役割から始まる自分軸のつくり方|他人に振り回されない生き方を育てる

役割という言葉から、何を想像しますか?
母親、父親、妻、夫、子、兄、姉、又は職業や役職などを思い浮かべる方が多いと思います。
ですがこうした役割には社会的なイメージがセットになっています。
例えば「母親とはいついかなる時も子どものことを優先にして立ち回るもの」などですね。
しかしこれはあくまで社会が勝手に作り上げた「母親像」であって、母親本人が思う母親像とは一致しないでしょう。するとどうなるか。この二つの間で葛藤が起こります。そして自分の持つ役割像を選び取れれば問題ないですが、納得しきれないままもう一方の役割像に自分を当てはめようとすると、その先にまた違う葛藤が起こります。
ここでは「母親」を例に挙げましたが、職場でも家庭でも、人はそれぞれ何かしら役割を背負っています。
自分の意思に沿わない選択や行動をせざるを得なくなったり、納得できないまま責任ばかり追及されたり、どんなに頑張っても満足感や達成感を得られなかったり、という問題です。
自分が果たすべき役割とは、何かに当てはめるものではなく、自分で選び取るものなのです。
今回は、自分軸構築の一つとして「自己像と役割」についてお話したいと思います。
目次
- 1.問題の正体は?⇒役割が曖昧だと、人は他人基準になる
- 2.じつは役割は、与えられるものではなく「選び取るもの」
- 3.自分の役割が明確になったら、世界はどう変わる?
- 4.役割とは何か:自分の行動・判断の「設計図」としての役割
- 5.役割とは「見つける」ものではなく「育てる」もの
- 役割から始まる自分軸のつくり方
1.問題の正体は?⇒役割が曖昧だと、人は他人基準になる
①「自分は何を求められているんだろう?」という不安
なぜ、自分で自分の役割を明確にし、それに納得する必要があるのでしょうか。
それは、自分の居場所を確保するためです。
今何かしらの場所・組織・集団の中にいると思います。会社、学校、サークル、地域、友人関係、家族もその一つです。
その中で「自分は何を求められているのか」がはっきりしないのは、不安感を強めます。
なぜなら、役割を果たさなければいつかその中からはじき出されてしまうのでは、と考えるからです。
「【自分らしさを追及する】自分軸を育てる承認欲求のレッスン」でも登場した欲求階層説のうちの1つ「所属の欲求」は、これに該当します。
どこかに自分が「所属している」と実感することを人は必要としますが、それは心理的な所属感が大事なのです。例えば「●●会社勤務」のような書類上だけの所属では充足されないのです。
「私はここにいていいのだ」と安心できることが必要なのです。
今自分が所属している集団の中で、自分がどんな役割を果たしていて、それが周囲に受け入れられているのだ、と実感しなければ、所属の欲求は満たされず、常に不安を感じ続けることになります。
②役割がグラつくと、他人の反応が「答え」になる心理
自分の役割が不明確だと、どんな場面でどう立ち働けばいいのかがあやふやになります。行動も、判断も、選択も、常に自信をもって行うことが出来ません。
と、なると、どうするでしょうか。
これまでのコラムを読んでくださっていた方ならお分かりですよね。
そうです、他人の意見に従って判断・選択・行動することになります。
役割がわからない状態では、脳は「正解」を外に探そうとします。そのため、他人の反応が「正解」のように感じられてしまいます。
そしてこれが、自分の役割がはっきりするまで続くことになります。長引けば長引くほど、そのほうが楽だと感じてしまうようになります。
③他人軸がクセになる仕組み
他人の意見とは、その人の考え・指針・ポリシーです。ということは他人の意見に沿って動くことが習慣化した状態は「他人軸で生きている」と言えるでしょう。
そんな風になりたいわけではないですよね。ですが自分の果たすべき役割が分からないのですから、最低限「みんなの機嫌を損ねることのないよう」に過ごさなければいけない、と考えてしまいます。
集団の中での居場所を確保しようとするほどに、他人軸になってしまうのです。
2.じつは役割は、与えられるものではなく「選び取るもの」
①役割は、義務ではなく「選択」
冒頭で事例として「母親役割」を挙げました。それ以外の役割もそうですが、自分の欲求や特性にそぐわない役割像を追い求めると、どこかで「押し付けられている」のような義務感が高まってきます。
『本当はこんなことがしたかったわけじゃない』
という失望や不満はどんな人でも感じたことがあるでしょう。
それは、役割に対して「自分が選び取る姿勢」が欠けていることから生まれる不足感があるからです。
「私は○○な母親/マネージャー/医師でありたい」と、自ら意味づけるかどうか、が大きく左右します。
②感情や反応ではなく、行動の枠組みとしての役割
役割って、私たちに何をさせるものでしょうか。
それは、感情や考え方を縛るもの、ではありません。
- 「母親なんだから優しくしなきゃ」
- 「友達なんだから共感してあげなきゃ」
- 「上司なんだから部下を甘やかしてはいけない」
と考えがちですが、これだと自分の感情や思考を役割像に合わせて捻じ曲げることになりかねません。そして考えや感情は押さえ込むほど反発力が高まり、ストレス化しやすいのです。
私たちが役割によって選び取るのは、判断・選択・行動です。自分が「こんな○○(役割)でありたい」と選び取ることが出来ると、
「私は母親として、話をしっかり聞こう」
「信頼できる友達でありたい。だからお金は貸さない」
「ここは上司として、部下に可能な指示を出そう」
と、自分の考えや感情に沿って、無理のない行動を選ぶことが出来るようになります。
③役割を選び取らないと、他人軸のまま固定されてしまう仕組み
役割は、自分が選び取らなくても、年齢・性別・立場・慣習などから「外側から与えられる」ことがあります。
しかし、それは必ずしもあなたが望むものとは限りません。
問題は、納得していない役割を背負うと、自分の判断基準が消えてしまうことです。
判断基準が消えると、「この場ではどうすれば正解なんだろう?」と常に他人の反応を探るようになります。
その結果、他人の行動をなぞることが「安全策」になり、他人軸が習慣化する のです。
だからこそ、
「私はこの場所で、どんな役割を果たしたいのか」
という問いが重要になります。
選び取った役割は、周囲の反応ではなく「自分の基準」で行動できる土台になります。

