人に頼らないで頑張ってきた人が苦しくなる理由|実は「頼れない構造」かもしれません

人に頼らない人は、「頼ったほうがいい」と頭では分かっているのに、なぜかそれが出来ない。
本当は少ししんどいのに、「まだ大丈夫」と自分に言い聞かせて頑張り続けてしまう。
もしあなたがそんな状態にいるなら、頑固なわけでも独りよがりなわけでもありません。
これまでの人生の中で「人に頼らない」ことで乗り越えてきた経験が、あなたの中に強い法則として根付いているからです。
この記事では、その構造を一緒に整理しながら、これから先の選択肢について考えていきます。
目次
- 1.人に頼らないでやって来た、その理由とは
- 2.人に頼らないで頑張るときの構図とは
- 3.どうして「人に頼らない」自分が苦しくなるのか
- 4.人に頼るって、どういうこと?
- 5.人に頼らないことでやって来たあなたがこれから目指すもの
- 6.まとめ
- ≪一人で背負うのが、もう無理な方へ≫
1.人に頼らないでやって来た、その理由とは
困っているのに、疲れているのに、ひとりじゃいっぱいいっぱいなのに、どうして「人に頼らない」選択を続けてきたのでしょうか。
もしかしたら心のどこかで「本当は誰かに助けてほしい」そう思ったこともあったかもしれません。
- 頼る相手がいない、思い浮かばなかった
- 人に頼るのはダメなこと(迷惑、自分の力不足)だから
- 頼ろうとしたこともあったけど、失敗した
- 人に頼るより自分がやったほうが確実で早いから
色んな理由があると思います。そしてもしかしたら全部、かもしれません。
こうした理由に共通するのは「これまでの経験、実績」ではないでしょうか。
頼る相手がいない・思い浮かばないのは、自分が「この問題について頼るとしたらこういう人が妥当だろう」という想定をし、それに合致する相手がいなかったから。
人に頼るのがダメなこと、という判断は、子どもの頃から「自分のことは自分でやれるようになりなさい」と教え込まれ続けたから。
頼ろうとしたけれど、失敗した(拒否された、怒られた、思ったような結果にならなかった)のは、頼る方法を試したけど上手くいかなかった、という体験です。
人に頼るより自分がやったほうが確実、というのも、目の前の問題以外も自分一人でやって成功してきた実績による自己認知でしょう。もしかしたら普段から「頼られる」ことが多いのも影響しているかもしれません。
「人に頼る」ことを端から否定しているというよりも、自分の実体験から生まれた「自分ルール」なのでしょう。
つまりそれは、あなたが弱いからではなく、これまでの人生を生き抜く中で身につけてきた「適応」だったのかもしれません。
だから強い行動規範になっているのではないでしょうか。
だからこそ、あなたはこれまで「人に頼らない」ことで、ちゃんと人生を乗り越えてきた人なのだと思います。
まずはその事実を、否定する必要はない、と、私は思います。
2.人に頼らないで頑張るときの構図とは
実際これまでずっと「人に頼らない」ことで頑張って来た。ここで、何が起きているのか、どんな状況になっているか、を見ていきましょう。
【事例】初めての子育てをワンオペで頑張るAさん
30歳で第一子を授かったAさん。仕事は子供が1歳になるまで育休を取得し、その後は保育園を活用してご主人と一緒に子育てをしていました。
しかし同い年のご主人もその時期に昇進をして毎日多忙、Aさんの実家は他県のため両親の協力を仰ぐことも出来ません。
