うつ療養中の過ごし方 ①回復までの変化と必要条件
うつ病から回復するためには、療養中をどう過ごすか、がポイントになるのは皆さまご存知の通りです。
では、実際にはどう過ごせばいいのか、どんな生活になるのか、など、疑問も多いと思います。
今回は、自分の経験も含めて、
- うつ発病⇒回復までの変化
- 何が必要か(うつ病本人にとって)
- 家族が出来ること
- セオリー通り進まないのがうつ療養の現実
- セオリーから外れた時はどう対処したらいいか
- 家族の方に覚えておいていただきたい5か条
- Q&A
を、3回にわたって考えてみたいと思います。
1.うつ発病⇒回復までの変化
うつ病とは、仕事や趣味は言うに及ばず、日常生活の全てに対して取り組む意欲も気力も根こそぎ奪っていく病気です。
なぜうつ病になるのか、の原因は人それぞれですし、病気としてのメカニズムは医療のご専門に譲るところですが、うつ病の家族を1対1で見続けてきた経験者としては、発病から安定までの経過はこんな感じだろう、というのが以下の図になります。
大きく全体で見ると、直線のように順調に回復しているように見えますが、実際は細かい上下を数えきれないほど経験します。
小さな上下もあれば、大きな上下もあります。大きく落ちる(下がる)時は、
「前より悪くなったかもしれない」
「今までの苦労はなんだったんだ」
「もしかしたら治らない、ずっとこの悪い状態が続くのかも」
のようにも考えて落ち込んでしまうでしょう。うつ病本人も、家族も。
ですが、回復し始めると波の上下が大きくなる、というのがうつの特徴でもあります。
「悪化した」のではなく、「精神活動が活発になってきた」のです。
勿論いいことなのですが、ここしばらくは反応していなかったこちらの言動に反応できるようになることで、ケンカが増えたりもします。
長く療養してきた疲労がたまってきた上にケンカまで増えてしまうので、双方のストレスが増大する時期でもあります。
ここで、こうした変化に敏感になって、主治医やカウンセラーに状況を共有できると、処方を変えてくれたり辛い気持ちに寄り添って、「今が回復期」であることを教えてくれると思います。
うつ病では「完治」という表現はほとんどしません。
「寛解」(抗うつ薬などを飲む必要はないが、症状を安定させるよう気をつけながら普通の生活に戻る)が目標になるでしょう。
ですから、薬の処方や通院が終わったとしても、うつ病以前とまるっきり同じ生活に戻る人はほとんどいないと思います。
うつ病療養中のうつの状態は上記の図のような上下を繰り返しますが、それとは別に、あまりある時間を使って色んな事を考える中で価値観が大きく横ブレします。
色んな可能性や方向を模索する中で、以前にはなかった「価値観の幅」を手に入れています。
うつ病の療養とは、「元へ戻る」だけではなく、多様な価値観も手に入れる過程でもあるでしょう。
2.うつ本人に必要な療養条件5つ
①通院、服薬
これは言うまでもありませんね。
医療だけで回復するものではありませんが、眠れなかったり、時に衝動的に自殺したくなってしまったり、食欲が落ちて健康に影響するようなときは、医師の見立てと薬が効果的です。
うつ病を回復させるのではなく、体がうつに耐えるための「下支え」になります。
ただ、どこまで効き目があるのか、とか、副作用などは個人差が大きいので、飲んでみて不安や違和感があれば、どんどん主治医に相談することをおススメします。
②睡眠、食事
<①>と被りますが、うつ病の顕著な症状に「睡眠」と「食欲」の異常があります。
ほとんどの人は不眠と食欲減退に現れますが、逆に過眠になったり過食になるケースもあります。
普段とは違う状態が数週間続く、というところが共通するでしょう。
そして睡眠と食事はダイレクトに健康に影響します。
体のけがや病気は、患者が「頑張って治そう」と意欲的に治療や療養に取り組みますが、うつ病にはその「意欲」がゼロです。
お腹が空いたら食べる、のようなメカニズムがぶっ壊れているので、自覚的に栄養を取って、入眠剤を使ってでも眠る必要があります。
③安心
病気の時は、健康な時とはレベルも質も異次元の不安に囚われてしまいます。
今現在に対しても不安なのに、将来に対して安心を得ることはもっと難しくなります。
それでも、「いつかきっと(今よりは)良くなる」と思えることが、療養生活には必要です。
発症時のどん底に辛い時は難しいですが、少しずつ外部から情報を得ようと思えたら、家族だけでなくご本人もうつ病について学んだり、社会保険・福祉サービスの活用で生活を保障したりしながら、安心材料を増やしていくことが必要です。
④コミュニケーション
不安と同じく、孤独感も半端ないのがうつ病です。
周囲には、自ら他者との交流を断っているように見えるかもしれませんが、それは自分を守るための手段の一つであって、孤独がいいと思っているわけではありません。
必要なのは「本人が信頼できる人とのコミュニケーション」です。
それが家族なのか、友人なのか、医療福祉関係者なのか、職場の関係者なのか、はケースバイケースでしょう。
本人が「この人は自分を理解してくれている/自分を傷つけない」と核心を持てる相手とのコミュニケーションは、うつを受け容れるためにも、その後のしんどい療養生活を支える上でも重要です。
⑤好きなこと
うつ病になると趣味やレクリエーションを楽しむ余裕は皆無になります。
「非定型うつ病」という、従来型の何も楽しめないうつ病とは傾向が違ううつ病もありますが、定型でも非定型でも、少しでも楽しめるものがあるなら、それは大事にしましょう。
メンタルな薬を服用している間はアルコールは禁忌なので、お酒が好きな人は辛いかもしれませんが、だからこそそれ以外で楽しめることがあるなら、気兼ねなく楽しんでほしいと思います。
好きなことを楽しんでいる時は、自分に対して肯定的になれます。今の自分を受け容れることで、不安が軽減され、「もしかしたらいつか元気になれるかな」と思えるようになります。
趣味を楽しむ余裕があるなら仕事しなきゃ…、などと考える必要はありません。
将来的に仕事が出来るようになるためのリハビリだと思って、どんどん楽しんでほしいと思います。
次回は
- 家族が出来ること
- セオリー通り進まないのがうつ療養の現実
- セオリーから外れた時はどう対処したらいいか
について考えてみたいと思います。
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