人に振り回されることが辛いー自分の内面に気づいて癒す

<人に振り回される毎日から抜け出すために>
人に振り回される感覚、ありませんか?
直接的に何かをされる、というより、周囲からどう見られているか、とか、自分には関係ないはずの他人の言葉とか、もっと広く「世間」「社会」の傾向に圧し負けてしまったり、とか。
なぜ振り回されるのでしょう。
それは自分自身に「これに沿って生きよう」と自信をもって自覚出来る「軸」がないからです。
だから何かをするときについ「普通はどうするんだろう」「どうすれば嫌がられないんだろう」を判断基準にしてしまい、周囲の目に合わせて、結果として「人に振り回されている」と感じて疲れてしまうのです。
今回は「セルフコンパッション」をベースに、自分の内面に気づき、自分を大切にする感情を思い出すことで、人に振り回されず自分を見失わないコツを解説いたします。
目次
- 自分軸とは?―“わたし”の本音に気づくこと
- 「大切にされる感情」とは何か
- セルフコンパッションで自分にやさしくなる
- 自分軸を取り戻す3ステップ・アプローチ
- おわりに
- 家族のことでいっぱいになった心に“わたし”を取り戻す時間を
自分軸とは?―“わたし”の本音に気づくこと
「自分らしさ」はどこにあるのか
自分軸、という言葉はきっとどこかで聞いたことがあると思います。
「軸」ですから、自分の心に一本ズバッと貫かれた柱のようなイメージですね。
これがあることで毎日の小さな選択から人生を左右する大きな決断まで「自分らしさ」を守ることが出来るのです。
では「自分らしさ」ってなんでしょうか?
そう聞かれると、「長所」「好きな物」「特技」などが思い浮かび、それらで構成された「自己像」のこと、と思われるかもしれません。
しかし大事なのはむしろ逆です。
自分から見た「短所」「苦手なもの」「辛い経験」をスルーしないことで生まれる「自分とはどんな人間か」という解釈です。

≪おすすめコラム≫自分軸で生きるためのヒント:自分を大切にするシンプルな習慣
他人軸との違いとは?
自分軸/自分らしさとは反対に「他人軸」という考え方もあります。これは「自分軸で生きるのとは反対の生き方」と言えるかもしれません。
自分軸が「自分らしい生き方を実現するための柱」だとすると、他人軸で生きる、ということは、自分らしさを手放して他人の意見に振り回される生き方、と言ってもいいのではないでしょうか。
この場合の他人とは「親」「家族」「パートナー」のようなごく身近で影響力の強い他者、他では「世間」「社会」「みんな」と言った不特定多数の集団を差します。
自分がどうしたいのか、が分からないから判断基準がない。でも何かしら「YES/NO」をはっきりさせなければいけない場面は多々あります。その時に「他人の判断基準」を借りて決めていく。結果として「他人の基準で生きる人生」になってしまうのです。
自分の感情が道しるべになる
自分軸とは自分らしく生きること、とお話しました。
とはいえ、自分らしさって、じゃあ何?って悩んじゃいますよね。
つい「自己紹介文」のように自分の良いところだけピックアップしたり、「こうあるべき!」みたいな目線を気にした内容になりがちです。
しかしその内容で出来上がったものは「こうだったらいいな」とい希望で構成されている可能性があります。背伸びしちゃってる。
「らしさ」はもっと地に足がついたものです。そのためには上に引っ張られるだけでなく「今の自分」に紐づけされる必要があります。
そのためには感情を取り入れる必要があります。更に言うとネガティブな感情への向き合い方を工夫することで、本当の「自分らしさ」が見えてくるのです。
「大切にされる感情」とは何か
感情が教えてくれる本当のニーズ
人に振り回されるときに感じている感情は、どんなものが多いでしょうか。
- 居心地の悪さ
- 納得できない感じ
- 反発
- 息苦しさ
などかもしれません。
こうした感情は、不快ですよね。出来れば感じたくありません。
不快感を払しょくする方法として「ストレス解消」を思いつくかもしれませんが、それは一時しのぎに過ぎません。また次に人に振り回される場面が来たら同じネガティブ感情に襲われてその後にストレス解消する……。グルグル繰り返す毎日です。
疲れるだけでなく、いずれは『私はどうして同じことばかり繰り返すのだろう』という自分への無価値感が芽生えてしまいます。
ネガティブ感情を振り払うことを目的にするより、その根っこに何があるのか、と向き合いましょう。
例えば『納得できない』と感じるなら、どうすれば自分は納得するのか。それこそが「自分らしさ」です。
自分が自分を大切にしていないときに起こること
人に振り回される環境の中、居心地の悪さや反発を感じつつそれを継続するのはなぜでしょう。
多くの場合「そのほうがその場が丸く収まるから」という理由に寄ります。いわゆる「空気を読んだ」結果ですね。
和を以て貴しとなす、というのは聖徳太子の時代からの訓えですが、自分自身を蔑ろにしてまで「和」を貴しとせよ、と言うのは違うと思います。
自分はどうしたいか・どうありたいか、を明確に認識した上で、ではほかの人たちの希望や状況を考慮してベストの答えを出す。それが私の考える『和を以って』です。
自分が自分を大切にしていないから、いつまでも不満や物足りなさ、納得できない苛立ちが消えないのです。
セルフコンパッションで自分にやさしくなる
セルフコンパッションとは?
私のブログではしょっちゅう登場する「セルフコンパッション」ですが、皆さんは聞いたことはあるでしょうか。
「コンパッション」とは「慈悲」という意味です。「セルフ」なので「自分に対して慈悲的に接する」という意味になります。
慈悲、という言葉は我々日本人には耳慣れた言葉ですよね。ですが仏教などに結び付けて想像することは出来ても、どんな意味か、と聞かれると分かりにくいのではないでしょうか。
慈悲とは『悲しい状況にある人の心に寄り添って、共にあること』という意味です。
お葬式で家族を亡くした遺族に『ご愁傷様です』とご挨拶をしますよね。家族を喪った悲しみに寄り添って、葬儀に参列することで共にある状況です。
それと同じことを自分に対して行うのが「セルフコンパッション」です。
自分にやさしくする=甘え、ではない
自分に優しくしましょう、と話すと多くの方は『?』という顔をします。普段頑張り続けている方ほど『優しくする』=『甘やかす』と混同し勝ちなのです。
他者に対しては時と場合によっては甘やかしてあげることも必要だ、と分かっているけれど、自分に対して、となると時も状況も一切考慮せず『甘やかしは良くない、だから優しくしてはいけない!』と断定してしまうのはなぜでしょうか。
例えば毎日フルで頑張って、夜寝ても疲れが取れない日々が続いていて、とうとう寝坊して会社に遅刻してしまった、とします。
もちろん上司からは注意を受けるでしょう。しかし上司より更に厳しく自分を追求してくる存在がいます。
自分自身です。
だけど、どうして寝坊をしたのでしょう。目覚ましが鳴ったのに気付かなかった?前の日に早く寝なかった?家族に起こしてくれと頼まなかったから?
違いますよね。限界までずっと頑張って来たからです。
自分に優しくするとは、『遅刻したっていいじゃん』と捉えるのではなく『それくらい毎日頑張ってたんだよね』と、背景も含めて理解することなのです。
ネガティブな感情も受け入れる
セルフコンパッションには3つの柱があります。
- 自分に優しくする
- 共通の人間性
- マインドフルネス
個別の詳細は長くなるので他の項に譲りますが、まず何より大事なのは『自分に優しくする』です。
特にネガティブな感情や思考を抱えた時に必要です。
優しく理解ある言葉が思い浮かべられたらベストですが、慣れるまでは難しいでしょう。
優しくする、まで行かなくても『否定しない』ことがポイントです。
- 寂しい
- ムカつく
- 恥ずかしい
- 逃げたい
こんな感情は誰でも抱くものです。その時に「そんな風に考えちゃだめだよ!」と自分で自分を叱責するのではなく、その感情を、感じている自分を否定・拒絶しないことからはじめましょう。
≪おすすめ情報≫【セルフコンパッション入門講座】自分に優しくする方法を教えます

