劣等感の取り扱い方
劣等感、コンプレックス、短所、欠点。
色んな言い方がありますが、誰でも2つ3つ持っています。
逆に「良いところ、特技、長所は?」と言われると全然思いつかない(絶対あるのに)。
長所探しより、劣等感を打ち消すことに毎日忙しいのではないでしょうか。
1.劣等感とは
「劣等感(れっとうかん、英: Inferiority complex)は、自分が他人に劣っていると感じること。劣後感(れつごかん)ともいう。
wikipedia
強烈な不平等感を持つ人々を記述するために使用される心理学用語であり、それによって多くの場合、極端な内気、自己隔離、社会的従順などが発生する。
劣等感はしばしば、ある人がすべての他人よりも何らかの形で不足している、または劣っているという信念から生じる」
人は「社会的生物」なんて言い方をしますが、どんな人も必ず誰か他者と関わって生きています。
日本語の「人間」という漢字はすごいな、と思います。
誰かと関わっていれば、いつでもどこでも自分の意思や都合が通ることはなく、衝突や摩擦があります。
自分はダメと言われたけど別の人はOKと言われたり、自分が望んでいた状況を別の人が手に入れているのを目の当たりにすることもあるでしょう。
また、自分がどうしても出来ないことを苦も無くやってのける人を見て驚いたり、憧れたり、嫉妬することもしょっちゅうです。
生きていれば、成長段階や周囲の環境によって避けられずに発生するのが「劣等感」です。
2.劣等感が起きやすい条件
①完璧主義
いつでもどんな状況でも100点満点の結果を出さなければいけない、出せて当然、と思ってしまうと、ほぼ毎回自身を無くしたり、周囲に失望することになるでしょう。
どんなに準備をしても想定外の事態は起こりえます。
雨が降った、朝からお腹が痛い、急用でメンバーが揃わない、電車が遅延した、などなど。
完璧主義傾向の強い人は、そうした想定外の事態に対しても「完璧にフォローできなければ」と考えがちです。
いつでもパーフェクトを目指す姿は周囲にとっては頼もしいですが、本人はきっと気が休まる時がないでしょう。そして余裕の無さが更に「次こそは」という意気込みに拍車をかけ、期待通りにいかないと自信喪失を深めていきます。
②他者と比べる
自分と他人を比べると、どちらかというと相手の「長所」に目が行きがちになりませんか?
自分に対してあまり自信がない人ほど、その傾向が強いように思われます。
第三者から見ると、良いも悪いもない、中立的な「違い」でしかない差も、理由をつけて「自分はあの人より劣っている」と捉えがちになります。
③思い込み
「~~でなくてはいけない」のような思い込み(バイアス)が強い人も、劣等感を強めがちです。
なぜなら、思い込む、とは、出来ていないからこそ強く心に刻まれるからです。
- 毎日規則正しく生活しなければならない
- どんな人とでも仲良くならなければいけない
- いつでも堂々とふるまえなくてはいけない
など、恐らく実際に出来ている人は、こうした考えすら持っていないのではないでしょうか。
出来ないからこそ、思い込み=理想の姿とのギャップや、実際に出来ている人との違いによって「自分はダメなんだ」と劣等感につながってしまうのだと思います。
3.劣等感はひっくり返そう
劣等感を感じてしまうのは、他者と関わりながら生きていれば当たり前のことです。
たとえ家の中に閉じこもっていても、今の時代はどこからでも情報が入ってきます。それがまた自分の劣等感を刺激する。
劣等感を無くそう、と考えるのは、絶対に離れてくれない自分の影から逃げようとするようなものです。走っても走ってもついてくる。かといってそのままにしておくのもやっぱりつらい。
ならば、劣等感を引き起こす原因はそのままにしておいて、見方を変えてみる、というのは如何でしょうか。
<方法1:自分のストレングスに気づく>
ストレングスとは直訳すると「強味、強さ」です。転じて自分にとって利用できる「資源」のことを指します。