会社の同僚に同じく育休を経て復帰した人もいますが、皆仕事と家事育児を両立しているように見えるので「一人でいっぱいいっぱい」と言うことも出来ず、また「あの人が出来るなら私だって出来るはず」と励みにもしながら、ほぼワンオペで育児を頑張ってきました。Aさんはこう考えていました。
『子どもは可愛い、夫もそれなりに協力してくれる。職場も配慮してくれていると思う。
だから辛いと思うのは私自身にまだ足らないところがあるからなのだ、今までだって初めてやる仕事や役割も一人でこなしてきた。育児は仕事じゃない、家庭内の問題なんだから、自分たちでどうにか出来るはず』そう思いつつ、気づけばネットで「育児 ワンオペ 辛い」と検索する日が続いています。
事例として「初めての育児」を用いましたが、これが「役職」「転職」「介護」「看護」に置き換わっても、同じ心境に至る方は多いと思います。
Aさんの中で、どんな構造が出来上がっているでしょうか。
- 初めての体験・責任と向き合っている
- 協力者(夫)や理解者(職場)はいるものの、心理的には「ワンオペ」
- 今まで出来てきたから大丈夫、という自負
- 他の人にも出来たんだから、私にだって出来る、という期待
- 家庭内の問題は自分たちで何とかしなければ、というルール
この中心にいるのが、Aさんですね。
人に頼らないで頑張るとき、私たちの問題は「忙しさ」だけではありません。
「すべてを自分で抱える構造」そのものが出来上がっていくのです。

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3.どうして「人に頼らない」自分が苦しくなるのか
人に頼らないことは、あなたの過去や実績が生み出した法則です。だから説得力がある。根拠なく「頼らない」選択をしたわけではないです。
なのにどうして今、これまでと同じやり方で問題を乗り越えようとしているのに辛さや苦しさを感じるのでしょうか。
先ほどのAさんの構造をもう一度振り返りましょう。
初めての体験・責任と向き合っている
協力者(夫)や理解者(職場)はいるものの、心理的には「ワンオペ」
今まで出来てきたから大丈夫、という自負
他の人にも出来たんだから、私にだって出来る、という期待
家庭内の問題は自分たちで何とかしなければ、というルール
Aさんの「心理的ワンオペ」にもしっかり根拠があります。
「初めての育児」だけど、「以前も未経験のタスクを一人でこなしてきた」から自分ならやれる、と思っているのですよね。そしてきっと状況として破綻していないから「出来ている」と判断出来るでしょう。
当然、周囲もそう見ます。
Aさん自身が「他の人も出来たんだから」と他者を判断しているように、周り(夫も含めて)も「Aさんは両立で来ている人」と見ています。
なのに、Aさんは苦しい。
上記の構造の中に、一つ入っていないものがあることに、もうお気づきだと思います。
そうです、Aさん自身の「心の声」です。もっと言うと「Aさんが『どうしたい・どうなりたい』と思っているのか」が、構造の中に含まれていないのです。
なぜ「私はこうしたい」が、Aさんの構造に含まれていないのでしょう。
感じていないわけではないですよね。ただ「後回し」にしてしまっているのです。
目の前の役割や責任を優先するほど、「自分がどうしたいか」は後ろに追いやられていきます。
それによって「今はもしかしたら過去とは違うやり方も選ぶ必要があるのかもしれない」という見方に至らないまま、現実だけが進行していってしまっている、と言えるでしょう。

4.人に頼るって、どういうこと?
少し視点をずらして、「人に頼るとは」どういうことか、についてお話したいと思います。
人に頼る。
こう聞いたとき、真っ先に何を感じましたか?
