自分に厳しくしすぎていませんか?
「自分に厳しく、他人に優しく」とは、子どもの頃に親や大人たちから言われることですが、「自分に厳しく」するばかりで、その傾向だけがどんどん強くなっている人が多いように思います。
自分を律して間違った方向へ進まないために「厳しく」するのは良いことのように見えますが、それと反対の力(自分に優しくする)を付けないまま「厳しくする」スキルばかり伸ばすと、どうなってしまうでしょうか?
1.自分に厳しくする、とは?
自分に厳しくするとは、具体的にどんなことでしょうか。
それは、常に自分の中に自分の欠点を見つける存在を作ってしまうことです。
常に規則正しく、時間を守って行動し、休憩時間も遊んだりしないで勉強や運動に費やし、栄養バランスの取れた食事だけとって間食もせず、イヤなことがあっても飲み込んで、抱えた宿題や業務を早く終わらせるために睡眠時間を削る。自分に対して嫌な振る舞いをする人に対しても寛容に、自分にも悪いところがあったのだ、と、原因を自分に求めて反省する……。
こんな人が実在したら確かに素晴らしいかもしれませんが、自分がこうなりたいと思うでしょうか。
少なくとも私は思いません。
これを全部こなせるスキルを神様が与えてくれたとしても断ります。窮屈すぎて生きているのが辛くなります。
どんなに疲れても傷ついても、厳しくすることでしか対処出来ないのです。
2.自分に厳しくすることの問題点
①自分が見えなくなる
自分に厳しくするとき、その判断基準は「他人の目」になります。
常に鏡に自分を映して、その姿をチェックして、間違った部分を正していこうとします。
そこに「自分の目」はありません。
自分の目とは、自分なりの理由を通じて自分を見ることです。
例えば朝10分寝坊してしまったとします。
他人の目から見ると、ルーズでだらしない行動です。
けれど前日遅くまで勉強していたなら、10分程度の寝坊はむしろ頑張ったと言っていい結果です。
「前日頑張って疲れたから、10分くらい寝坊しても仕方ない」という「自分の目」が無いのです。
長く続くと「自分がどうしたいか」が分からなくなってしまいます。
②欠点しか見えなくなる
自分の中に粗探し専門家しかいないのだとしたら、見つけるのは「欠点」ばかりです。
良いところや頑張ったところはスルーします。
結果として、「自分は欠点だらけの人間だ」と思ってしまい、自信を持てなくなります。
③行動範囲が狭まる、選択肢が減る
自信がもてなければ、当然自ら外へ出て人と交流しようという意欲がもてなくなります。
自分はダメな人間で、他の人から邪険にされるのでは、責められるのでは、馬鹿にされるのでは……、など、良くない想定ばかり浮かんできても不思議ではありません。
毎日の生活だけでなく、進路やキャリアを考える時も消去法になってしまい、「○○にならないで済む道」を選ぶようになるでしょう。
それが間違った道とは限りませんが、「本当にやりたいこと」かどうか、は、疑問ですよね。
3.自分に厳しくしてしまう時の対処法
①自分に対して好意的になる
まずは「自分に優しくする」スキルを身につけましょう。
いきなり道を踏み外すような行為(暴飲暴食、連日の夜遊び、不特定多数の異性交遊)ではなく、
- 疲れを感じたら5分休む
- 時々おやつを食べてリラックス
- 失敗しても「仕方ない」と考える
などです。
例えば仕事で失敗をした時。
自分に厳しくする人は、山のような叱責フレーズで自分を責め立てるでしょう。
でもこれが、同僚や友人の失敗だったらどうでしょうか?
傍から見ても分かるくらい落ち込んでいる人に、「どうしてこんなことになった」「もっとちゃんとやらなければダメじゃないか」「努力不足だ」のような厳しい言葉をかけるでしょうか。
「こういうこともあるよ」「次は気をつけようね」「対策を一緒に考えよう」
など、労わりの言葉をかけるのではないでしょうか。
同じことを自分に対してもやってみましょう。
②厳しくする=不安が強い⇒不安への対処
「~~になったらどうしよう」という不安が強い場合も、必要以上に自分に厳しくなりがちです。
リスクへの備えは必要ですが、行き過ぎればストレスになってしまいます。
不安とは未来に対する悪い予想です。未来は常に不確定要素です。どんなに備えても100%自分の想定通りにはなりません。
「人事を尽くして天命を待つ」というと大袈裟かもしれませんが、どこまで準備すればいいか、のラインを決めておきましょう。
そして、必要な準備が整ったら、結果に対して覚悟を決めましょう。
「結果にコミットする」のです。
たった一つの想定した未来だけが「成功」とは限りません。多様な未来が待っています。
それに対して「その時に自分で(または誰かと協力して)なんとかする」と思える自信をつけることで対処しましょう。
③厳しい言葉を別の表現に変える
厳しく自分をパトロールする中で、様々な特徴を悪い言葉で評価していると思います。
- 自分は人見知りだ
- 自分の意見をハッキリ言えない
- 人よりも仕事が遅い、要領が悪い
など。
これらを別の言葉で言い換えてみましょう。
「自分は人見知りだ」
- よく知らない人がいる場面で尻込みしてしまう
- どんな人か分からないうちは緊張する
- 親しくない人、よく知らない人に対しては礼儀を大事にする
- 緊張してあまり話さない分、失言する確率も低い
など。
つまり人見知りする、ということは、相手を知る前に偏見を持つことなく慎重に対応しているのです。
よく知らない場面や相手に緊張するのは生物として当たり前の反応だ、と思えれば、欠点ではなくなります。
悪いところ・直さなければならないものではない、と分かれば、冷静に対処することも出来るようになるでしょう。
4.自分に厳しく、は匙加減
自分に厳しくすることへのデメリットばかりお話してきましたが、悪いことばかりではありません。
親や大人たちが子どもに「自分に厳しく」と教え続けるのは何故でしょう。
それは、自分に厳しくすることが、本来はとても難しいことだからです。
好きな時に好きなことをするほうが、人は楽です。楽なほうを選びたくなるのは当然です。
でもいつでもどこでも楽な道ばかりを選ぶようになれば、努力も反省もしなくなり、周囲から人が離れていってしまい、自分を成長させることも出来なくなってしまいます。
それを防いでくれるのが「自分への厳しさ」です。
自分に優しくするのも厳しくするのも、どちらも「匙加減」が大事です。
どちらの要素も取り入れながら、たまにはアクセル踏んで、時に止まったり緩めたりしながら毎日を送っていきたいですね。