自分に優しくする力が、自分軸をつくる -セルフコンパッションのススメ-

私たちはつい「もっと頑張らなきゃ」「ちゃんとしなきゃ」と、自分を追い立てながら生きています。
でもその裏で、自分を責めすぎて心が疲れてしまうことも多いのではないでしょうか。
そんなときにこそ必要なのが「セルフコンパッション(自分に優しくする力)」です。
自分を責めるのではなく、慈しむように向き合うことで、心が穏やかさを取り戻し、やがて「本当の自分軸」が立ち上がってきます。
今回は、セルフコンパッションと自分軸の関係、そして今日から始められる実践法をお伝えします。
目次
- セルフコンパッションって、なに?
- 自分に優しくするとどうなる?
- 自分に優しくする力を育てるために今日からできること
- 自分に優しくする×自分軸でどんな未来になる?
- まとめ
- ≪無料特典≫自分軸の入り口を体験しませんか?
セルフコンパッションって、なに?
私もブログで何度もお話しているセルフコンパッションですが、少しずつ「知ってます」「聞いたことあります」とおっしゃる方が増えてきて嬉しい限りです。
セルフコンパッションは技法や療法というより、心の持ち方、自分との向き合い方だと私は考えています。
聞き慣れない「コンパッション」という言葉の意味は「慈悲」です。
慈悲、という言葉は日本人は慣れ親しんでいますが、では意味は?って聞かれると難しいかもしれません。言い換えると「自分に優しくする力」です。
「慈悲」とは、悲しい思いをしている人にそっと寄り添うことです。それを「セルフ」自分に対して行うことが「セルフコンパッション」です。
何か失敗したり、トラブルが起きたり、悩みが生まれた時、無意識に自動的に「自分へのダメ出し」に終始していないでしょうか。
「何やってんの、ダメじゃん、私」
「どうしてこんなつまらないミスを? 私のレベルが低すぎる」
「他の人ならこんなことで落ち込まない」
「こんなことで苦しむのは私だけだ。今すぐポジティブにならなきゃ」
のように、寄り添うとは全く反対のことをやっています。
でもこれ、何かの役に立つでしょうか。
何の役にも立たず、ただひたすら辛さが倍増していくだけなのはご経験があるのではないでしょうか。
どうしてミスしたとき悩んだ時に自己否定しかしないのでしょう。
それは他に自分との向き合う方法を知らないからです。
もっと言うと子どもの頃からミスをしたときに怒られる体験しかしてこなかったから、ではないでしょうか。
セルフコンパッションによって、自分が辛いときに自分を責めず「それでも頑張ったんだから、自分にその時出来ることはやったんだから、まずはお疲れ様」と声をかけて、問題解決は後回し、自分の心身のコンディションが安定することを優先させる方法を身に着けることで、必要以上に自分を責めて苦しめて傷ついてストレスを高まらせる毎日を変えることができるようになるのです。

自分に優しくするとどうなる?
辛いときに自分で自分に寄り添い、不必要な自己否定に逃げないで本来の自分を取り戻すのがセルフコンパッションです。
そしてセルフコンパッションは技法というより自分に優しくするという「心の持ち方」です。
セルフコンパッションは、まずは「マインドフルネス」をベースにします。
過ぎた過去、まだ来てない未来は横へ置いておいて、今この瞬間の自分自身と向き合います。
辛いときに自分と向き合うって、ネガティブな感情と向き合うことですから簡単ではありません。何もない時にマインドフルになるよりずっと大変です。
辛い感情とマインドフルネス的に向き合うために、次の2点を意識します。
➊自分自身への優しさ
➋共通の人間性
自分自身への優しさとは先ほどお話した『自分に対して否定的な言葉をかけない』ところから始まります。
最初から辛い自分に寄り添おうとすると抵抗を感じる方が多いです。そもそも「寄り添う」って何?ってなりますから。
自分が自分にどんな言葉をかけているのか、を、注意深く観察します。その上で「自分いじめ」している言葉に気付いたら止めます。
そして、ネガティブな状態で自分をひたすら責めてしまうのは『こんなことをやらかすのは自分だけだ』という、悪い意味で自分を特別視する姿勢です。自分はとりわけ出来損ないで、他の人はみんな優秀で素晴らしく見えてしまうんですね。
ただ、それは事実ではありませんよね。
自分が今やってしまったこと、または感じている感情は、誰もがほぼ必ず経験しているものです。今ここで感じているのは自分だけだとしても、過去未来のどこかで、または世界のどこかで必ず誰かが経験しています。
「誰もが体験する気持ちを、今自分が感じているだけ」なのです。
自分一人だけが、というのは、ショックで視野が極端に狭くなってしまっているせいで起きた思い込みに過ぎないのです。
自分に優しくする向き合い方をすることで、心が寄り道しなくなります。
自分を追い詰め過ぎた結果辛くなって、その辛さをケアしたり辛さを回避することに全力を注ぐのではなく、少しでも早く本来の自分を取り戻し、自分らしく「この状況を好転させるにはどうしたらいいか」という未来志向に切り替えることができるようになるのです。

