うつ病療養に環境調整は重要
「(自分が・家族が)うつ病になったらどうすればいいか」については色んな情報が出ています。
どれもすべて本当だと思います。
ただ、抜け落ちているものがあります。
それが「環境」をどうするか、という視点です。
「うつ病の間は大事な決断をするな」というのもよく聞く言葉ですが、大事な決断をしてはいけない=環境を変えてはいけない、と思われがちです。
その為に長引かせてしまっている人、回復しても再発してしまう人も多いと思います。
うつ病と環境について考えてみました。
1.うつ病には環境が大きく影響する
これは誰もが認めるところだと思います。
うつ病は、うつ病になった人単体で発生する病気ではありません。
ライフイベント(人生の中の重要事)が重なったり、合わない人達の中で無理をしたり、過重労働が続いたり、といった外部環境の結果として発症する病気です。
しかし、うつ病になった時、まず最初に「ゆっくり養生して、うつ病が回復するまでは重要な決定は先送りしましょう」とアドバイスを受けます。
具体的には、転職、転居、別居、離婚、離別等の決断をしないように、ということです。
これは、うつ病が重い時は、自分にとって本当に良い選択とはなにか、を考えられる精神状態ではないこと、思考力が落ちていること、余裕がないことで、間違った選択をしてあとで後悔しないように、という意味です。
それは本当にその通りなのですが、その言葉に縛られすぎている人も多いように見受けられます。
パワハラ上司のせいでうつ病になったのに、復職後もその上司の下で働くことが決まっていれば、安心して療養することなどできるはずがありません。
2.「何を変えるか・変えないか」はうつ病の原因次第
とはいえ、何もかも変えてしまえばいいというわけではありません。
うつ病の人のため、という変化も、環境変化そのものが、メンタルへの負担になります。
それはうつ病の人だけでなく、家族にとっても同様です。
変えなくてはいけないのでも、変えてはいけないのでもありません。
「何が原因でうつ病になったのか」によって、「変えた方がいい環境」「変えてはいけない環境」があるのです。
私は、「どうしてうつ病になったのか」を探りすぎるのはあまり意味がないと考えています。
結局は犯人捜しになってしまい、うつ病本人が「自分がダメだからこうなった」という考えを強めてしまいがちだからです。
しかし、うつ療養のために環境調整を考える時だけは、「うつ病の原因・きっかけ」をしっかり考えたほうがいいと思います。
3.家族も「環境要因」の一つ
そして家族もまた、うつ病患者を取り巻く環境の一つです。
しかもかなり重要な環境要因です。
仕事は転職できる、主治医は変更できる、住まいも引っ越せる。
しかし、家族を変えることはほぼ不可能です。
DV、ハラスメント等の加害行為がある場合を別とすると、家族と切り離されてはうつ病の人は生活が出来なくなるケースがほとんどでしょう。
もし家族との行き違いや関係性が問題でうつ病になったなら、その時は第三者を間に入れましょう。
役所の担当者、カウンセラー、ソーシャルワーカー、民生委員、ケアワーカー、医療関係者。
第三者にお互いの言い分や気持ちを聞いてもらい、それを「翻訳」してもらって、相手に伝えてもらいましょう。
その結果として、一時的に別居する、生活リズムをずらして接触頻度を下げる、などの対策を取ることが出来るかもしれません。
4.私の経験談
かくもうす私も、夫がうつ病になった当初に主治医から言われた「同じ職場に復職出来た、ということが、うつ病が治った、という証拠ですから、転職はしないように」という言葉に縛られていました。
夫の場合は明らかに職場が原因だと思っていたので、転職という道を封じられた気分でした。
その後、通院時間が負担となったため、自宅から歩いて行ける距離にある病院へ転院し、新しい主治医から
『会社が原因なんでしょ? だったら会社辞めないと治るわけないよ。引っ越し?いいんじゃない、そうじゃないとゆっくりできないよね』
と言われた時は目からウロコでした。医師から背中を押してもらえたことで、夫婦で決断できました。
その後、夫は退職、夫婦でかなり静かな(つまり田舎に)引っ越しました。
結果としてそれが正解でした。転居先でペットを飼い始めたことも、ふたりにとって支えになりました。
5.うつを患者だけの固有の問題と捉えない
うつ病という診断自体はその本人へなされるものですが、うつ病はその人ひとりだけで発症できる病気ではありません。
どんな家族や友人関係の中で育ってきて、どう評価されてきて、自分の特性を活かせる環境にいることが出来たか、やりがいを感じられたか、など、そのときどきに接する外部との交流の果てに遭遇する病気です。
うつ病は、【本人の努力】×【家族の理解】×【環境調整】で回復していく、と私は考えます。
どれがゼロでも成り立ちません。
うつ療養と、回復後の新しい生活を見据えて、環境も柔軟に調整していくことが大事です。
凄いですね
本当にプロの先生です
自分自身の体験から得られた貴重なお言葉ありがとうございました。
現場経験とそこからくる分析力に感動しています。
匿名さま
コメントありがとうございます(*^^*)
皆さまそれぞれに感じたことや行ったことがあると思うので、あくまで私見となりますが、少しでもどなたかの役に立てると嬉しいです。
ご家族は「自分が何があっても耐えなければ」と悲壮な覚悟で向き合っているケースが多いですが、一人で全部やらなくていいですよ、ということが伝えられれば、と思っています。