仕事でうつにならないために ③現職への適性
仕事うつを予防するための要素3つ目は、「今の仕事(現職)への適性」についてです。
○○占いなどで見る「あなたの適職は○○師です」のようなことではありません。
仕事とは、無数の業務の塊です。○○師に向いているかどうか、というのはマインドの問題なので、その職業の理念に同意できるかどうか、ということになります。
それとは別に、業務への適性に悩んだ時、どのように対処したらいいかを考えたいと思います。
1.適性が無いと感じる時
業務への適性が低い時とは、一つ一つの作業に対する苦手感・抵抗感・他の人より工数がかかる、という部分に現れます。
他の人が何の抵抗もなくスムーズにこなしている業務に、なぜか自分は強いストレスを覚えてしまう時はないでしょうか。
- 会ったことがない人に電話をかけなくてはいけない時
- 会議で発言する時
- 他の人に業務説明をする時
こうした業務ひとつひとつは、どんな職業を選んだとしてもついて回るものです。
○○師に適性がある・なし、という悩みとは種類が違います。
転職したとしても同じ問題が浮上するでしょう。
また、立場が違った時に適性が顔を出す場合もあります。
ずっと一人で成績を上げてきた人が、経験を積んで役職に就いたときです。
会社組織はピラミッド型です。業務を円滑に回すために、マネージメントをする人間が必要です。
しかし、単独で業務成績をあげる能力と、人や部署を管理する能力は全く別物です。
けれど、人を管理する能力があるから○○長になりました、という人はあまり多くありません。
○年働いているから、いつも目標達成しているから、という、管理能力とは関係ない理由がほとんどでしょう。
そして実際に立場が変わった後に、それ以前と仕事の進め方や周囲から求められる期待が変化したことに気づき、自分の適性に疑問を感じてしまうのです。
2.適性が無いことによる問題点とは
業務に適性が無い、と自覚することで、どんな問題が起きるでしょうか。
例えば「会議で発言すること」がどうしても苦手、苦痛、無理、という場合。
参加者が何十人といる大きな会議で、自分は発言する必要がない時は問題ないでしょう。むしろ熱心に参加できると思います。
しかし少人数の、部署またはチームでの打ち合わせでは、何も意見を述べないというわけにはいきません。
会議以外の場で頑張るほど、「あなたの意見が聞きたい」と、他のメンバーも思うはずです。
周囲の期待には応えたい、けれどそれに応えられる自信がない。
板挟みは、心理学では「葛藤」とよび、ストレスの元になってしまうのです。
他にも、「営業成績をもっと上げたい」と思っているのに、電話だと思うように相手とコミュニケーションが図れない場合。
対面やメールを使ったシーンでカバーできればいいですが、頻繁に連絡を取るとき、今でも電話がもつ効力は大きいです。
叶えたい目標があって、自分には十分な力があるのに、適性が邪魔をしてしまう。
これも同様に「葛藤」に苦しめられるケースです。
3.困りごとによって対策を考えよう
適性とは
「性質・性格が、その事に適していること。そういう性質・性格」
という意味です。
性質や性格は、余程の理由やきっかけがないと変えることは困難です。
特に「性質」とは持って生まれたものである場合が多いので、変えることがほぼ不可能だったりします。
仕事上の適性が問題なら転職すればいい、というのも、果たして解決になるでしょうか。
Aという困りごとを解消出来ても、B/C/D/E/F/G……というように、それまでなかった(今の職場にはない)問題が、新たな環境では起きるリスクもあるのです。
ではどうしたらいいか。
適性を求めるのではなく、それによって起きた困りごとへの対処方法を考えてはどうでしょうか。
例えば営業成績がよく社歴も長いためににマネージャーになったまでは良かったが、部下のマネジメントが上手く出来ず、正直言って興味がもてない場合。
マネージャーが部・部下をマネジメント出来ないことで起きる問題とは、
- 部としての足並みがそろわず、目標(数値)を達成できない
- 部下のメンタルヘルスが落ちる
- 部内で問題が起きても、統括して解決に当たる人がいない
などが考えられます。
①であれば、メンバー個別の目標値を少なくして自分が多く数字を上げる。
②であれば、産業医や人事部を頼る。
③であれば、自分以外の部内メンバーで「頼られがちな人」に権限を与える。
などが考えられるでしょう。
もちろんこれは次善策にすぎませんが、問題が深刻化するのを防ぐことが出来るでしょう。
4.適性が無い以外に問題があるときは?
自分の適性が理由で問題が起きているなら、対策を工夫することで解決できるかもしれません。
しかし、他に原因がある可能性もあります。
例えば、部内で自分だけが目標を達成できない月が続いている場合。
他の人よりも残業したり、顧客を増やしたり努力しているのに未達成が続く。
これは本当に自分一人の問題でしょうか。
自分だけ厄介な顧客を割り当てられている、実は以前から担当している他の業務の負荷が大きくなっていて、手が回らない。
など、他に要因があるときもあります。
真面目な人ほど原因を自分一人に帰しやすいですが、無理を重ねる前に冷静に判断出来そうな第三者に相談してみましょう。
仕事は皆で作り上げるものです。自分一人だけが原因、というケースの方が、むしろ少ないのです。
仕事うつ予防をテーマに、3回に分けてお話しましたがいかがでしたでしょうか。
モチベーションも、適性も、環境も、固定固有ではありません。
時間の経過によって自分が変化することで、この3要素の中身も変わっていきます。
柔軟に変化を受け入れつつ、自分の役割を果たせることが、メンタルヘルスへの良い効果をもたらしてくれるのではないでしょうか。