うつ病家族との接し方とは
「うつ病家族との接し方」で検索すると色んな情報を見ることが出来ます。
どれもその通りなのでしょう。私もこれを心がけて、不器用ながら試行錯誤し続けてきました。
二十年前に夫がうつ病になった時からほとんど変わりませんから、これが正しい「セオリー」なのでしょう。
しかし、「正しい」ことがそのまま「有効」なのでしょうか?誰にとっても?
当事者としては、首を傾げざるを得ません。
なぜなら、うつ病家族との接し方とは、一律化出来るようなものではないからです。
【うつ病家族との接し方のセオリー】
クリニックのホームページや家族向けの書籍を見ると、ほぼ以下のような接し方が推奨されます。
- ゆっくり優しく見守りましょう
- 励ましは厳禁です
- 重要な決断(転職、転居等)は行わない
- 薬をきちんと飲むように見守る
- とにかくゆっくり休ませる
疲れ果てた挙句に到達してしまったのがうつ病ですから、ゆっくり休んでもらうことはとても大事です。
病気で判断力も思考力もなくなっているうつ病当事者に重要な決断を迫るのは酷です。
薬はまずは飲んでみなければ、効くのか効かないのかもわからないです。処方以上の量を飲んでしまう危険も避けなければいけません。
ので、全て正しいと、思います。
【うつ病家族との接し方の現実】
ただし、このセオリーを頭から一言一句そのまま実行しようとすると、すぐににっちもさっちもいかなくなります。
- ゆっくり優しく見守りましょう
→ゆっくりとは、いつまで? どれくらいで良くなるの? 見守るとは、24時間一緒にいなければいけないの? - 励ましは厳禁です
→ではどういう言葉を掛ければいいのだろう? まさか会話しないわけにはいかないのに。 - 重要な決断(転職、転居等)は行わない
→本当にそうでしょうか。 例えば職場のモラハラが原因でうつ病になったのに転職をしてはいけないなら、いずれまたその地獄へ戻ることになります。 - 薬をきちんと飲むように見守る
→指示通り飲むことは大事です。しかし副作用や、飲もうとしないならその理由を無視してとにかく服用を勧めるだけでいいのでしょうか。 - とにかくゆっくり休ませる
→「休め」と言われても休めないからうつ病にまでなってしまった人なのに、どうやって休めさせればいいのでしょう?
全部私自身が経験した疑問です。
これに明確に答えてくれる人は、当時いませんでした。転居・転職については、背中を押してくれた医師がいたので、今でも感謝しています。
【接し方のセオリーは原則にすぎない】
ホームページや書籍に載っている「セオリー」は、原則にすぎません。色んな人が目にする可能性があるためです。
そのままでは使えない。
では、どうしたらいいでしょうか。
セオリーを元にして、自分の家族に適用できるよう「カスタマイズ」する必要があります。
カスタマイズのコツ①:セオリー通りは無理!と思ったら無理強いしない
例えば「ゆっくり温かく見守りましょう」の「ゆっくり」とは、具体的にはどういう意味でしょうか。
額面通り受け取ると、本人のうつ病が感知するまでいつまでも根気よく長い目で、ということになりますが、具体性が無さすぎます。
1週間、1か月など期間がある程度分かっているなら出来るかもしれませんが、年単位になるとしたらどうでしょう。
既に年単位で見守り続けている方であれば、「見守る」だけではうつ病はどうにもならない、ということを実感されているはずです。
「見守る」とは具体的にどんな姿勢で、どんな行動で、どんな生活リズムになるのかを考える必要があります。
カスタマイズのコツ②:スタート地点はうつ病本人
例えば日本では禁句と言われている「励まし」ですが、外国ではOKだったりします。
しかしこれも、国民性の違いとも考えられます。
日本人は良くも悪くも生真面目ですから、言葉そのままに頑張ろうとしてしまいます。
特にうつ病になってしまうような人はその傾向が強いです。だからこそ「励ましてはいけない」というセオリーが出来たのでしょう。
ただし、国民性の違いがあるなら、個々人の違いも当然あるはずです。
まったく励ましがなくなることで、「自分はもう用無しだ、期待されていないんだ」と解釈して、自分の存在意義を疑う方向へ向かってしまう人もいます。
うつ病本人がどんな性格で、何を求めているのかによって、かける言葉は変わってきます。
セオリーを下地に、うつ病本人の志向や家族との関係性を考慮して、お互いの妥協点を探していく。
それがうつ病家族との接し方のポイントだと考えます。