3.自分の役割が明確になったら、世界はどう変わる?
変化1:迷わなくなる
自分が納得する役割を選び取ることが出来ると、その役割が何をすればいいのか、も、自分で考えることが出来るようになります。
例えば「一人で悩むスタッフがいない店舗運営ができる店長役割」を選んだとします。
すると、定期的にミーティングを開くとか、個別に話しやすい場を設ける、メールやチャットでの相談も受け付ける、など、色んな方法を思いつくでしょう。
「店長って何をしたらいいんだろう」のような迷いは無くなります。
その役割が何をすればいいのか、も、自分で考えることが出来るようになります。
変化2:判断にブレがなくなる
迷わなくなるのと同様、どういう判断・選択をすればいいのか、も、自分で考えることが出来るようになります。
例えば「お互いの欠点を許し合える配偶者」という役割を選んだとしたら、どう話し合っても欠点を受け容れてくれない相手と一緒にいる選択を見直せる、という決断が出来ます。
そして後悔することもありません。なぜならどうしてその判断をしたのか、の理由に、自分で納得できているからです。
変化3:人の視線に左右されにくくなる
自分で納得して選んだ役割ですから、その役割が「どうあるべきか」「どうありたいのか」も自分の中で明確になっています。
だから他人の視線や意見に必要以上に左右されることがありません。
例えば「うつ病を再発させないことを最優先に、出来ることをやる」という役割を選んだとします。スタッフとしての責任と、自分自身への責任が混合されているので、人目が気になる度合いも強いでしょう。
「もう復帰したなら元気なんだよね、たまには夜飲みに行こうよ」と誘われた場合でも、「うつを再発させない」ことが自分の「役割」だと認識できていれば、自分が後悔しない判断が出来るでしょう。
自分が選んだ役割を果たすことで、自分の居場所を自信をもって確保することが出来るようになるのです。
では、大前提となる「役割」とは何か?
どうやって選び取るのか?
ここからは、心理学の理論とワークを使って、あなたの役割を具体的に見つけていきます。

4.役割とは何か:自分の行動・判断の「設計図」としての役割
①役割の定義
ここでいう「役割」とは、社会から押しつけられる「肩書き」ではなく、自分がどんな存在として生きていきたいのかを表す、自分自身による方向づけのことです。
「母親」「管理職」「友人」という外側の呼び名ではなく、
- どんな関わり方を大切にしたいのか
- 何を優先したいのか
- どんな価値を体現したいのか
といった「内的な姿勢」と言えます。
役割は、肩書きにくっついてくる「〜すべき」の集合ではありません。むしろ、自分で選び取り、自分の言葉で定義し直すことができる領域です。
②自分軸の正体=自分で決めた役割
「自分軸がある人」と聞くと、強い意志や確固たる自信があるように思えるかもしれません。
しかし、自分軸の正体はもっとシンプルで、自分で選んだ役割を基準に行動する習慣のことです。
- 外側の評価ではなく、自分が大切にしたい価値を中心に置く。
- その価値を実際の行動にどう反映させるかという「役割」を、自分で定義し続ける。
この「自分で選んだ役割」があるからこそ、ブレにくく、迷いにくく、他人の意見や反応に振り回されにくくなるのです。
③行動がブレなくなる理由
判断や選択も含めた「行動」が迷いやブレから解放されるのは、役割が判断の軸=設計図になるからです。
どんな選択をする場面でも、次のように自分に問い直せます。
『この判断は、私が選んだ役割と一致するのだろうか』
役割が明確なら、この答えは自然と出てきます。
反対に、役割が曖昧なままだと「正解はどっち?」「相手にどう思われる?」という外側の基準に揺さぶられ続けます。
つまり、役割とは
- 自分の価値観を行動レベルに翻訳したもの
- 日常の判断を支えてくれる「心のコンパス」
- 自分軸を実践に移すための具体的な指針
と言えるのです。
5.役割とは「見つける」ものではなく「育てる」もの
ここでもう一度「役割」とは何か、を整理しましょう。
多くの人は「自分の役割って何なんだろう?」と悩みながらも、実際にはすでに毎日、小さな役割を果たしています。
役割とは「肩書き」でも「役職」でも「続柄」でもありません。
まったく違う、というより、「どんなものにしたいか」を、自分で掴んで形にしていくもの、と言えるでしょう。
生まれつき持ったもの、例えば性別や国籍、人種によって付随してくる役割もありますよね。
ですが一口に「女性(または男性)」といっても、自分がどんな女性・男性でありたいか、を選ぶことで、自分なりの「性役割」を選ぶことも出来、または拒否することも可能になります。
これは既に実践していることもあるのではないでしょうか。
例えば以下に沿って考えてみてください。
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