「頑張れ」以外の声かけをしよう
うつ病に代表される、心の病で苦しんでいる人に「頑張れ」が禁物であることは広く知られています。
頑張って頑張って、それでも辛くて病気にまでなってしまった人がうつ病ですから、「頑張れ」がどれほど酷な言葉かは想像に難くありません。
でも、追い詰めたくて言っているわけではありません。応援したい気持ちがあるからこそ、他に良い言葉が思いつかず、つい「頑張れ」と言ってしまう。
励ましのつもりが相手を苦しめているとしたら、不幸な本末転倒です。
では、どうしたらいいでしょうか?
私からの提案は、「その時の自分の気持ちを分析して、目の前にいるその人に、違う言葉を使う習慣を身につける」です。
1.なぜ「頑張れ」と言いたくなるか
家族や友人は、その人とずっと一緒に過ごしてきました。
もしかしたら誰よりも明るく元気で、リーダーシップがあってアグレッシブで、みんなを引っ張っていたような人だったのかもしれません。
そういう人だ、と思って接してきたのでしょう。
なのに、別人のようになってしまった。
以前の「本当の」その人に戻って欲しい、頑張ればまたそうなれるはず、それだけの力を持っている人だ。
という信頼があって、苦しみから解き放ってあげたくて、その結果出てくる言葉が「頑張れ」なのではないでしょうか。
2.「今の」のその人をそのまま受け入れる
頑張って欲しい、元に戻って欲しいという気持ちを持ち続けている間は、きっと「頑張れ」と声をかけてしまうでしょう。
見た目は寝ているだけ、一言も発しないから、全く頑張っていない、頑張ることを放棄しているようにも見えてしまっているのかもしれません。
その人の以前の実力を信じる気持ちはそのまま保存して、一旦仕舞ってしまいましょう。
そして今目の前で何も出来なくなっているように見えるその人を、その状態のまま、受け入れましょう。
いつか元に戻ってくれる、という条件を求め続けるのを止めてみましょう。
「そういう人だ」と、うつ病の状態のまま受け容れましょう。
そうすると、無理に元の状態に戻そうとする焦りが減っていきます。
無条件に今目の前にいるその人を観察していると、今出来る限りにおいての努力や工夫をしていることに気が付くはずです。
そうした小さな変化に気づくと、「頑張っているんだな」と分かります。
そうすれば、わざわざ「頑張れ」と言いたくなることもなくなっていくでしょう。
3.違う言葉を使う習慣をつける
「頑張れ」と言いたくなる時の自分の気持ちを分析してみましょう。
「頑張れ」を、違う言葉に翻訳するのです。
気持ち:「今までだったらもっと元気で、色んな事してくれたのに」
↓
言い方:「出来ることだけやればいいからね」
気持ち:「マイナスなことばかり言うなぁ。前はそんなこと言わなかったのに」
↓
言い方:「そうだったんだ。今まで我慢してたんだね」
など。
相手の疲れた気持ちを肯定すると、それを増強させてしまうのでは、と考えてしまうかもしれませんが、実は逆です。
つい言葉にしてしまう愚痴、文句、悩みなどは、否定されるほうが強くなります。
肯定されると、相手と分け合えたような気がして、薄まります。
愚痴や文句は、掃除をしないまま放置していた家に溜まった埃のようなもの。
取り払えるときに取り払いましょう。
心に溜まった埃は、聞き手に肯定されることで少しずつ取り払われていきます。
こちらが意識して「頑張れ」を封印していくと、気が付けば本人の口から「頑張る」と言う時が来ます。
あれほど嫌がっていた言葉を自分で言うようになるのですから、とんでもない変化です。
もし本人から「頑張る」と言ってきたら、それも全部肯定しましょう。
そしてそこまで伴走してきた自分も、たくさん褒めてあげましょうね(←実はこれが一番大事)。