過去の経験がつくる“自分軸”―今のあなたに影響する心のしくみ

過去の経験がつくる“自分軸”―今のあなたに影響する心のしくみ

過去の経験は、私たちの価値観や行動を形づくる大きな要素です。
しかし同時に、その経験に縛られて「本当の自分らしさ」を見失ってしまうこともあります。
気づかぬうちに他人の期待や過去の失敗にとらわれ、自分軸を曇らせてしまうのです。

この記事では、過去の経験を整理し、自分軸を取り戻すための具体的な視点と方法をご紹介します。

目次

  1. 自分軸とは何か?
  2. 過去の経験が自分軸に与える影響
  3. 過去に縛られやすいパターン
  4. 自分軸を取り戻すためにできること
  5. まとめ―過去の経験を「今の力」に変える
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自分軸とは何か?

①人に振り回されない“心の軸”

まず「自分軸」ってなに?って感じですよね。
私だけでなく、色んなところでテーマになる自分軸ですが、私の考える自分軸とは

です。

自分らしさ、自分の望む自己像、とも言えます。ポリシーとか信条とも言えます。
ただ、どこかの偉人の言葉を持ってくるのも違う。それはその人の自分軸です。
そして表面的な「らしさ」でもありません。


たまに質問されるのは『自分軸に沿って生きるのって、我儘を通すってことですか?』と聞かれるのですが、これも違います。

その瞬間ごとに湧き上がる感情や欲求をそのままゴリ押しすることを『自分軸で生きる』とは、私は思いません。
例えば『ケーキが食べたい』と思ったとします。しかし医師から過体重を指摘されている時に、その欲求を押し通すことは本当の意味で『自分の人生を良い方向へ向かわせる』判断でしょうか。違いますよね。

広く深く長期的な視点を失わず、その上で自分の感情・意思・思考を受け入れて真に自分にとって良い選択肢は何か、を選ぶための「心の軸」
それが私が考える「自分軸」です。

この自分軸を自覚出来ていると、他人の意見や世間の流行に必要以上に振り回されることが無くなります。そして自分軸があるからこそ、必要以上に反発や抵抗を覚えることもありません。

自分らしさを見失わず、かつ、状況に対して柔軟に適応できるしなやかさも持ち合わせることが出来るのです。

②他人軸と自分軸の違い

自分軸があるなら「他人軸」もあります。
他人軸とは、自分以外の誰かの『自分軸」です。
他人軸で生きる、とは、他人の自分軸に合わせて自分の人生の判断を行うことです。

なんじゃそりゃ、と思われたかもしれません。しかし、意外と「他人軸での判断」をしてしまっているんですよね。

特に「親」「パートナー」「上司」のような、自分の利害に密接に関わってくる他者の「他人軸」に沿った判断をしてしまいがちです。

それは、自分の判断から生まれる結果に対して、自分が対処できる自信が持てないときです。

『○○がいいと思ったけど、そのせいでもし失敗して、責任を問われたらどうしたらいいか分からない……』

と思ったとき、同じ状況を共有している親・パートナー・上司の判断に自分の選択をゆだねてしまいます。

本当に困っている時ならそれも一つの方法です。
ただ、その方法を毎回使うようになってしまうと、自分の人生のはずが、あらゆる環境・要素・状況が「他人が良いと思うもの」まみれになってしまいます。
そしてふと気づくのです。

『これが本当に私が生きたかった人生だろうか』

他人軸は一見安全でコストパフォーマンスが良いように見えて、自分の人生を差し出してしまう、非常に恐ろしい生き方なのです。

過去の経験が自分軸に与える影響

①幼少期の体験と「信じ込み」

過去の経験、特に幼少期の体験による心への影響は甚大です。
そして当時の幼かった自分に出来ることなんてほとんどありません。
子どもは無力です。知識も経験もお金も力もありません。だから周りにいる大人の言っていることが正しいのかどうかも分からないし、適切な対応をされていないと気づくことすら出来ません。そういうものだ、と考えてしまうのです。

「辛かったら逃げればいいのに」
という言葉をよく聞きますが、子どもには無理です。逃げる、という選択肢すら思い浮かばないのです。

そしてその時に出来上がった信念は、大人になっても続きます。
大人になったなら、親や先生が言っていたことが間違っていたのだ、と分かったとしても、不適切な大人との関係の中で出来上がった「信じ込み」を持ちながら大人になったので、大人になってからの「信念」も、幼少期の歪みをカバーしながらのぎこちないものにならざるを得ません。

「子どもの頃のことなんかにこだわってちゃダメだよ」
なんてことはないのです。自分にとっては今の「現在進行形」なのです。
こうした無意識の信じ込みが、自分軸を揺らす大きな要因となります。

