自分軸を立てよう
毎日の選択に迷ったり、誰かに強く言い負かされて不安になったり、自分がやっていることに自信が持てなくなったり。
誰もが感じるこうした悩みを改善していくためには、「自分軸」を立てることが役に立ちます。
では自分軸とは何でしょうか。
1.自分軸とは
「こういう人間でありたい」という自己像です。
例えば看護師なら「患者の痛みに近くで寄り添う看護師でありたい」のような感じですね。
「どんなふうに何をする」というように、動詞+副詞で表現されることが多いです。
「どうあるべきか」というのと似ていますが、「べき像」は意外と自分の意見が含まれていません。
親、教師、上司、友人などの期待や要望を無言のうちに取り入れています。
もっと自分自身が「やりたい」「わくわくする」「この軸に沿って生きるためなら多少の困難は耐えられる」と思えるような能動的な自己像のことです。
2.自分軸の効果
以下が考えられます。
- 迷ったときの判断基準になる
- 後悔が減る
- 間違えた!と思っても修正しやすい
- 自己効力感が高まる
- 葛藤や矛盾によるストレスが減る
- 他者の意見や批判に左右されづらくなる
- 他の人の意見を認めやすくなる
- 行動が促進される
このような「自分軸」を持つことで、他者の機嫌や無茶ぶりに配慮しすぎて疲れてしまったり、キャリアや進路に対する迷いが減ります。
また、メンタルヘルスを損なう理由の一つが「葛藤」や「矛盾」です。自分の中に相反する指針や力が同居してどちらも選べない時にストレスを感じてしまいます。
これらを0にすることは出来ませんが、自分軸を持っていることで「自分がどうしたいか」を明確にしやすくなります。一時的に自分軸に沿わない選択をせざるを得ないときも、流されることなく対処法を考えることが出来るでしょう。
3.自分軸の立て方
では実際にどうやって自分軸を立てていくか、を考えてみたいと思います。
以下の質問に答えてみましょう。
- 自分は何をしている時に活力を感じるか?
- 「自分のスキルを有効に使えている」と感じているか
- 「今」やっていることは、やらされている? 自分の選択の結果?
- 自分の実体験の中で、今も支えになっているような出来事は何か
- 人から言われて嬉しい言葉ベスト3
- 自分のやる気をアップしてくれる人・ツール・環境・要素は何か
自分軸とは、自信や自尊心とは少し違います。目標でもありません。
今の自分が何をしたらいいか、どういう考え方で他者と接するといいのか、迷ったとき何を選べばいいのか、のように「今」の自分の方向性を定めてくれるものです。
「座右の銘」が一番近いかもしれません。
常に自分の行動の方向性を決める指針なら、「やらされ感」や「義務感」、納得感出来ないままでは続けられません。
自分でワクワクしたり、手ごたえを感じられたり、人から褒められた時素直に「ありがとう」と思えるような方向性に沿って頑張りたいですよね。
そういう方向性だからこそ、選択の結果として困難な事態に遭遇しても「何とか乗り越えよう!」というモチベーションも湧いてくるのです。
4.自分軸の活用場面
①選択に迷ったとき
進学先、就職先、結婚相手、引っ越し、大きな買い物をするときなど。
自分の人生に大きな影響を与える可能性があるからこそ決めかねて、色んな人から意見を募るかもしれません。その意見の全てが正しく聞こえて更に迷ってしまうでしょう。
ですが自分の人生の最終責任を取るのは自分です。それはデメリットだけでなくメリットも同様です。
自信をもってこの先を生きていくためには自分軸に参照して「自分で選んだのだ」という確証が大きな支えになります。
②他人軸になっているとき
他人と歩調を合わせられるのは大きな長所ですが、合わせようとしすぎるのはストレスです。
どんなに従順で器用な人でも「自我」があります。自我とは自分の意思、欲求です。他人と歩調を合わせることばかり考えていれば自我が置き去りになります。
ですが他人に合わせることばかりしていると、自我を主張することへ罪悪感を覚えてしまいます。気ままな思いつき、わがままと誤解してしまうのでしょう。
しかし「自我」ではなく練り上げた「自分軸」ならどうでしょうか。
誰かと歩調を合わせるとしても、それは自分軸と照らし合わせた結果であれば、自我が犠牲になることはありません。
③困難に直面したとき
辛いことやイヤなことを選んで体験する必要はありません。
「若い時の苦労は買ってでもしろ」というのは多分間違ってます。
辛いこと・嫌なこと・難しいこと・やりたくないことに敢えて取り組むなら、その理由が必要です。
「動機づけ」ですね。
乗り越えるのは何のためか。
お金だったりご褒美だったり他者からの賞賛だったり色々ありますが、「自分軸に沿って選んだ道の途中にあるから乗り越えるのだ」というのも十分強力な動機です。
大事なのは「自分で選んだ」という認識です。
5.自分軸は柔軟に、距離を取って扱う
とても強力に自分の行動を方向づけてくれる自分軸ですが、いつでもどこでも絶対に守り抜かなければ!と思い過ぎると、これもまたストレスになります。
執着になってしまうのです。
たった一つの軸ですべてが判断出来るほど人生は単純ではありませんから、場合によっては自分軸からずれた選択や判断をする必要がある場面に出くわします。
でもそれも全然OKなのです。
柔軟に、近づきすぎず、ほどよい距離を取ることをお勧めします。
≪参考≫「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をまなぶ」
ジェイソン・B・ルオマ (著), スティーブン・C・ヘイズ (著), ロビン・D・ウォルサー (著), 高橋 史 (監修, 読み手, 翻訳), 熊野 宏昭 (監修, 読み手, 翻訳), 武藤 崇 (監修, 読み手, 翻訳)、星和書店
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