持ちを楽にするくらいしか思いつかないのが普通ではないでしょうか。
そしてこれらは全部絡まり合っていますから、個別で対処しようとすることが難しいのです。
最初の入り口は公的な相談機関
最初の入り口は公的な相談機関を選ぶのが妥当でしょう。
何故なら専門知識を持った担当者が常駐しているので安心ですし、基本的に利用にお金がかかりません。
こういう時のために税金を払っているのですから、どんどん活用しましょう。
既に精神疾患が日本人の五大疾病の一つに入って久しいです。国も様々な専門機関を設けています。
ですが福祉制度の欠点として、その存在を知っている人がほとんどいません。
勿体ない話です。
精神保健福祉センター
都道府県に1か所必須で設置されている、精神疾患に関する専門の相談機関です。
精神保健福祉センターとは、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第6条に定められた精神障害者の福祉の増進を図るために設置された機関。都道府県単位、または政令指定都市に設置されている。都道府県によっては精神医療センターと名前をつけているところもある。
【主な業務】
wikipedia、厚生労働省
- 業務内容は地域住民の精神的健康の保持増進
- 精神障害の予防
- 適切な精神医療の推進
- 社会 復帰の促進
- 自立と社会経済活動への参加の促進のための援助
明確に精神疾患がある、というケースだけでなく、背後にその可能性がありそうな悩みまで含めて相談が可能です。
例えばギャンブル、薬物、異性交遊、金銭管理なども受け付けてもらえます。
このセンターに相談することで解決できればいいし、話を聞いてもらうことでごちゃっとしていた自分の悩みを解きほぐすことが出来て、「まずは○○からやってみよう」と思い付くかもしれません。またはより専門的にサポートしてくれる機関を紹介してもらうことも出来ます。
相談方法
電話相談が可能なセンターが多いので、相談可能かどうか、を聞いてみる、という一歩から始めてみるのもいいでしょう。
≪参考情報≫ 全国の精神保健福祉センター(厚生労働省)
休日・夜間
また、精神疾患は夜間や休日に急に症状が出ることもあります。
一番怖いのが希死念慮(死にたい、と言い出す)です。
これを「明日になって病院が開いたら」と言っている暇も余裕もないでしょう。
その時は、24時間相談可能な専門機関の電話番号を控えておきましょう。
出来れば自宅近くの地域の機関を控えておきましょう。
≪参考情報≫ 夜間休日精神科救急医療機関案内窓口(厚生労働省)
家族会・当事者会に参加する
家族の悩みを解決するために必要なのは、専門知識だけではありません。
経験者からの共感を得られると「自分だけじゃない」と思えて孤独感が和らぎます。
実際にこうしたよ、という経験談を聞けて自分の家族に応用することも出来ます。
家族会で得られるもの
一つは上述したように経験者同士だから得られる「共感」と「繋がり」です。
病気の人には言えない、だけど辛いから誰かに聞いてもらいたい、という悩みは、自分と同じ辛さを経験している人が相手だと打ち明けることへのハードルが下がります。
「わかるー!」という経験は、双方に大きな安心感を与えます。
情報共有できることもメリットです。
自分は知らなかった社会保険・福祉制度の活用方法や、困ったときに主治医に相談するコツ、本人との接し方など、リアルに挑戦し続けているからこそ出てくる知恵が満載です。
家族会によっては参加者が楽しめるイベントを開催しているところもあります。家族ケアという重責から解放されることは大きなメリットです。
探し方
インターネットで「○○県 家族会」のようなキーワードで検索するのが一番手っ取り早いですね。
または「みんなねっと」という全国規模の団体があります。
こちらは歴史がある団体ですし、ホームページも情報が多いのでおすすめです。
≪参考情報≫ 家族会について(みんなねっと)
個別カウンセリングを受ける
家族自身が自分の悩みを解決する、という目的でカウンセリングを受ける、という方法も、家族の相談先の一つです。
家族がカウンセリングを受けるメリット
家族が精神疾患になったことが原因・遠因で悩んでいる、と相談すると、「ではその病気が治ればいいのでは」と考えて「病気が良くなるように頑張ろう」という結論になることが多いです。
それは間違いではありませんが、そこまでのプロセスが問題なのです。
なぜならば、精神疾患はいつ治るか、が不明で、療養が長期に及び、一定の回復をみてもそれをキープするために配慮を続けなければいけないからです。
その間の家族自身の立場や目線になって一緒に問題を解決してくれる専門家が必要なのです。
病気になったことが原因だから本人の主治医に相談する、という方法もありますが、主治医の役割は病気を治すことです。あくまで患者中心のアドバイスになります。
家族が欲しいものはそれではないことも多いのです。
自分(家族)の立場になってくれる専門家を探しましょう。
家族がカウンセリングを受けることで出来ることが増える
家族が専門家からアドバイスや情報を受けることによって、具体的な行動に移ることが増えていきます。
例えば病気本人は障害年金の存在を主治医から聞いていても、中々手続きを始める気力はわかないかもしれません。うつ病であれば意欲は非常に大きく減退していますから当然ですね。