例えば「毎日規則正しい生活を送れずに悩んでいる」30代の女性がいるとします。
しかし他の要素を見てみると、
- 30代→まだ若い
- 不規則な生活でも健康をキープ
- 不規則でも怒られない環境にいる
- 規則正しいとはどんなことか、を理解している
- 規則正しいほうが都合がよい環境にある(仕事をしている、結婚して家事を担当している、など)
のような要素が見えてきます。
「~でなければならないけど出来ない」自分にだけフォーカスしていると、見えない「自分の資源」が見えてきます。
<方法2:一部分にフォーカスし過ぎない>
自分と誰かを比較すると、劣等感が生まれます。
年齢、性別、生まれた場所、育ってきた家族や家庭環境、学校での過ごし方、得意科目・不得意科目、友人関係、趣味など、何もかもが違う相手と比較しています。
しかし「Aさんより自分は劣っている」と考えて落ち込む人は、こうした他の条件を全部無視して比較して落ち込みます。
例えば「同じ職場で同じ年数働いているのに」という、同一条件だけを持ち出して、お互いの間の違いにだけ意識を集中します。
このような目線で自分を下げて苦しんでいる人を見ると、私はいつも「水面下の白鳥」を思い出します。
水面から上に出ている(=他者から見える)部分は、首をすっと伸ばして優雅に音も立てずに水の中を移動して、とても優雅で美しい。でも水の下(=他者から見えない)では、必死に足を動かしている、つまり他者からは見えない部分で努力をしているのです。
他人と自分を比べて落ち込んでいる人は、こうした他人の「見えない努力」や「見えない苦悩」に気づいていません。
自分が悩んでいるのと同様に、相手にも苦悩があるのです。その苦悩は、もしかしたら自分はクリアできているものかもしれないのに。
なので、他者と比較して、数少ない違いを引っ張り出して落ち込んで自分を下げる必要はありません。
違いがあるのはお互いの一部分だけで、それだけで人間の価値は決まりません。
<方法③:自己分析>
劣等感が強すぎたり、誰かを標的にして羨ましがったり嫉妬している人は、自分で自分をちゃんと理解できていない人が多いです。
自分の欠点や、理想に対して出来ていない部分については何時間も語れるのに、自分が出来ていること、それによって成し遂げたことや誰かに褒めてもらった経験を聞くと黙り込んでしまいます。
思いついたとしても、「多分たまたま」「運がよかっただけ」と思っていて、自分の努力の成果だとは思っていないようです。
無理やり良いところを探して、黒を白と考えよう、ということではありません。
自分自身の棚卸から始めましょう。良い悪いの判断は必要ありません。
〇才の時に~~があって、その後~~をして、今の~~につながる、など、事実を並べていくと、気づいていなかったり見落としている「自分自身」が見えてきます。
方法①のストレングスにも共通します。
すぐに緊張しててんぱってしまい実力が出せない、笑われるから発言できない。
と思っていた人が、実は中学の時に答辞を読んでいた、とか、チアリーダー部に入っていた、なんて過去があったりします。
その中に、自分の劣等感を克服する情報が見つかるかもしれません。
誰かと比べるよりまず先に、自分自身をしっかり分析し、宝探しをしてみましょう。
4.まとめ
劣等感への対処方法として
- 劣等感は、成長して社会で生きていく中では、感じて当然の感情である
- 完璧主義や強すぎる思い込みが、劣等感を現実以上に強めてしまうことがある
- 劣等感を打ち消すよりも、視点を変えてひっくり返そう
をお話しました。
完全な長所や、完全な欠点など存在しません。
特徴に対してどちら側にとらえられやすいか、という、その場の空気があるだけです。
自分に対する価値判断を「その場の空気」にゆだねたりしないで、「私は〇〇だ」と理解し受け止めることで、必要以上に苦しまなくなるのではないでしょうか。
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