自分を満たすとは―自分を尊重する第一歩

はじめに:なぜ「自分を満たすこと」が大切なのか
頑張ってるのに満たされない、虚しくなる、意味がないのではないか、と考えて不安感が高まることはありますか。
それはもしかしたら、自分で自分を満たす方法をとっていないからかもしれません。
社会的な基準や誰か他人が望むだろう要望に応えることは、一見満足度や自信を高めるように見えて、やり続けることで「私は一体何を望んでいるのだろう」という別の悩みを生む要因ともなります。
今回は「自分を満たすことがなぜ大切なのか」を、自己受容と自分軸という視点から解説し、自分らしく心を満たすヒントをお伝えします。
目次
- 「自分を満たす」とはどういうことか
- 満たされない原因はどこにある?―欠乏感の正体
- 自分を満たすための第一歩:「自分を知る」
- 自分を満たす3つの実践方法
- 「自分を満たす」と人間関係が変わる
- まとめ ― 自分を満たす唯一の方法とは
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「自分を満たす」とはどういうことか
最初にひとつお尋ねします。
今、自分は満たされていると思いますか?
結構難しい質問ですよね。
まず、何があれば「満たされている」と感じるのか、が、人によって違います。
- お金
- 時間
- 人間関係
- 住環境
- 仕事
- 趣味
もっといろいろあるでしょう。
どれが正しい・間違っているもありません。
「どれが豊かだと自分は満足するのか」、これを知っておくことはとても重要です。
①欲望を満たすvs.心を満たすの違い
そして「何が豊かだと満たされるか」を考えるときの軸として「欲」と「満足」の違いがあります。
欲・欲望とは「欲しがる心」ですね。
人の「欲しい」は、時として無限です。なぜ欲しいと思うか、の動機が変化するからです。
例えば「欲しい服があるから○万円欲しい」と思っていたとして、それを手に入れたら今度は「服に合うバッグと靴が欲しいから○万円欲しい」が出てきます。
この流れを生む欲を100%満たそうとすると上限がありません。
もう一つの「満足」は、上限があります。
「将来のために○千万円貯めた。これだけあれば十分だ」と安心して満足できます。
どちらが良い・悪いではありません。
人が「満たされた」と感じる形態が、大まかに分けて2つある、ということを、まずは知っておいてください。
②「自分を知り、受け入れる」ことが自分を満たすことにつながる理由
今回この記事でお伝えしたいのは、後者の「満足」についてです。
事例では分かりやすく数値を含めましたが、人が自分自身に満足する、自分を満たすときに常に数値で測れるとは限りません。
ではどこを上限とするか。
その目安となるのが「自分を知って受け入れる」ことによって生まれる「満足度」です。
- 自分は何を大切にして生きているのか
- どんな人間でありたいのか
- 何が心地よくて、何が不快なのか
- 何が好きで、嫌いなのか
- 今までどうやって問題を乗り越えてきたのか
- どんな人たちと関わって影響を受けてきたのか
- 何を避けてきたのか
これらは全て今の自分を作り上げてきた要素です。
これを振り返り、知って、受け入れることで、どんな状態になれば満たされるのか、のラインが見えてきます。
他の人は夜の睡眠時間は5時間でいいと思っている、だけど自分は8時間必要だ、というのと同じです。それは日中の過ごし方や体調の傾向などが関わってくるから。
自分にとってどんな状態が「満足」なのか、は、自分が決めることが出来るのです。

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満たされない原因はどこにある?―欠乏感の正体
①比較や承認欲求から生まれる“他人軸”の落とし穴
満たされる、の反対は「欠乏」です。
何かが足らない、不足している、存在しない、という感情です。
これもまた人として自然な感情、欲求の一つです。
代表的なのはマズローの「階層欲求説」です。
- 生理的欲求
- 安全の欲求
