- 障害年金を受給した、その先を考えましょう
- 障害年金を受給することで得られるものはお金だけではありません。受給しながら出来る様々な社会復帰を考えました。
①障害者就労
障害年金を受給する程度の障害状態では、すぐに職場復帰・転職は難しいでしょう。
ですのである程度療養を経て、主治医の許可が出てから、就労移行支援等の福祉サービスを活用して、療養中に落ちた体力や生活リズムを戻しながら、現在の状況で無理なく続けられる求人を探す、という流れになるのが一般的です。
復帰時の求人を障害者就労にこだわる必要はありません。大事なのは「病気・障害・特性に必要な配慮をしてくれる職場かどうか」という点です。
残念ながら通常の就労ではこうした配慮が行き届くことは難しいでしょう。
着実にリハビリしたいなら、やはり専門的な知識や態勢が整っている「障害者雇用枠」での就労をお勧めします。
病気になる前とは違う、今のご自身に合った働き方を、無理なく見つけるために役立てましょう。
良い就労先が見つかればそのまま継続するもよし。
更に良い待遇・やりがいを求めて一般就労(障害者雇用枠ではない通常の求人)を目指すもよし、です。
②グループホームで一人暮らし
グループホームとは、障害のある人が3~4人で、世話人などから生活や健康管理面でのサポートを受けながら、共同生活を営む住宅のことです。マンションやアパート、戸建てなど一般の住宅を利用し、社会福祉法人や NPO 法人、医療法人などが設置します。
グループホームは「障害者総合支援法」で定める障害支援区分が非該当または区分1といった障害の軽い人が入居し、一般の人たちと同じような生活を送り、設置法人が派遣する世話人が定期的に訪問しながら、食事づくりや健康管理などを手伝うものと、障害支援区分が2以上の日常生活の介護が必要な人が入居し、世話人や生活支援員等が毎日訪問し、食事や入浴など日常生活の介助を行うものがあります。
精神的な病気になったとき、自宅で療養出来るとよいのですが、残念ながら療養に不向きなご家庭や環境もあります。その時にグループホームを活用することで、自宅にいるよりも安心して療養し、かつ復帰のための足掛かりを得ることも出来ます。
グループホームは基本的に夜間に活用するサービスで、日中は外で活動する必要があります。
病院のデイケア、地域活動支援センターの活用、または就労継続支援のA型・B型事業所での就労などと合わせて活用出来ます。
③パート・アルバイト・業務委託で働く
しばらく療養に専念し、状態が安定してから主治医と仕事について相談する、という流れは①と同じだと思います。
「何かやりたい、働きたいと思うけれど、がっつり週5で働くのはまだ怖い」という気持ちがあるかもしれません。
障害年金があるので、無理をする必要はありません。でも「何かしたい」という気持ちを持てたことがとても重要です。その機会を逃さないようにしたいですよね。
手始めとしてアルバイトやパートタイマー、働き方に融通が利く業務委託などの求人を検討してみてはいかがでしょうか。
最近では完全在宅で出来る業務もあります。
就労先には可能なら病気・障害について伝えておくことをお勧めします。
障害を伝えたら働かせてもらえないのでは、と考えるのもやめましょう。障害を伝えたら雇用されない場所で隠して働くことは百害あって一利なしです。
新しい楽しみや生きがい、方向性を見つけるきっかけになるかもしれませんし、①の障害者雇用同様、一般就労へ向けてのステップの一つにもなります。
④非労働の社会参加
自宅療養する中で、少しずつ状態が改善したり、障害との付き合い方を自分なりに会得していくことが出来るようになります。
そうすれば①・③同様に「何かやりたい」という気持ちが湧いてくるでしょう。
ただ「何か」が「仕事」と考えてしまうと、まだ過重だったり折角のやる気が薄れてしまったり、働くことへの恐怖心が勝ってしまうかもしれません。
その時は、自宅療養から一歩進み、「働く」よりもう少し緩やかな活動方法を考えてみてはいかがでしょうか。
一つは病院で行われる「デイケア」です。通院患者向けのリハビリテーションの一環で、さまざまなプログラムが用意されています。病院ですから作業療法士がいたりするので、専門的なリハビリを受けることが出来ます。もし万が一症状が出てしまっても病院ですから安心です。
もう一つは「地域活動支援センター」です。Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型の3種があります。Ⅰ型には社会福祉士・精神保健福祉士がスタッフにいるので、生活上の困りごとにも対応してもらえます。
日中の「居場所」を得られるので、体力づくりにも生活リズムの改善にも役立ちます。
こうした活動で自信がついたとき、「やっぱり働きたい」と思ったら、①または③の方向で検討するとよいかもしれません。
⑤自宅療養+新たなライフロール
「社会復帰」というと、社会人の場合はどうしても「仕事をする」ことと考えがちですが、他にも選択肢はあります。
「ライフキャリアレインボー」という考え方をご存じでしょうか。
キャリア=職業とは考えず、キャリアを人生のある年齢や場面のさまざまな役割(ライフロール)の組み合わせと定義するキャリア理論です(mitsucari)。
仕事をする以外でも、「家庭人」「市民としての無償の地域活動」「余暇人」「学生」のような役割(ライフロール)を得て生活することも、キャリアの一つです。
障害年金を受給している、ということは、他の人にはない「病気や障害と向き合いながら生きる」必要があります。それを検討した上で、職業人へ戻るのではなく、別の役割を選択することも可能です。
他の人が会社を定年退職した後に経験する「二回目のアイデンティティ探し」を体験することになるかもしれません。
新しい役割を獲得した後からでも、再び職業人へ戻ることも可能です。
障害年金の受給により「必ず働いて生活費を得なければならない」という縛りから解放されます。障害と向き合いつつ、選択の幅が広がった未来を模索しましょう。