②失敗や成功体験から生まれる価値観

過去の経験とは幼少期の大人との関わりだけではありません。
自分個人の失敗・成功体験も含まれます。

自分が何に対してどう判断し何を選んでどういう行動をとったのか。
この流れの中で大事なのは『自分が』やったことだ、という自覚がどこまであるか、です。

自分が決めてやったことだ、と思えるから、失敗したときに学びが生まれます。
自分が決めてやったことだ、と思えるから、成功したとき実績になり、続ければ自信が育ちます。

この『自分がやったことだと思える』かどうかが分かれ目です。つまり、主体性を持って判断・行動出来ているか、です。
『○○さんが言うからやった』と捉えるのは、主体性の不在です。

主体性とは、自分の意志と判断に基づき、自ら考えて行動し、その結果に責任を持つ姿勢や能力のことです。
主体性と共に経験したことは、自分自身の価値観の素になりえます。
しかし主体性が無いままどれだけ行動しても、心のどこかで『○○のお蔭/○○のせい』という思いがちらついて、自分自身の実績にも学びにもならず、価値観として育てることも出来ないのです。

主体性をもって経験を積むことが、自分軸を太くしていくのです。

③人間関係の経験が形づくる“自分らしさ”

そして3つ目が人間関係です。つまり他者との関わりの中で気づく「自分らしさ」です。

人間関係って難しいですよね。アドラーも『人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである』と言っています。

なぜそんなに人間関係は私たちを悩ませるのでしょう。
心理学的な問題、社会性としてのテーマなど色んな見方をすることが出来ます。

それは突き詰めれば、私たちがそれだけ他者との繋がりを求めているから、と言えるのではないでしょうか。

人間関係は複雑で、面倒で、繊細で、こじれると「もうやだ!」って思って放り出したくなりますよね。『人間関係リセット症候群』という現象もその一つです。
リセットした人は、その後どうするでしょう。もう誰とも関わらないでしょうか。きっと違いますよね。環境を変えてまた新しく人間関係を構築しようとします。人とのつながりを、どんなに面倒だと思ってもゼロには出来ないからです。
引きこもっている人すら、それは同じだと思います。リアルな家族・友人・職場関係から距離を置いたとしても、違う形で誰かと繋がっているのではないでしょうか。

そこまでして繋がりを求める理由は、人と関わることで生まれる「自分らしさ」への気づきには大きな価値があることを知っているから、ではないでしょうか。
他者との違いは自分の「個性」です。
他者との関わりによって悩んだり模索することで、自分を知って「もっとどうなっていきたいか」という目標や方向性が生まれて、それが自分の成長につながることを、無意識に知っているからなのです。

人との関わりの中でこそ、自分軸に基づく“自分らしさ”が磨かれていきます。

過去に縛られやすいパターン

①「〜すべき」という思い込み

過去は、どんな場面で私たちの「今」を縛っているでしょうか。それに気づくことは自分軸を活用して自分らしく生きるためにはとても重要なポイントになります。

まず1つ目は「~すべき」という思い込み、いわゆる「べき思考」です。

~すべき、という考え方そのものが悪いということではないと、私は考えます。
ただ、使い方がとても難しいです。

『困っている人は助けるべき』とか『健康に配慮した生活をすべき』という考え方そのものを否定する人はおそらくいないでしょう。
しかしこれが「常に・いつでも・絶対・何があっても・どんなことよりも優先して」すべきこと、と考えてしまうと、自分にも周囲にもデメリットの方が大きくなってしまいます。

例えば「困っている人は助けるべき」ではありますが、自分自身も困っているのにそこへ目を向けず海の向こうの戦災孤児を助けることは、本当に今必要なことでしょうか。少し違いますよね。このケースで考えると優先順位を見直す必要があります。

なぜ優先順位に柔軟性がないのか。それは過去の経験が自分に「~すべき」を強制させてしまっているからなのです。

②過去の失敗から抜け出せない心理

二つ目は「過去の失敗による縛り」です。

人には学習能力があります。行動心理学では、人は「試行錯誤」を通じて学ぶ、と考えます。
試行錯誤とは、全てが上手くスムーズに進むことではないですよね。悩んだり間違えたり後戻りしたり対策を練り直したり、を繰り返す過程です。
学習の過程において、上手くいかなかった結果(=失敗)から、私たちは「この方法では望む結果や成果は得られない」と学びます。それによって「ではどうすればいいか」と考える契機になります。

もう一つ、脳は失敗を強く記憶する特徴があります。
脳は、自分の生存や安全を最優先する機能を持っています。その側面で捉えると「失敗」から「危険・痛み・苦しさ」を抽出して記憶します。そうすることが生存や安全にとって有益だからです。危険を回避するためです。