- 所属(愛)の欲求
- 承認欲求
これらは「欠けている」と不安感の元になります。
「欲しい」というより「欠けてはいけない」と捉えているから、満たそうとするものです。
では、どんな時に「欠けている」と感じるのか。そこがポイントですね。
「お腹が空いた」から「何か食べる」のは、自分自身の欲求と判断です。
では「結婚したい」と思ったとしたら、それはなぜでしょうか。
例えば
・交際している人とこれからもずっと一緒にいたい
・年齢的に結婚していないと変な目で見られそうで怖い
の場合、どちらも「結婚したい」(=独身でいたくない)理由として納得できるものです。
しかし1点、違いがあります。
前者は「自分の判断」で、後者は「他人と比べた結果」である、という点です。
他人と比べて、自分側に「欠けている」点を見つけたことで「満たそうとする」ことは、真に「自分を満たす」ことに繋がるのか、は、十分に検討する必要があるでしょう。
②自己否定・自己不信がもたらす心の空白
欠乏感が生まれるもう一つの理由に「自己否定」「自己不信」も挙げられます。
自己否定とは言葉の通り『自分自身の「ダメなところ」や「価値のない部分」を自分で見つけ出し、それを認めてしまったり、自分の良い部分や能力すら「これでは足りない」と否定したりする心理状態』のことです。
自分自身を受け入れることが出来ないのは○○が足らない・欠けているせい、と捉えるのですね。だから○○が手に入れば自分を受け入れることが出来る、自信がつく、自己肯定感も高まる、という流れが出来上がります。
自分に今無いものを得ようと努力するのは素晴らしいことです。
ただ、その欠乏が埋まることと自己受容は別の話です。
自己否定の反対の「自己受容」とは、『ありのままの自分を評価せずに無条件に受け入れること』です。この「無条件に受け入れる」という部分がポイントです。
欠けている部分を埋めれば受け入れられる、というのは「条件付きの受容」です。これでは、今現在受け入れることが出来ていない「自分」は置き去りのままです。
自分が満たされないと感じる根拠は、実は「欠けているものがあるから」ではなく、「今の自分をそのまま受け入れることができない」ことによるほうが多いのです。
③「自分を知らないまま」生きることは不足感を一層高める
そのままの自分を受け入れることが出来ないのは、どうしてでしょう。
受け入れたくない「自分の部分」があるから、ではないでしょうか。
- 人見知り
- 人間関係が苦手
- 頭が悪い
- 容姿が好きになれない
- 不得手なことが多い
のように、「ここは克服したい、このままでいたくない」と思うから受け入れることが出来ず困っているのではないでしょうか。
自分を知って受け入れる、とは、欠点をそのまま保存することではない、という点をご理解いただければと思います。
例えば『ダイエットしたい』と思ったとしましょう。
今何キロですか? ウエストは何センチですか? 服のサイズは?
これを『知る』ことのないまま、どうやってダイエット計画を立てるのでしょう。
立てられなくはないかもしれません。
しかし非現実的な内容になって続けることが出来ず、結局ダイエット失敗→自分をもっと否定したくなる、という流れになりそうですよね。
自分を知って受け入れるとは、現在地を知ることです。スタート地点を見極めることとご理解ください。

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自分を満たすための第一歩:「自分を知る」
①自分の感情・欲求を見つめる方法
自分を満たすためには、先ほどもお話したように「自分を知る」ことがスタートになります。
その重要な要素が「自分の感情・欲求を見つめる」ことです。
セルフトーク、という言葉をご存じでしょうか。
言葉のまま「自己対話」です。
この自己対話、多い人は1日に6万回ほど行っています。自己対話ですから全部脳内の独り言です。ものすごい量ですよね。
このセルフトーク、内容は種々雑多、玉石混交です。
- 眠い……
- また同じミスをしてしまった!
- 絶対成功させるぞ!