- そういう方法もあるだろう
- そうやって頑張る人もいるだろう
- でも私には縁がない話
みたいな感じかもしれません。
同時に「思いつく誰かに頼っている自分」が頭に思い浮かんで、違和感やミスマッチも感じているかもしれません。
人に頼らないで自分で調べて学んで努力して人生の階段を昇って来た方にとっては、「人に頼る」のはコストパフォーマンスが悪く、非効率で、かつ人の迷惑になる行為であり、自助努力を怠った状態に見えるかもしれません。
先ほど「人生の階段」という比喩を使いましたが、人生はまさに階段状に登っていく道です。
エリクソンの「ライフサイクル理論」というものがありますが、人生を8つのステージに分けて、それぞれに「解決する課題」がある、と説いています。
この中で「成人期(20~40歳)」の課題は「親密性」です。それ以前のステージで「自分はこういう人間なんだ」という自己像を獲得し、それを以て他者との信頼関係や愛を育むステージです。
なぜそれが必要か。自分一人では背負いきれないほどの大きく重く難しい現実と向き合うようになる年代だからです。
- 育児
- 介護
- 仕事上のマネージメント
- 地域のリーダー役
こうした役割を、望むと望まざるとに関わらず引き受けることが増えていくのが、今私たちが向き合っているステージです。
今まで磨き上げてきた「人に頼らないで独力で何とかする」スキルだけでは対応しきれなくなってきた、だから従来の法則が通用しない、頑張っているのに苦しいばかり、という現実が立ちふさがっているのです。
人に頼る、とは、どういうことか。
それは「おんぶする」「役割を放棄する」「逃げる」ことではありません。
今あなたが背負っている役割と向き合い、やり遂げるために必要な「新しい手段・ツール」と言えるでしょう。
つまり、「人に頼らない構造」が間違っていたのではなく、人生のステージが変わったのに構造が更新されていないということなのです。
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5.人に頼らないことでやって来たあなたがこれから目指すもの
人に頼らないで自分の力だけで問題を乗り越えてきた、この実績を否定する必要はありません。
むしろこれはとても強力なスキルです。
例えば人に頼ることでここまで来た人よりも、「一人でできる事」の幅とレベルが広いです。
それを元に「目の前の問題をクリアするための不足分」を計算し、それを埋める助力を求めればいい。
自分でできる事が多いのは、あなたが懸念している「他者への負担」を小さくすることにも役立ちます。
『じゃあ、ただプラスすればいいの?』
というと、半分正解で半分違います。
だって、「ただ付け足すだけ」なら、今すぐ出来ますよね。
でも多分「じゃあ頼もう」という気分にはなっていないのではないでしょうか。
人に頼らないでやってこれたあなたが、人に頼る選択をするために何を目指せばいいのでしょうか。
それは、先ほどもお話した「自分はどうしたいか・どうありたいか」を、構造に含めて考えることです。
先ほどのAさんの事例から考えてみます。
夫もいて職場も育児に理解があるのに、どうしてAさんは苦しいのでしょう。
Aさんは本当は、どんな育児の時間を過ごしたいのでしょうか。余裕をもって、大変だけど楽しさや喜びも感じながら育児したいと思っているのではないでしょうか。
では「楽しさや喜びを感じながら育児する」ために、何が必要でしょうか。
- 夫と家事育児分担をもう一度話し合う
- 休日を自分のために使うことで、メンタルの余裕を取り戻す
- 会社と相談して時短勤務にしてもらう
全て一例ですが、何かしら「他者に頼る」案になると思います。
そして他者に頼る理由は「自分がどうしたいか・ありたいか」です。
この点の価値を十分に受け入れることが出来れば、他者に頼ることへの抵抗感、または罪悪感も減り、自分の思いも満たされ、新しいステージをクリアする日も近づいてきます。
つまりあなたがこれから目指すのは、「人に頼れる自分」になることではありません。
自分の望みを構造の中心に置いて判断できる自分、になることです。
その結果として、必要なら人に頼る、という選択が自然に生まれます。
今までは「問題を解決するために自分が頑張る」という構造でした。
これからは「自分がどう生きたいか」を実現するために問題を扱うという構造に変わっていきます。
6.まとめ
ここまで、「人に頼らないで頑張る構造」について見てきました。
人に頼らないという選択は、これまでの経験の中で形づくられてきたものです。
実際にそれで乗り越えてきた現実があるからこそ、自然にそう判断しているとも言えます。
ただ、人生の状況や背負う役割が変わると、これまで機能していた構造が合わなくなる場面が出てくることがあります。
それは何かが間違っているというよりも、環境との関係が変化しているだけなのかもしれません。
そしてこれから大切になるのは、「人に頼れるようになること」そのものではありません。
自分はどうしたいのか、どうありたいのかを構造の中に含めて考えられることです。
その視点が加わると、必要に応じて他者を選択肢に入れることも、特別なことではなくなっていきます。
もし今、少し立ち止まる感覚があるのなら、それはこれまでを否定するサインではなく、
構造を見直す余白が生まれているタイミングなのかもしれません。