ただそれが強くなりすぎると、必要以上に回避したり、「上手くいかなかった経験」を自分自身の価値と強く結び付け過ぎて「自分は何をやっても駄目なんだ」飛躍した考え方をしてしまうようになることがあります。
こうなると、成功したことや試行錯誤の過程で得た学びが過小評価されてしまい、自分に自信が持てなくなり、自己否定傾向が強くなってしまいます。

『何をやっても自分はダメなのだ』という考え方は極論で、事実ではないと言えます。これが頭をよぎったら「過去にしばられているぞ」と気づくチャンスと言えるでしょう。

③他人の期待に応え続けるクセ

三つ目は「他人の期待への過度な対応」です。

なぜ他人の期待に応えることを必要以上に重要視してしまうのでしょうか。
まずは「子どもの頃から『いい子』であることを強く求められた」から、かもしれません。
この場合の良い子とは、大人の目から見て「問題のない子」だったり、「大人の基準に合わせられる子」という側面が強いです。

子どもは知識も経験もなく無力だ、と書きましたが、それでも自我はしっかり持っています。自分がどうしたいか、を自覚してそれに沿って行動することが、成長するほど増えていきます。
ただしそこは経験不足なので失敗もするし周りへネガティブな影響を与えることもあります。それを補正するのが大人の役目なのですが、そこで「絶対に大人の言う通りにしないといけない、そうでなければ自分には価値がない、愛されない」と学んでしまうことがあります。

そうすると、大人になっても「他人の期待に応えなければ自分には価値がない」と思い込んでしまいます。過去の経験が今に影響しているのです。

そして「他人の期待に応える」ことで褒められたり好かれたりする経験は、そのまま「ご褒美」になります。人はご褒美をもらえるとその行動を「良いもの」と捉えて繰り返す傾向があります。
「他人の期待に応えることだけが、自分にとって価値があることだ」と考えてしまうようになります。

この時問題になるのは「自分が本当はどうしたいのか」が完全に無視されていることです。
無視して他者の期待に応えたとしても、自分の欲求や考え、感情が消えてなくなるわけではありません。むしろ満たされないまま放置されることで欲求不満が募っていきます。

「どうしてこんなに頑張っているのに私は不満が消えないのだろう」と感じたら、それは他人への期待に応えることばかり重視しているのでは、と、自分のパターンを見直す機会と言えるでしょう。

【図】過去に縛られやすいパターン3つ

自分軸を取り戻すためにできること

①過去を「事実」と「解釈」に分けてみる

様々な理由から過去の出来事が現在の自分と自分軸を縛ってしまっている理由をお伝えしました。
では、どうすればその縛りから自由になって、自分軸を取り戻すことが出来るか、が大事ですよね。

そのために出来ることの1つ目が「過去の事実」と、それに対する「解釈」を分けて考える、という方法です。

出来事は1つです。そしてその事実をどう解釈するか、は、幾通りもあります。
状況、立場などが関わってくるでしょう。その時の自分の精神状態や健康状態も関係します。

例えば「上司に『もっと早く仕事を完了させなさい』という指摘を受けた」とします。
その時自分は「上司からダメな部下だと思われているんだ」と解釈しました。

この解釈は、これしかないと限定して考えることで縛られてしまいます。
自分はダメな部下だ、というレッテルを貼ったり、「自分はダメじゃないのにダメだと決めつけた上司はダメな奴だ」と逆に相手に対してレッテルを貼ってしまうことにもなりかねません。

そうするとどうなるでしょう。
自分はダメな部下で、かつ、上司も駄目な人で、信頼関係も無くなります。そうなるとこれから真摯に仕事に取り組むことが出来なくなります。
それは果たして「自分らしく、自分の人生を良い方向へ向かわせる」ことに役立つ判断でしょうか。恐らく違います。

事実に対して解釈は一つではありません。

  • 上司が「早く」と言ったのは具体的にどれくらいを指すのか
  • 自分がそのタイミングに間に合わなかった理由は何か
  • 上司はなぜ早く仕上げろと言っているのか
  • その理由に、自分はどうやって納得して向き合うのか

を吟味した上でもう一度上司の言葉を思い出しましょう。
「自分はダメな部下だと思われている」という解釈は、おそらく変化しているはずです。

②価値観を洗い出してみる

今まで「他人軸」、つまり親・先生・上司・周囲の判断に従って行動してきた方は、自分が「何を大切にしたいと思っているのか」「どんな自分でありたいか」を今一度振り返ってみてください。

大切にしたいもの、とは、大げさなものではありません。

  • 侮辱されたくない
  • 皆にも大事にしてほしい
  • 良い評価をされると嬉しいもの
  • 好きなこと
  • 得意なこと
  • 欲しいと思っているもの