- 電車混んでてやだなー
こんな感じに、意識すらしてないトークもあれば、自己評価にダイレクトに影響するようなものまで含まれます。
そして6万回も繰り返しているのですから、ほとんどが思い浮かぶそばから忘れています。
自分が考えて思い浮かべたことなのに、覚えてないんですよね。
それはつまり、自分の感情や欲求も、自覚出来ていないということです。
なのでまずはセルフトークを自覚するところから始めましょう。
- その日の出来事
- 出来事に対してどう感じたか
- 感じたものから、何を求めたか
1日1件ずつでいいので、メモしていきましょう。
②過去の経験から価値観を抽出する
過去の経験もまた、自分をどうやって満たすか、を考えるために重要な手がかりになります。
過去の経験、って考えると、真っ先に思い浮かぶのは辛かったこと・悔しかったこと・悲しかったこと、のようなネガティブな出来事であることが多いでしょう。
ネガティブな出来事はネガティブな感情とセットです。だからあまり考えたくない。ほとんど触れることのないまま心の底に沈ませてしまっているかもしれません。
意識して考えないようにしないとふと思い出してしまう。それくらい強烈だということは、もうその時点で自分自身に大きな影響を与えている出来事なのではないでしょうか。
だとすれば、その経験が自分にとってどんな意味があったのか、を振り返ることは、大きな意味があると言えるでしょう。
それによって「自分はどんなことに価値を置いて生きているのか」、つまり自分軸が見えてきます。
例えば会社の上司から『もっと社交的になれ』と言われたことをいつまでも忘れることが出来ずにいるとします。
心の中では自分でも「もっと社交的になれたら」と思っているかもしれません。でもそうなれない、だからこそ上司の言葉が重く刺さりました。
分かっているけど出来ない・やらない理由にこそ、自分の価値観が眠っています。
- 社交的=馴れ馴れしいと思われたくない
- 人とは時間をかけて関係を構築していきたいと思っている
- どういうことが「社交的」なのか、具体的に分からない
- 社交的になるより、他に大事なものが自分にはある
などかもしれませんよね。
これを突き詰めていくことで、自分にとって大事な指針が見えてきます。
つまり「自分を満たす方法」は、誰かが用意した正解ではなく、自分自身の価値観から導かれるものです。
そう気づくと、他人と比べる必要もなくなり、自然に「自分に合った満たされ方」が見えてくるでしょう。
自分を満たす3つの実践方法
では実際に、「自分を満たす」ために何をすればいいのか、の方法を3つご提案いたします。
①昨日の自分と比べる(成長を実感する)
人はつい他人と比べてしまいますが、それでは欠乏感ばかりが膨らみます。
代わりに「昨日の自分」と比べてみましょう。
- 昨日より少し早く仕事が片付いた
- 昨日より丁寧に相手に接することができた
- 昨日より気持ちが軽くなった
「出来た」という感覚は、小さくても確実に自分を満たしてくれます。
ほんの小さな変化でも立派な成長です。
「過去の自分との比較」は、自分の歩みを肯定的にとらえる最もシンプルな方法です。
②小さな喜び・成功を可視化する(満足感を積み重ねる)
頭の中だけで「できた」と思っても、時間が経つと忘れてしまいがちです。
そこでおすすめなのが「可視化」です。
- 今日できたことを3つ書き出す
- ToDoリストの「完了」に✔をつける
- 1日の終わりに「良かった瞬間」を振り返る
小さな達成を見える化すると「私はちゃんと前に進んでいる」と実感できます。
これがモチベーションを守り、継続する力になります。
満たされる感覚は「一発逆転」ではなく、小さな積み重ねの中に育っていきます。
③自分軸に立ち戻る(「自分にとって大事か」で判断する)
迷ったときや不安に揺れるときは、他人の基準で「どちらが正しいか」を考えがちです。
しかし、自分を満たすために大切なのは「自分にとって大事かどうか」で判断することです。
例えば「誘われたけど断りたい」と思ったとき、自分軸に立ち返って「これは自分にとって大切な時間やエネルギーの使い方か?」と問いかけてみましょう。
自分軸に沿った選択は、結果がどうであれ「納得感」を残します。
その積み重ねこそが、内側から自分を満たす源泉になります。

「自分を満たす」と人間関係が変わる
①他人に依存しない安心感が生まれる
自分で自分を満たすことが出来る、ということは、自分を評価するときに他人を必要としなくなる、ということでもあります。
他人とは、とても難しい存在です。
自分に無いもの・要素を持っている人がいると「比べて」しまって、自分に失望します。
他人に何かを期待して、それが叶えられないと相手に対する失望、不満、不信が生まれかねません。
でも他人がいるからこそ頑張れたり、モチベーションが生まれる、というのも事実です。
他人と一切関わらないで生きていくことは、ほぼ不可能でしょう。
だからこそ、他人とどんな関係を築いていくか、は、ダイレクトに『自分を満たす』ことに繋がります。
そして自分を満たす関わり方とは「依存をしない」関わり方です。
自分で自分を満たすことが出来れば、必要以上に他者に期待したり、比較して落ち込むこともありません。
必要な場面で必要な分だけ関わり合う、それが「支え合う」ことに繋がり、自分を満たす関係性に育ってくれます。
相手に依存しなくても自分で自分を満たせるからこそ、健全な距離感を保ちながら信頼関係を築くことができます。
②無理に合わせなくても自然に繋がれる
そして自分で自分を満たせると、他人に無理をして合わせることが無くなります。
- 空気を読む
- 同調する
- 忖度する
- 迎合する
これらはどれも他人に合わせている状況を表わしています。
そしてこうした接し方をしている時、何か無理をしている自分を想像しませんか?
