うつ病の家族に必要な〇〇力 ー観察力ー
うつ病になった家族を持つ人に必要なスキル「観察力」「放置力」「行動力」。
まず一つ目の「観察力」について、考えたいと思います。
観察力を養うことで、不必要な不安を抱えず、自分をないがしろにせず、うつ病療養期間を過ごすことが出来ます。
1.相手(うつ病の人)を、フィルター越しに見るのを止める
①うつ病以前の元気だった状態と比較する
「前なら〇〇出来たのに」
「〇〇くらい平気だったのに」
と、うつ病になる前の状態と、うつ病になった今を比較していませんか?
ずっと一緒に生活してきたのですから、記憶がよみがえることは当然ですが、比較しても淋しくなったり悲しくなったり、以前出来たことが出来なくなった今への失望感ばかりが増してこないでしょうか。
②他の人と比較する
同じうつ病でも、うつになった理由やきっかけ、それまでの環境や今の状況、個人の特性などで症状の出方や強弱、深刻度、薬の効果や言動は全く違います。
「知り合いの〇〇さんもうつ病だったけど、この人みたいじゃなかった」
と、本来同じではないもの同士を比較しても、謎が増えていくばかりです。
③うつ病=出来ることは何もない、と考える
うつ病は精神活動が生きるための最低限ラインまで低下します。一番酷い時は、死ぬことすら思い浮かばないほど停滞します。それはすぐそばで見ている家族が一番感じることだと思います。
そして主治医からは「頑張らせない、無理させない、そっとしておく」ことをアドバイスされるでしょう。
その認識が進み過ぎると、
「うつ病の人は何も出来ない」
という思い込みに繋がりかねません。
もちろん元気だった時と比べたら出来ることは格段に減っています。
しかし、まったくのゼロではありません。
2.フィルターを外すための「マインドフルネス」視点
①マインドフルネスとは
マインドフルネスとは「今、という瞬間に完全に注意を集中する」ことです。
人は、今この瞬間に身体がありながら、意識は未来や過去、ここではない別の場所に容易に飛ばすことが出来ます。意識は無限に広がっていきます。
それゆえに、必要以上の不安や警戒心、疑念を持つことになり、それがストレスや葛藤の原因となります。
マインドフルネス的な視点=今・この場に意識を集中させてものを見ること、が出ると、目の前にある状況や人物をフィルターを外して観察することが出来ます。
②まずは自分に対してマインドフルになってみる
家族がうつ病になると、そのことで手一杯になり、自分自身を省みたりケアしたりする時間も余裕もなくなります。
気がつけば自分もうつ病と似たような状態になっている、というご家族も少なくないでしょう。
放置すれば「共倒れ」という、一番困った状況も招きかねません。
それを避けるために、まずは自分自身に対してマインドフルになりましょう。
今、自分がいる場所に何があるか。何が聞こえるか。
自分の姿勢はどうなっているか、不自然に力が入っている部位はどこか。痛みを感じている場所はどこか。
呼吸に意識を向けると、「今」に集中しやすくなります。
この瞬間の自分を感じましょう。
③相手をマインドフルに見る
自分に対して練習することで、「マインドフル」とはどんな状態なのか、を感じることが出来たら、同じようにマインドフル視点で相手(うつ病の人)を観察しましょう。
今は何をしているのか、今何をしゃべったのか、姿勢はどうなっているか、表情はどうか。
過去も他者も関係ありません。目の前のその人をじっくり観察しましょう。
3.観察すると、常に変化していることに気づく
「変化」し続けているものは、この場合4つあります。
- 相手(うつ病)
- 自分
- ふたりの関係、状況
- 未来
例えば1年後、3年後、を想像すると、不安や恐怖にかられるかもしれません。
しかし、その〇年後、というのは、ある日突然降ってきたり沸いて出てくるものではありません。
「今」の無数の連続の先にあるものです。
「今」がどのような状況にあるのか、を知り、日々どんな変化を続けているのか、を感じることで、よりリアルな「〇年後」を想像することが出来ます。
逆に言うと、自分が望む「〇年後」を迎えたいなら、その大元になっている「今」から手を付けていくことで、少しでも望ましい未来を迎えることが出来るのです。
4.観察力を磨くことで、出来ることが増える
あれこれ未来に対して備えたいとしても、晴れるか雨が降るかもわからない「明日」のために出来る準備などたかが知れています。
それよりも、今・この瞬間・目の前に対して出来ることは、具体的にリアルにたくさん思い付くのではないでしょうか。
思い付いたもの全てを実行する必要はありません。
100思いついて、出来ることは1とか2でも十分です。
「~~になったらどうしよう」と、今・この瞬間・目の前にあるものを見ないで遠い未来を不安がってばかりで何もしないよりも、ずっと役に立つことだからです。
マインドフルに観察する力を育てて、状況を好転させていきましょう。