気持ちを言語化する -言うは易く行うは難し-
読んで字の如くの慣用句ですが、これって本当でしょうか。
「行うは難し」は、「言う」の部分が何なのかによって変わってくるでしょう。
しかし「言うは易く」はどうでしょうか。
本当に「易い」ことでしょうか。
まずは言語化すること、そしてそれを言うこと。それもまた「難し」な行動の一つ。
そして言語化して認識することで、自分が生きる方向を見失うことがなくなるのです。
1.なぜ「言う」が「易し」ではないのか
「言うのはタダ」とも言いますよね。口を動かすだけですから確かにお金はかかりません。
「海外旅行行きたいな」とか「1億円欲しい」とか「出世したい」とか。夢のある言葉です。
これをお茶をしながら友達と喋っているなら楽しい限りです。「私はねー…」と、自分も何か考えてワクワクするかもしれません。
しかし、場所を変えたらどうでしょうか。
入社試験の面接の場面。
借金の返済日が明日に迫った時。
うつ病の家族が「死にたい」とこぼした時。
どんなにタダでも口を動かすだけだとしても言える人はいないでしょう。
なぜならそこには、言った後の「影響」「相手の反応」「自分に課される責任」があるからです。
2.言語化することのメリット
<1>の事例は極端すぎますが、言った側は軽く明るい気持ちだったとしても、TPOにそぐわなかったり、聞いた人の心境によっては、同じようなノリで聞いてもらえないことはしょっちゅうあると思います。
それによって失敗してしまうことも。
失敗も経験ですから、そこから学習してしまいます。極端な例では「二度と〇〇については言わない」「〇〇さんとはもう口きかない」など。
一つの対策と言えなくはないですが、そうだからと言語化そのものを止めてしまわないようにしましょう。
なぜなら言語化とは自分の気持ちや欲求、あるいは不満や不安を『形』にして認識するための、「タダで出来る」方法だからです。
3.なぜ形にする必要があるのか?
自分が何を望んでいるか、何に苦しんでいるかは、実は中々自覚できていないものです。
例えば明日お誕生日だとします。
家族から『誕生日プレゼント何が欲しい? 一番欲しいものを言って』と言われたら、答えられますか?
「一番」というところがポイントです。
あれもこれも、というなら、いくらでも出てくると思います。
ですが、それが一番=1つだけ、となると、結構悩んでしまうのではないでしょうか。
「苦しんでいること」も同様です。
助けて欲しい、悩みを相談したい、と思いつつ、『1番辛いことはなんですか?』と聞かれて、すぐに1番を出すのも難しいです。
仕事なら△△、プライベートなら✕✕、と言えても、どちらを優先させる?と聞かれたら、また悩んでしまいます。
望みや苦しみを言語化し認識することは、生きていく上での「方向性」を決めて確認しながら生活することなのです。
4.言語化出来てから、行動が現れる
不言実行、有言実行、いずれも「実行」は共通しています。
行動することの大切さは誰もが知っているということですよね。
でもその「行動」はどこから始まるのでしょうか。
不言でも有言でも、声に出さないだけで行為者の心の中には「言語化」されて認識されているのです。
ですから「行動」するためには、まずは何がしたいか、何を避けたいのか、自分の思考を言語化しておくことが先にあるのです。
「言うは易し」とは、実は「易い」ことではないのです。
思ったことはなんでも言葉にするタイプの人、強く決意しても中々口に出来ない人など、色々いると思います。
口にしたからすごく重要とも限らないし、言わないから考えていないわけでもない。
大切なのは、自分の希望や不安を、自分がハッキリと認識できているかどうか、ではないでしょうか。