などです。「安心感」「挑戦」「家族」「誠実さ」のような抽象的なものでもOKです。
そしてそれを選ぶときに「○○さんもそう言っていた」とか「きっとこれを選んだら世間的に良い評価をもらえる」のような視点は一切不要です。

すぐに思いつかなければ、形あるものや思い出などからヒントをもらいましょう。
例えば「死んだおばあちゃんの形見」が自分の宝物だったとします。
それを大切だと感じるのはどうしてでしょうか。

おばあちゃんが大好きだったから

おばあちゃんは生前子どもの頃かぎっ子だった私を可愛がってくれた

お蔭で自分は「一人ではない、大事にしてくれる人がいる」と思えるようになった

今も「家族は大切にしよう」と思っている

としたら、「家族」とか「身近な人との関係性」を挙げることが出来るでしょう。

③小さな選択から“自分の意思”を育てる

3つ目は「小さな選択の重要性」です。

他人軸から離れて自分の意思で選択をする、というのは、慣れるまでは迷いと不安の連続です。大きな選択、例えば転職とか結婚とか転居のようなテーマにいきなり取り組むのはストレスが大きいです。とはいえ大きなテーマこそ自分の人生そのままですから、自分軸で選択・行動出来るようになることが『自分らしく、自分の人生を良い方向へ向かわせる』ためには必須です。

普段の生活の中の小さな選択から、『自分軸に沿って選ぶ』練習をすることが必要です。

例えば

  • 今日はどんな服装で会社へ行くか
  • ランチに何を食べるか
  • 何時にベッドに入るか

といったごく日常的な判断です。
出来れば「その結果どうなるか、結果も含めて自分が対応出来るか」も考えて選ぶことが出来ると尚良しです。

例えば朝ごはんを食べ損ねたので、お昼前にはとてもお腹が空いてしまった、とします。出来たらラーメン大盛食べたい。けれど健康診断でメタボ一歩手前と言われていることも気になる。

とした場合『自分らしく、自分の人生を良い方向へ向かわせる』ためにはどうしたらいいでしょうか。

この繰り返しが、自分軸に沿って生きる練習として非常に効果的です。

④ワーク:過去の経験から自分軸のヒントを抽出する

自分軸を育てるためには、「自分は何を大切にしてきたのか」「どんな瞬間に心が動いたのか」を振り返ることがとても役立ちます。
過去の経験の中には、すでにあなたの価値観や大切にしたい方向性が表れています。

ステップ1:出来事を3つ書き出す
これまでの人生で「強く印象に残っている出来事」3つ挙げてみましょう。
うまくいった経験でも、失敗や悔しさの経験でも構いません。

ステップ2:そのときの感情を思い出す
出来事の横に、「そのとき自分はどんな気持ちだったか」を書いてみましょう。
嬉しい、誇らしい、悔しい、悲しい…など、率直な言葉で大丈夫です。

ステップ3:共通するテーマを探す
3つの出来事と感情を眺めながら、「自分は何を大切にしていたのか」「どんなことを失いたくなかったのか」を考えてみます。
ここに、あなたの価値観や自分軸のヒントが隠れています。

【たとえば】
■部活で最後までやり抜けて誇らしかった→「努力」「挑戦」が大事
■約束を守れず後悔した→「信頼」「誠実さ」が大事
■家族に応援されて嬉しかった→「つながり」「安心感」が大事

こうした気づきを積み重ねていくと、自分が本当に大切にしたい軸が少しずつ見えてきます。
このワークは「過去に縛られる」のではなく、「過去から学びを取り出す」ためのものです。
過去の経験を“心の宝物”として整理し直すことで、これからの選択や行動を自分の意思で決めやすくなります。

【図】ワーク:過去の経験から自分軸のヒントを抽出する

まとめ―過去の経験を「今の力」に変える

自分軸を持つことは、決してわがままに生きることではありません。
それは「広い視点を持ちながら、自分にとって本当に良い選択を行うための心のコンパス」です。

私たちは過去の経験や幼少期の信じ込み、失敗体験、他人の期待などによって、気づかぬうちに自分軸を見失うことがあります。
しかし「過去を事実と解釈に分ける」「価値観を洗い出す」「小さな選択から主体性を育てる」といった取り組みを重ねることで、自分の軸を少しずつ取り戻すことができます。


大切なのは、完璧を目指すのではなく、日常の中で「これは私の意思で選んだ」と言える体験を増やすこと。
積み重ねた小さな選択が、自分らしい人生へとつながっていきます。今日から一歩、あなたの心の軸を育ててみませんか。

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「私はどうすれば過去を整理して自分軸を立てることが出来るのかな」
そう思ったら、私と1対1と話してみませんか?
堅苦しく考える必要はありません。思っていること・普段言葉にする機会が無い思いを自由にお話しください。
その中から自分軸の種が見つかります。

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