自分に優しくする力を育てるために今日からできること
自分らしく、本来の自分のポテンシャルを出来るだけ発揮できるようになるために有効なのがセルフコンパッションです。
常にポジティブ、とか、完璧主義、などよりも遥かに現実的で実践的な姿勢です。
では自分に優しくする力を自分の中に育てるために、どんなことをすればいいでしょうか。
今回は3つご紹介いたします。
①自分を否定する習慣に気づいて、止める
私たちは日常の中で、無意識のうちに自分を責めています。
「また失敗した」「なんで私ってこうなの」「あの人はできてるのに」…
こうした言葉は、まるで心の中の自動再生ボタンのように流れ続けています。
まず大切なのは、「責めないようにする」ことではなく、「責めていることに気づく」こと。
「あ、いま私、自分を責めてるな」
そう気づいた瞬間、あなたはすでにマインドフルネスの状態に入っています。
思考の渦から一歩引いて、自分を客観的に見つめられている証拠です。
そして、次のように優しいひと言を自分にかけてみてください。
「今の私、よく頑張ってる」
「完璧じゃなくていい、これも人間らしさ」
「大丈夫、今は少し休もう」
自分を責める代わりに、自分を支える言葉を選ぶ。ただこれが難しい時は、自己否定の言葉を止めるだけで全然OKです。それが、自分に優しくするための第一歩です。

②自分だけの経験・感情ではないことを思い出す
つらいときや失敗したとき、私たちは「私だけがダメなんだ」と感じがちです。
でも実際は、苦しみも不安も、誰もが人生のどこかで感じているもの。
セルフコンパッションの2つ目の要素、「共通の人間性」はこの「みんな同じ人間なんだ」という感覚を思い出すことです。
たとえば、
「きっと誰かも、同じように悩んでいる」
「この痛みを知っている人は、私だけじゃない」
そう思えた瞬間、孤独感も和らぐのと同時に、「自分だけがやらかすんだ」という自己否定感も収まります。
③ベースとなるマインドフルネススキルを高める
セルフコンパッションの土台には、マインドフルネス(今この瞬間に気づく力)があります。
なぜなら、自分を責めているときやつらいとき、まず「いま、私は苦しんでいる」と気づけなければ、優しさを向けることもできないからです。
マインドフルネスとは、今ここに意識を戻す練習。
決して難しい瞑想や特別な修行ではなく、日常の中で少しずつ育てていけるスキルです。

≪おすすめブログ≫マインドフルネスと脱ネガティブ思考の関係とは?
④今日からできる、マインドフルネストレーニング4選
ここでは、今日からできる4つの方法をご紹介します。
【呼吸法ー心を「今」に戻すー】
私たちはストレスを感じると、呼吸が浅くなり、思考も過去や未来へと飛んでいきます。
そんなときこそ、呼吸を心のアンカー(錨)にするイメージで。
- ゆっくり息を吸いながら「吸ってる」
- ゆっくり吐きながら「吐いてる」
と心の中で言葉にしながら、息の出入りをただ感じます。
思考が逸れても大丈夫。「戻るたびに筋肉が育つ」と思って、呼吸に戻るたびにマインドフルネスの力が少しずつ強くなります。
【STOPスキルー感情の波にのまれそうなとき】
イライラしたり落ち込んだりすると、つい自動的に反応してしまいます。
そんなときに役立つのが「STOPスキル」。5秒でできる、小さなマインドフルネスです。
S–Stop(立ち止まる)
T–Takeabreath(呼吸をひとつ)
O–Observe(いまの自分を観察する)
P–Proceed(落ち着いて次の行動を選ぶ)
たとえば「またミスした!」と自己否定が始まりそうな瞬間に、この4ステップを心の中で唱えるだけで、反応のスイッチを一瞬オフにできます。
感情の渦に巻き込まれる代わりに、観察する自分が戻ってくるのを感じるはずです。
【感情のラベリングー感情に「名前」をつける】
自分の感情を「言葉にする」だけで、その感情に飲み込まれにくくなります。
「私は今、焦りを感じている」
「不安がある」
「悲しい気持ちがある」
感情をラベルづけすることで、「私は焦りそのもの」ではなく「焦りを感じている私」と距離を取ることができます。
たったそれだけで、感情が穏やかになり、自分への優しさを向ける余裕が生まれます。
【フォーカシングー体の感覚を手がかりに本当の気持ちを聴く】
フォーカシングとは、体の中に生まれる感じ(フェルトセンス)に耳を傾ける方法です。
言葉にできないモヤモヤも、体はいつも何かを感じています。
胸が重い、喉が詰まる、お腹がキュッとする…
そんな体のサインに「これはどんな気持ちだろう?」と優しく問いかけてみましょう。
感情を頭で分析するのではなく、体の感覚を通して自分の内側と対話するのがポイントです。
これにより、無意識に押し込めていた気持ちを少しずつ理解し、受け入れられるようになります。