本来、最低限のマナーを守っているなら、無理をして他者に合わせる必要はないのです。
しかし自分が満たされていないと、不足しているものを他者との関係を円滑にすることで補充しようとします。
その場は丸く収まるかもしれませんが、本当に自分が欲しいものではないのですから、自分自身が満たされることはありません。
自分が満たされていれば、無理に相手や状況に合わせる必要が無くなり、自分の判断で行動することが出来ます。
つまり自然体でリラックスして人と関わることが出来るようになります。
誰かと繋がったり共感することが出来たとしたら、それは『自分が満たされている』ことの結果と言えるでしょう。
無理に相手に合わせずにいられるからこそ、ありのままの自分で関われて、相手とのつながりがより深く本物のものになります。
③相手をコントロールせず「その人をその人として受け入れる」余裕
更に、自分を満たすことが出来ているひとは、他者を自分に合わせてコントロールしようとすることが無くなります。
これは先ほどの「相手に無理に合わせる」ことの逆バージョンですね。相手に無理をさせて自分の不足を埋めさせようとする行動です。
親や上司、先輩、伴侶が、子ども・部下・後輩・伴侶を想う通りに動かそうとするのは、自分の不足を自分で埋めることが出来てないためと言えます。
それが過度になれば、過干渉やハラスメントに繋がります。
自分の不足は自分自身が埋めるものです。他者に期待したところで、それは水物です。
自分で自分を満たすことが出来れば、他者の判断・選択・行動に対して自分の要望を押し付ける必要が無くなります。
そして相手をそのまま受け入れることが出来ます。最初にお話した「無条件の受容」を、他者に向けることが出来ます。
それは対等で健康な関わり方です。その土台があってこそ、幸せな人間関係を築くことが出来るでしょう。
相手をコントロールしようとしないからこそ、お互いを尊重し合い、安心して心を開ける関係が育まれていきます。

まとめ ― 自分を満たす唯一の方法とは
「誰かに満たしてもらう」ことは、一時的な安心や喜びを与えてくれます。
けれども、それだけに依存してしまうと、状況や相手に左右され続け、不安や不足感が尽きることはありません。
本当に心を満たす唯一の方法は、自分自身を知り、受け入れ、そして自分で満たすことです。
欲望を追いかけるのではなく、自分にとっての「満足の基準」を見極め、その基準を大切にして生きることが、揺るがない安心につながります。
自分で自分を満たせるようになると、他人に過度に依存することもなくなり、無理に合わせなくても自然に関われ、相手をコントロールする必要もなくなります。
結果として、人間関係はより健全で温かいものに育っていくのです。
自分を満たすことは、自分だけでなく、周囲にも安心と優しさを広げる力を持っています。
今日から少しずつ、自分の声に耳を傾け、心を満たす習慣を育ててみましょう。
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「私はどうすれば過去を整理して自分軸を立てることが出来るのかな」
そう思ったら、私と1対1と話してみませんか?
堅苦しく考える必要はありません。思っていること・普段言葉にする機会が無い思いを自由にお話しください。
その中から自分軸の種が見つかります。