自分軸を取り戻す3ステップ・アプローチ
【ステップ1】自分のネガティブ感情に優しく接する
人に振り回されることの多い方は、自分の気持ち<他人の気持ち、の構図で判断してしまう傾向がある、とお話しました。
そして自分の気持ちを優先させることは我儘や甘えでもなく「自分を大切にすること」と言えます。
ネガティブな状態の自分を大切にすることが難しい、自分を大切にするとはどんなことか分からない、ならば周りを大切にすることで周りから大切にされるのでは、と考えた結果が「人に振り回される」今です。
これをひっくり返すために「ネガティブな感情を抱いている自分に優しく接する」ところから始めましょう。
【ステップ2】ネガティブ感情の根底にある「自分の気持ち」を拾い上げる
ネガティブ感情の中にいるのはつらいですよね。だから出来るだけ感じたくないし、感じてしまっても早く打ち消したい。逃れたいと思います。それ自体は自然な欲求です。
しかしネガティブ感情とは自分の心が発するSOSでもあります。
何かが不快・不満・心地悪い、と感じるなら、それを追求することで「本当はどうありたいのか」が見えてきます。
ネガティブ感情自体は後で「ステップ1:優しく接する」を用いることでケア出来ますから怖がる必要はありません。
なぜその感情を抱くに至ったのか、を、焦らず怖がらず向き合ってみましょう。そうすることで「本当の気持ち」が浮き上がってきます。
【ステップ3】本当の「自分らしさ」とは何か、を考える
ネガティブ感情と向き合うことで見えてきた「本当はどうしたかったのか」を集め続けると、そこに「自分らしさ」が姿を現します。
周りから良く思われること、とか、「~~であるべき」という理想論ではなく、もちろん周囲を顧みない我欲の権化でもありません。
何を大切にしていて、何を好ましいと感じ、何と戦って来たのか。
それこそが「自分らしさ」なのです。

おわりに
人に振り回されて疲れてしまうのは、自分の本音や感情を後回しにしてしまっているからかもしれません。
自分の中にある「大切にされる感情」に気づき、ネガティブな感情にも耳を傾けることで、自分軸を育てていくことができます。
セルフコンパッションは、そんな自分へのやさしいまなざしを取り戻す手助けになります。
外に正解を求めすぎず、自分の内側にある本当の声とつながること。
それが、人に振り回されない、心地よい毎日への第一歩です。