「うつ病だから」と言われたら

「うつ病だから」と言われたら

うつ病に限らず、メンタルの病気を患っている人とは基本的にケンカはしないほうがいいでしょう。症状が悪化したり再燃する可能性が高いです。
そして、話し合い、言い合い、ケンカになってしまったとき「(こっちは)うつ病だから」と言われたら、そうでない側は黙るしかなくなります。

うつ病なんだから、と言われたとき、家族は、周囲はどうとらえ、どう対処すればいいでしょうか。

1.うつ病相手でもケンカになってしまうことはある

ケンカをしないに越したことないのは、うつ病関係なく誰が相手でも同じです。どんなケンカも、結果としてそうなってしまった、という状況の一つにすぎません。
しかし相手がうつ病(その他精神疾患)を患っていると、特にケンカにならないよう配慮をするでしょう。
それ自体は必要な気遣いですが、かといってケンカにならないことだけがベストでしょうか
ケンカになることを恐れすぎて、必要なことを伝えられなかったり、家族・周囲の人間の言い分も言えず我慢するだけでいいのでしょうか。

それは結果としてコミュニケーション不足コミュニケーション不全関係性の崩壊につながりかねません。

2.必要なケンカも「うつ病だから」で終了してしまう

覚悟を持って意思を伝えようとしても、何かの拍子に「うつ病だから」と言い返されれば、家族・周囲は飲まざるを得ません。
確かにうつ病だと、出来ることに限界がありますし、健康な人と言い合いが出来るだけのエネルギーもないし、思考もゆっくりとしか働きません。ケンカとはとてもエネルギーを使うものですから。言い終わってスッキリするのは健康な場合だけです。

言いたいことがあるから始まった会話が、お互いの感情が激したことでケンカに発展してしまった、けれど「うつ病だから」と言われてしまえばそれ以上は何も言えない。

しかし会話・ケンカ自体を終了することは出来ても、関係を終了させるわけにはいきません。
黙ってしまった側には、「黙らされた」感がくすぶってしまいます。

3.状態は同等ではなくても、存在としては対等

うつ病の時は、心が疲弊して、体力も落ちて、思考力も低下しています。そのことへ負い目を感じて辛いのはうつ病本人でしょう。
家族や周囲はその点に配慮して、出来ないことをカバーしながら生活しています。

心身の状態は、病気以前、家族や周囲と「同等」ではありません
しかし、人として、メンバーとして「対等」です。

うつ病の人が下でもなければ、家族・周囲が下でもありません。
しかし「うつ病だから」と言われると、うつ病の人の感情や状態「だけ」が優先され、それ以外は蔑ろにされているように感じてしまうことがあります。

もちろん言ってる側はそんなつもりはないでしょう。
しかしそれまでのコミュニケーション不足や行き違いの積み重ねで、言われた側がそのように感じてしまう場合はあり得ます。

対等であるはずの家族・メンバー間に、上下関係が生まれてしまうのです。

4.「うつ病だから」と言われたら

うつ病の人がこの言葉を口にする背景には、何があるのでしょうか。
「うつ病だから」と言わざるを得ないような会話の流れ、環境、相手との関係性、本人の考え方など、色んな要素が考えられます。
たとえば。

①うつ病だから→「その要望には応えられない」

何かしらお願いしたいことがある場合には、うつ病の人は「それは出来ない、なぜならばうつ病だから」と答えることはあり得ます。
だとしたら、「今の状態で出来ることは何か」を一緒に考えるのはどうでしょうか。

②うつ病だから→「責めないでほしい」

辛い気持ちを我慢し続けた結果として、話し合いがケンカに発展すると、どうしても尖った言葉を使ってしまいます。言われた側は「お前のせいだ」と責められていると感じても仕方がありません。
家族・周囲も、わざと傷つけるつもりはありません。ただ、自分の感情や状態を伝えるのにピッタリな言葉がそれだったのかもしれない。
だとしたら、「責めるつもりはない、分かってほしいだけ」ということを説明することは可能でしょうか。

③うつ病だから→「今は考えられない」

将来のことや、決断しなければいけないことについて話し合うのは、必要なことだけれどとてもエネルギーを使います。そもそもうつ病の人は思考力が格段に低下しているうえに、将来について考えることが恐怖です。自分が良くなる見通しも自信もないのですから当然です。

「今は考えられない、うつ病だから」と言われたら、うつ病の状態に合わせて、考えられるレベルでの相談・質問の仕方をしてはいかがでしょうか。
二者択一など、選択肢を絞ってみる。
この相談方法はうつ病の人相手だけじゃなく、いろんな場面でも使えるので、自分の会話スキルを身につけるため、と考えることも出来ます。

5.家族・周囲の人間には「余裕」が必須要素

どうしたってうつ病の人には対応範囲やレベルに限界があります。
家族・周囲の側からしたら、病気関係なく伝えたいこと、分かってほしいことはありますが、うつ病に配慮しすぎて我慢しすぎてしまい、膨れ上がって限界突破して爆発すると、うつ病への配慮が裏目に出ます。

結果として「うつ病だから」対処出来ないよ、という状況になってしまうのです。

ではどうしたらいいのか。
余裕を作りましょう。心、体力、時間を、ギリギリ目いっぱい使う生活を変えましょう。
そのためには第三者の協力が必要です。
友人や別居家族(実家両親など)を頼れれば話が早いですが、こうした近しい人だからこそ頼りたくない、という人も少なくないと思います。

こういう時に使えるのが福祉サービス、医療、カウンセリングです。
辛い気持ちを吐き出したり、公的サービスで援助してもらったり、本人の服薬内容を見直してもらって生活上の負担を減らしたり。
そうすることで、溜め込み過ぎず、気持ちや問題が小さい=うつ病でも対処できるレベルのうちに持ちかけることが出来るようになります。

NGなのは一人で踏ん張り過ぎること。
見通しもなく無期限に一人で背負い込み続けることは、共倒れや家族・周囲の人間のうつ病などにつながる未来しかありません。

普段の生活の中に第三者を入れて少しずつ余裕をキープし、問題が小さいうちにうつ病本人と一緒に対処していきましょう。

≪こちらもご参照ください≫

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です