安心して休養するための3要素
うつ病になるとまず言われることは「ゆっくり休養してください」ということ。医師も、会社も、家族も、友人もそう言ってくれるでしょう。
しかし、言われたからといってすぐに「安心して」休める人などいるでしょうか。
会社で休職の手続きが済んでも、出社しなくて良くなっても、心では会社と同じリズムを刻んでいませんか?もうみんな仕事始めてるな、あのプロジェクトはそろそろ納期だったはずだ、今週の会議は何を話し合ったのだろう、などなど。
これで安心して休養することなど、果たして可能でしょうか。
そもそも言われてすぐ実行できるなら、うつ病にまで発展していないでしょう。
状況が許さず、性格的にも追い詰められてうつ病になってしまい、休養しなくてはいけなくなった時。
必要なものは「納得」「見通し」「生活基盤」です。
1.休養することに「納得」する
ずっと走り続けてきた人が「止まれ、走るな」と言われても止まれません。止まること、走らないことへの罪悪感や喪失感を感じたり、そもそも止まり方が分からなかったりします。
「休養する」とは、どんなことでしょうか。
会社に行かないことですか? 横になっていることですか? 家から出ないことでしょうか?
「休」という字には、心身をやすめる、一時停止する、そしてよろこばしい、という意味があります。
「養」という字には、育てる、栄養を取る、体力をつける、という意味があります。
つまり、一時停止して心身を休め、栄養をつけ体力を取り戻し喜ばしい状態にする、ということですね。
決してサボること、怠けること、逃げること、負けることではないのです。
今は休養を必要としている状態にいる、ということを、まずは自分自身が納得する必要があります。
2.将来への「見通し」を立てる
まずは休養が必要だと納得するためには、「休んだ先にどうなるか」が見通せていないと安心出来ません。
見通しは、「情報収集」と「相談」で構築しましょう。
まず「情報収集」は、
- 自分の病気(うつ病、適応障害、自律神経失調症など)はどんな病気なのか
- 主治医はどういう見立てを立てているか
- それに対してどんな治療法を施してくれているのか
- 今後どのような経過を辿って回復していくのか
- 一般的にどれくらいの期間がかかるのか
- 回復後はどんな状態になるのか
- どんなことに気を付けて生活していけばいいのか
- 経験者の体験談
などでしょう。
例えば半年後に元の職場に復帰するとして、それまでにどんな状態に自分を持っていけばいいのか、復帰した自分に対して職場はどんな準備をしてくれているのか、自分はどんな段階を踏んで職場に復帰していくのか。
また、関係各所との相談も必要です。具体的には主治医、家族、職場です。
- 自分が休養している間、それぞれがどんなことをしてくれるのか
- 逆に自分には何が期待されているのか
- それに応えるためには何が不足しているのか
- 不足を補うためにはどんな方法があるのか
など。
青写真が見えていると、休養への不安や不信感が低減されます。
3.休養生活を支える「生活基盤」を整える
もっとはっきり言うと「生活資金」です。
休養していても家賃、食費、光熱費、社会保険料、通院費や薬代、その他もろもろお金がかかります。
休職中に傷病手当金等が貰えるよう手配出来ていればいいですが、個人事業主等で国民健康保険に加入していれば傷病手当制度はありません。
貯蓄と自分以外の同居家族の収入、実家等からの援助などを含め、<2>の見通しと照らし合わせて、必要な資金が得られるか、削れる部分は無いかを検討する必要があります。
ここは家族との相談になるでしょう。また、公的サービスを利用できるかどうかは、家族だけでは判断は難しいです。市役所等の相談窓口の利用、ソーシャルワーカーへの相談、ファイナンシャルプランナーのようなお金のプロに相談することも方法の一つです。
とりあえず〇カ月休んでも生活は大丈夫、自分にはやることがあるから、それを続けながら〇カ月後に復帰するために今はしっかり休もう、と考えられると、最初に色んな人から言われた「安心して休養しましょう」が実行できるようになります。
それでもやはり「〇カ月経っても今と変わらなかったら、復帰出来なかったら」という不安がなくなるわけではありません。
しかし、うつ病療養に限らず、人生はトライアンドエラーです。最初に立てた計画と実際の状況がズレていたら、何か無理があったり、予想外の事態が起きている可能性があります。そこを探して計画を立て直せばいいのです。
最初の計画=絶対、ではないのですから、あまりガチガチに考えすぎないことがポイントですね。