家族のうつ病を認めない心理
家族がうつ病を発症して、すぐにはうつ病を認められません。
なぜならうつ病という病気を実際に見て知っている人はまだ少ないですし、知り合いがうつ病になるのと自分の家族がなるのとでは全く意味が違うからです。
本人もショックですが、家族もショックです。
しかし家族がうつ病になったことを認めずにいると、うつ本人はさらに窮地に追い込まれます。
そして家族内で対立・分裂が起こります。
家族をうつ病だと認められない理由は、病気が目に見えないことと、不安です。
そして第三者のサポートと今ある問題を整理することで、認めることが出来るようになります。
目次
家族のうつ病を認めない理由
一般的な情報と、自分の家族のうつの症状が一致しない
例えば大うつ病(定型うつ病)と非定型うつ病とでは、症状が違います。
大うつ病は朝方辛くて、何もする気が起こりません。
対して非定型は、夕方にだるくなる人が多く、会社には行けなくても友人との集まりには行ける場合が多い傾向があります。
うつ病と一口に言っても様々な症状があるのですが、よく聞く情報と一致しないことで「この人はうつ病ではない」と思ってしまう場合があります。
うつ病を認めるのが怖い
増加しているうつ病とはいえ、実際に経験したことが無い人がほとんどでしょう。
未経験な事態に対して、恐怖や不安を覚えるのは当然です。
特に精神的な病気は目に見えないので、自分が認めさえしなければ実在しないものだと、否認に動いてしまうことも考えられます。
うつ病的症状は「病気ではない」と思っている
よく眠れない、食欲がない、意欲が低下する、仕事に行きたくない(行けない)、朝起きられない。
こうした症状は、程度の小さいものであればだれもがしょっちゅう経験するものです。
うつ病本人の口から出てくる辛さも、自分が過去に経験したものと類似していれば、それは病気ではないのでは、という見方をしてしまう場合があります。
実際は、うつ病の症状としての不眠、食欲低下、出社拒否、意欲の低下は、度合いが全く違うのですが、それを的確に他者に表現することは難しいでしょう。
家族の側にも問題が多くて、認める余裕がない
受け止める側も、色々悩みや問題を抱えているため、追加で受け入れる余裕がない、という場合もあります。
例えば夫がうつ病になっても、それ以前に自分が転職活動中だったり、子どもが不登校だったり、実家の両親が入院していたり、など。
そして不思議なことに、生活上の事件や問題は、数珠繋ぎで立て続くことが多いです。
一つずつ対処しようとしても順番を待ってくれないので、同時に2つ3つ発生すると、精神的にも物理的にも体力的にもパンクしてしまいます。
「私だってしんどいのに、これ以上……」という心境が、うつ病を認めない状態を招いてしまいます。
≪参考情報≫「ご存知ですか?うつ病」(こころの耳:厚生労働省)
支える家族への支援が第一条件
<1>のなかでも
◆認めるのが怖い
◆家族の側にも問題が多くて、認める余裕がない
は、受け止める側への心理支援が必要です。
新たな問題に立ち向かう余裕がない状態で「家族なんだから」とゴリ押ししたところで、どうにもなりません。既に満杯の袋に更に物を詰め込むようなものです。力任せに押し込めば破裂します。
支える人が既に抱えている問題・悩み・辛さは何か
自分の問題を無理矢理押しのけて他者の悩みを受け容れることは出来ません。
出来たとしても後でまた別の問題、例えば支える側の人自身がうつ病や適応障害になってしまう、といった事態が起こりかねません。
まずは自分が抱えている問題を全部洗いだしましょう。
今抱えている問題への対処
具体的な解決方法があるものばかりではないでしょう。
むしろ、既に具体策が分かっているものは問題ないです。
対処が必要なのは、対処法が具体的になっていない問題と、ご自身のメンタルです。
今どれくらい辛くて、悩んでいて、困っていて、不安で、疲れていて、余裕が持てていないかを自覚して、これ以上自分を追い込まないようにしましょう。
心の負担は、寝たり遊んだりしても軽くならないことがあります。
誰かと共有したり、共感されたり、共有できることで気持ちが軽くなります。
人知れず、誰にも理解されず苦しんでいる、という状況は、そのまま孤独に繋がります。
孤独はその他の問題も増悪させます。
一緒に取り組んでくれる仲間や支援者を作りましょう。
≪こちらも読まれています!≫けいぜん庵コラム「家族の相談先の見つけ方」
支える人の問題解消によって認める余力が生まれる
一緒に生活している人のメンタル不調は、同居している人にも影響します。
例えば子供が不登校の場合。直線的に考えると、子どもが学校に行きたくない理由が学校にあるのでは、と考えます。いじめや学力面の問題などです。
しかし、夫婦の不和を改善したら、学校へ行けるようになった、というケースもあります。
不登校は、問題から生じた「症状」だった、という場合です。
支える人がずっと抱えてきた問題を軽減することで、精神的な余裕が生まれ、同居家族とのコミュニケーションが変化し、新たに「うつ病」と診断された家族の症状が改善されることも考えられます。
また、直接の関わりはなくても、家族単位で見た時に問題が軽くなるわけですから、良い影響がないはずがありませんよね。
うつ病への理解や支援を考えるのは、その先
自分側の問題が解決、または軽減し、余裕が生まれたら、新たな問題に取り組む下準備が出来た、と考えましょう。
そして、うつ病と、目の前にいる「うつ病の家族」の状態を理解しましょう。
<1>の中の、うつ病への誤解や知識不足のままでは、心に余裕が生まれたとしても受け入れることは出来ません。
また、うつ病を認めないことは、一時的な心の逃げには使えても、長い目で見れば問題解決から遠ざかる道です。
ショックを受容するまでのプロセス
人がショック(良くないこと)を受けた時の心の動きは、以下のようなプロセスをたどります。
ショック→否認→悲しみ・怒り・混乱→適応→再起=新しい価値観の取得
うつ病を認めない・受け入れられない時は、「ショック→否認→悲しみ・怒り・混乱」の段階にいる、と考えます。
時間をかけて悲しみや混乱と向き合って、知識を得ることで将来への展望が見えてきます。
そうすると自然に「適応→再起」へ進んでいくことが出来るでしょう。
≪こちらも読まれています!≫けいぜん庵コラム「うつ病を受け容れるステップ」
こうした受容や支援のプロセスは、支える人が自分一人で出来ることではありません。
こういう時こそ、専門家を頼りましょう。
病気・治療については医師、生活支援については公的機関(市役所、ハローワークなど)、法律の問題なら法律家、福祉サービスなら市役所やソーシャルワーカー、心の支援はカウンセラーなど。
次々と問題を抱え込んでしまう人は、抱え込む技量がありながら人に頼るスキルに不足している方が多いです。
うつ病を認めない・受け入れられないなら、この機会に誰かに頼ることを経験してみましょう。
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