家族は専門家ではないけれど、病気本人と比べればまだ気力も行動力もあります。
やり方さえ分かれば行動化出来ます。
家族に代わって、または一緒に障害年金請求へ向けて動き出せます。
病気本人への好影響も期待できる
家族自身のストレスや疲労のケア方法を相談によって得られることで、病気本人に対する余裕も出来ます。
余裕を持てると焦らずに見守ることが出来ます。
それは病気本人にも伝わり、安心して療養することが出来ます。
結果として回復が早まります。
≪こちらも読まれています!≫ 惠然庵コラム「何故カウンセリングを受けるのか」
ポイントは「自分に合う支援者」と出会う
専門家といってもインターネットで検索すると山ほど情報が出てきて選ぶのが大変ですよね。
何を専門にしているか、対面で支援してもらうとしたら地域も大事ですし、利用料も気になります。
しかし一番大事なのは「自分に合う支援者か」ということです。
病気本人より家族目線に立ってくれる人かどうか
病気本人を蔑ろにする、という意味ではありません。もちろん本人への配慮は必要です。
しかし相談しているのは自分(家族)なのですから、自分(家族)視点で話を聞いて、共感して、出来ることを提案してくれる人かどうか、という点は大事です。
話すと分かるのが相性
ホームページなどに記載されている情報は、経歴や肩書、保有資格がせいぜいです。
これもまたどれも立派で選べないですよね。
そして一番大事な相性は、ホームページを見ただけではわかりません。
実際に話してみることで得られる情報、もっと言うと感覚が大事です。
電話でも、最近ならzoomなどのウェブ会議ツールを使って事前相談を受けてくれる専門家も多いですので、活用しましょう。
支援者は後から変えてもいい
一度支援担当者が決まったら、何があってもずっとその人と添い遂げなければ……、と思う必要はありません。
人と人ですから状況によって行き違いが起きる可能性は否定できませんし、相談したい問題によっては他の担当者のほうが適していることもあります。
例えばずっと女性の担当者にお願いしていたけど、この問題だけは男性のほうがいいのでは、というようなときは致し方ありませんよね。
人単位ではなく相談機関自体を変えることも問題ないです。また1か所に限定する必要もありません。
あまりあちこちに相談してしまうと自分が混乱してしまうので注意が必要ですが、主の相談先ががっちり決まっているなら、別のところへ「セカンドオピニオン」として相談するのも有効です。
今すぐ困ったときの相談先
インターネットのオンライン診断
最近はインターネットで専門医が相談に乗ってくれます。
精神疾患の場合、病気本人が家から出たくない・出られないことも少なくありませんし、それによって家族も外出しずらいケースもあります。
オンラインであれば家にいても活用しやすいですよね。
「精神疾患 オンライン診断」などでインターネット検索するとたくさんヒットします。
ただ、オンライン=無料とは限りません。
料金体系について事前に必ずチェックしましょう。
無料のSNS相談
ウェブ会議ツールを使用した相談だと、いわゆる「顔出し」が多いです。
カメラを使ってお互いの顔を見ながら話すほうが得られる情報も多いですし、顔が見えることでの信頼感もあります。
ですがセンシティブな相談をする場合、逆に「顔出し」がハードルになることもあります。
SNSの無料相談なら、チャット形式で文字だけで相談出来るので、そうした不安はありません。
実名も顔も伏せて話を聞いてもらいたいときに便利です。
そして主催団体によっては休日夜間も対応しています。
≪参考情報≫ SNS相談(厚生労働省)
緊急時は警察、保健所へ
精神疾患の中には自傷(自分を傷つける行為)他害(他者への暴力)行為が起きることも珍しくありません。
その時はすぐ警察に相談しましょう。
警察も対応は心得ています。
そして状態を見て、保健所に相談の上、緊急に入院処置をとることも可能です。
これらは病気本人への人権を配慮した上で法律でフローが全て決まっていますので、安心してください。
まとめ
✅家族の悩みは多様かつ複雑で個別で対処しようとすることが難しいことが相談先が分からない原因になっています
✅入り口となる相談先には公的な専門機関が活用出来ます
✅家族会・当事者会で、同じ悩みを持つ人と繋がって辛さに共感してもらいましょう
✅家族自身の悩みとして個別カウンセリングを受けることで、自分(家族)目線の解決方法が見つかります
✅大事なのは、自分(家族)に合う支援担当者と巡り合えるか、です
✅緊急時(休日・夜間)にも相談を受けてくれる場所を確認しておきましょう
たくさんご提案しましたが、全部を一気に対応する必要はありません。
そして最初から失敗なく完璧にやり遂げる必要も全然ありません。
家族には家族の辛さがあり、家族目線でなければ解決出来ない問題があります。
相談していいんだ、相談出来る場所があるんだ、ということを、覚えておいていただけると嬉しいです。
≪こちらも読まれています!≫ 惠然庵コラム「メンタルケアラーへ10のアドバイス」
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