うつの伴侶とケンカになった時は
夫婦とケンカは、切っても切れないもの。
しないに越したことはないですが、一緒に住んでいて衝突しないはずがありません。
それがどちらか一方、または双方がうつ病なら、発生率と深刻度は倍増します。
うつ病の伴侶とケンカになったときは、どう対応すればいいでしょうか。
1.うつ病は自分を卑下しやすい
ケンカとは、二人以上の人間の主張が相容れない時に起きる現象です。
双方が自分の言い分を前面に出して、相手の言い分は聞かない。かなり強い態度です。
しかし、態度や語調が強くても、うつ病の人の発言内容は「自己卑下」要素が高くなります。
- 自分なんかいないほうがいい
- どうせあなたも私のことをダメな奴だと思っているんだ
- きっとずっとあなたの負担にばかりなる
とてもネガティブな言葉を、強い怒りのパワーで押し込んできます。
聞いている側にとっては、怒っていいのか慰めたほうがいいのか、という混乱が生じます。
その混乱が、自分の怒りと相まって、更に相手への不快感や不信感を増幅させます。
2.意地を張らずに方向転換を図る
ケンカとは同じ性質をもつパワーが衝突し合うから起きる現象です。
怒っている最中は脳が怒りに占拠されているので、冷静になることは難しいです。
しかし言葉を吐き出し続けていると、少しずつ熱が引いて冷静さを取り戻し始めます。
普通なら、冷静になれたとしても、意地や引っ込みがつかないことで長引かせてしまいますが、この「意地」は張っちゃいけない種類の「意地」です。
自分が意地を張ってるなぁ、と思ったら、それは冷静さを取り戻し始めた合図です。
矛を収めることが出来れば100点、出来ないとしても、少しずつ方向転換をはかりましょう。
ぶつかり合わず、相手の怒りをよけるのです。
3.怒りの避け方
①深呼吸を5回する
感情に支配されている時は、呼吸が浅くなっています。
脳に十分な酸素が送られていません。
酸素不足で心拍数があがり、身体がアラートを出して、怒りだけでなく焦りや恐怖まで呼び起こしかねません。
ゆっくり深呼吸しましょう。鼻から吸って(5秒)⇒息を止めて(5秒)⇒口から吐く(8秒~)
出来れば5回くらい。少しずつ、狭くなっていた視界と思考が広がっていきます。
②言いたいことがあっても、ケンカの最中に言うのは逆効果
自分も相手もヒートアップしているケンカの最中は、何を言っても伝わらず、「言ったのに理解してもらえなかった」という失望感だけが残ります。
言いたいことを思いついても、大事なことであるほどケンカが終わってから言いましょう。
③本気じゃない「ごめん」は言わない
とりあえずどちらかが非を認めることでその場は収束するかもしれません。
その場しのぎだったとしても、ケンカを終わらせる必要があるときならともかく、そうでないなら、本気じゃない「ごめん」は、あとでまた別のケンカや問題につながりかねません。
「あのときあなたが謝った。だったら私の言い分のほうが正しかったはず」
のように、矛盾が生じます。
④YES/NOだけじゃない。「分からない」も使う
0か100か、で会話が続いてしまうのがケンカです。
しかし、どちらかでなくてはいけない、ということはないはずです。
相手も自分も脳が正常に思考を整理出来る状態ではありませんから、途中でつじつまが合わなくなったり、相手の言い分が理解出来ないことがあってもおかしくありません。
「今あなたが言ったことがよくわからないから、もう一度説明して欲しい」
という、0でも100でもない、43とか62、みたいな返事もOKなのです。
そのような問いかけは、ケンカの方向転換にも有効です。
4.相手がうつ病の場合の注意点
①うつの人を一人にしない
一旦その場から離れて冷静になる、というのは、ケンカの時には有効な手段ですが、うつ病の人を完全に一人切りにするのはやめましょう。
場合によっては自殺企図の引き金になってしまいます。
②うつだけを悪者にしない
うつ病の人は、病気のせいで思ってもいないようなことを言ってしまうことがあります。
しかし、その全てをうつ病のせいにしてしまうと、「あなたがうつ病になったからこうなった」と、反対の極論に至る危険もあります。
③人格・病気・性格を直すことを求めない
この3つを攻撃すると、終わりのない戦争がはじまります。
相手も自分も、おいそれと直すことが出来ないものばかりだからです。
何かを変えたい、と望むなら、具体的な行動を対象にしましょう。
ケンカは本来「両成敗」で「対等」なものです。
また、ケンカが出来る相手、というのも、実は貴重な関係です。お互い本音でぶつかり合えた、ということです。
相手の本音も自分の本音も、しっかりと覚えておきましょう。
ケンカの最中には腹立たしいだけの「本音」も、時間を置いて冷静になってから観察し直すと、違う意味を持っていることに気がつけるでしょう。
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