自分に優しくする×自分軸でどんな未来になる?
自分に優しくする力を育て、マインドフルに自分を見つめていくと、次第に「本当の自分軸」が立ち上がってきます。
それは、他人に左右されない強さというより、自分のすべてを受け入れながら、穏やかに進んでいけるしなやかな軸です。
では、自分に優しくする力と自分軸が結びつくと、私たちの内側と人生にどんな変化が起きるのでしょうか。
①ネガティブな面を否定せず、自分軸に組み込める
自分軸というと「ブレない」「ポジティブ」なイメージを持つかもしれません。
でも実際の自分軸とは、「完璧な自分」を貫くことではなく、どんな自分も含めて「これが私だ」と認めていくプロセスです。
セルフコンパッションを育てると、「弱い自分」「迷う自分」「怖がる自分」にも優しくまなざしを向けられるようになります。
その結果、
■「私は落ち込むときもあるけど、それでも大切な価値観を選べる」
■「不安を感じながらも、一歩を踏み出せる」
というように、「感情を否定しない自分軸」が形になっていきます。
ネガティブを排除するのではなく、受け入れて統合するようになるので、本当の安定が生まれます。
②自分軸に沿った選択や行動の結果にも、慈悲的でいられる
自分軸を持つと、「自分で決めたから、絶対に成功させなきゃ」とプレッシャーを感じることもあります。
でも、セルフコンパッションを併せ持つことで、結果に対しても優しくいられるようになります。
■「うまくいかなかったけど、挑戦した自分は立派」
■「この経験が、きっと次に生きる」
そんなふうに、自分軸の行動を「評価」ではなく「慈しみ」で見られるようになるのです。
これは、自分を甘やかすこととは違います。
自分に正直に生きることの痛みや勇気を、ちゃんと理解してあげることです。
この姿勢があるからこそ、失敗を恐れず、次の一歩を踏み出せる柔らかい強さが育ちます。
③独りよがりにならない、自分軸の使い方ができる
「自分軸で生きる」と聞くと、「わがまま」「自分勝手」と誤解されることもあります。
しかし、「自分に優しくする力」と結びついた自分軸は違います。
自分に優しくなるほど、他人にも自然と優しくなれるからです。
自分の痛みに気づき、それを大切に扱えるからこそ、他者の痛みにも共感できるのです。
つまり、自分軸と他者理解が両立するのです。
■「私はこう感じている」
■「あなたはそう感じている」
どちらの気持ちも尊重しながら、境界線を保ちつつ誠実に関わることができる。
それが、独りよがりではない「成熟した自分軸」の姿です。
≪おすすめ書籍≫『自分軸』をつくる本: ─人に振り回されず、自分を大切に生きるために(Kindle版)

まとめ
セルフコンパッションは、単なる「自分を甘やかす方法」ではありません。「自分に優しくする力」です。
それは、自分をありのままに理解し、苦しみを抱えた自分にも優しく手を差し伸べる「心の姿勢」です。
この優しさが、自分軸を支える大きな土台になります。
なぜなら、自分を否定したままでは本当の価値観を見つけられず、他人の評価に振り回されてしまうからです。
反対に、セルフコンパッションによって自分を受け入れられるようになると、失敗も不安も「自分らしさの一部」として統合できるようになります。
結果に対しても慈悲的でいられ、他者との違いも尊重できる。そんな「しなやかな自分軸」が、あなたの生き方を穏やかに、そして確実に変えていきます。
自分を責める習慣から「自分に優しくする習慣」へ──
今日からできる小さなセルフコンパッションを、あなたの日常に取り入れてみませんか。